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こんにちは、ぽっぽです。
今日の一冊はこちら↓
『小さな男*静かな声』吉田篤弘(著)
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本の概要(あらすじ)
「いま、ここにいる小さな男とは私のことである」
百貨店の寝具売り場で働きながら、百科事典の執筆に勤しむ<小さな男>。
日曜深夜一時の生番組を担当する、静かな声を持つラジオパーソナリティの静香。
<小さな男>と<静かな声>が交互に語るのは、日常のささやかな疑問や気づき。
淡々とすぎる日々のさみしさといとおしさを描いた作品。
3つの特徴
物語の構成
完成しない百科事典を書き続ける小さな男と、静かな声を持つラジオパーソナリティ・静香。
この二人の物語が交互に並んで少しずつ進んでいきます。
最初はそれぞれの一人称で語られるのかと思いきや、よくよく見てみると三人称視点でも語られています。
吉田さんの他の小説にはない、めずらしい構成だなと思いました。
ひょっとすると三人称視点があることに気づかない人もいるのでは?と思ってしまうほど、切り替えがなめらかで違和感は皆無。
<小さな男>と<静かな声>の二つの物語には、直接的な交わりはありません。
それぞれの物語が、並行して流れてゆく。
けれど、目には見えないところでゆるやかな繋がりが生まれていて、最後には思わぬ形で二つの物語が小さく交わります。
ささやかな日常
この物語は小さな男と静かな声(と、ときどきミヤトウさん)のささやかな日常を描いたものです。
何か事件が起こったり、ワクワクするような展開が待ち受けているわけではありません。
小さな男のささやかなこだわりの物語と、静かな声のささやかな悩みの物語。
「つくり笑い」について、「遂にとついに」について、「新聞紙と新聞の違い」について、「日曜」について・・・
そうそうとうなずいたり、なるほどねと感心したり。ときどき物語の世界から抜け出して物思いにふける。
彼らのささやかな疑問や気づきに対して、こちらもまた様々に思いをめぐらせるのです。
ぐぐぐっと物語の世界に引き込まれる小説ももちろん好きですが、こんなふうに物語と現実を行ったり来たりできる小説も良いものですね。
間を楽しむ
これまでに読んだ吉田さんの小説は「あとがき」だけのものが多かったのですが、今回の作品には「解説」がついています。
しかも解説者はなんと<重松清>さん。
解説に書かれていたことは私が感じていたことそのものだったので、私の気持ちを代弁してもらったかのようで(図々しいな)嬉しくなりました。
とても素敵な解説なので、ぜひ本編を読み終えてから読んでみてください。
思わず「そうそう」とうなずいてしまう部分がたくさんあると思います。
物語にぐいぐいとのめり込んだ記憶よりも、むしろ一つの挿話から次の挿話へと移るときの「間」の心地よさの記憶の方が強く残っている。読みながら思わずうなずいたり、クスッと笑ったり、あるいはふと物語から離れて物思いにふけることが多かったというのも、よく覚えている。ああ、本作の魅力はここなんだなあ、と三年後いま、あらためて思う。
本の感想
読んでも読んでも、なかなか終わらない。
そんな印象が強かった作品です。
これまでに手にした吉田篤弘さんの小説の中では、一番ボリュームがある一冊。
とはいえページ数はというと、およそ400ページほど。
それにも関わらず、実際にはその1.5倍くらいの長編を読んだ感覚がありました。
それは決して読みづらいだとか退屈だとかいうことではなく・・・むしろ読みやすいし興味深い作品です。
新しい本は一気に読んでしまうせっかちな私でも、この小説だけは何日もかけて読みました。
急いで読むことができない。読むのに時間がかかる。そんな不思議な小説です。
決してあわてず、ゆっくりと。彼らとの絶妙な距離感を楽しみながら読んでみてください。
読み始めると程よいところですぅっと眠たくなり、そのまま目を閉じると心地よい眠りにつけます。
個人的には、夜寝る前にゆったりと読むのがオススメです。
印象に残った言葉(名言)
「読者は誰もがさみしい心を持っている」
「あかりをひとつお届けします」
「大きな愉しみは時として気紛れだが、ちょっとした愉しみは決して裏切らない」
「人それぞれ。人生とはーー人それぞれ。である」
「自転車は世界であり、世界は自転車だ」
「私の真実は金色なんですよ。いいでしょう?車輪は付いていませんが、背中に小さな金色のペンが付いています。これがまたものすごく悪趣味でしょう?」
吉田篤弘さんの作品
この本の総評
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