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こんにちは、ぽっぽです。
今日の一冊はこちら↓
『こんなにも優しい、世界の終わりかた』市川 拓司(著)
本の概要(あらすじ)
「どうやら世界は本当に終わりを迎えるらしい」
ある日突然、空は鉛色の雲に覆われた。
雲の隙間から地上に注ぐ青い光。
その光が、世界を静かな終わりへと導く。
青い光に照らされると、人も動物も植物も、何もかもが動きを止め二度と動かない。
ぼくは世界の終焉を目前にして、危険な旅に出た。
必ず会いに行くと約束したから。
たとえどんなことがあったとしても、ぼくは絶対に雪乃に会いに行くーー
3つの特徴
世界の終わりかた
唐突に始まる、世界の終わり。
それは戦争でも未曾有のウイルスでも宇宙人の侵略でもなく、空から降り注がれる青い光によって。
その光に包まれてしまうと、何もかもが全て凍ったように固まってしまう。
だんだんと範囲を広げ、徐々に世界中を覆い尽くす青い光。
決して逃れられない、世界の終わり。
人々はこの現象に立ち向かったり、あるいは別の星へ逃げたりなどという、SF小説にありがちな行動を取ったりはしません。
自分の死を、そして世界の終わりを受け入れた彼らは、ただひたすらに愛する者のもとへ走り出します。
優しすぎるふたり
ふたりの出会いは十四歳のとき。人気者の雪乃と、おみそ扱いされているぼく。
ぼくは争いや暴力を拒み、たとえひどい事をされても決してやり返したりはしません。
ぼくらは誰かを殴るための拳を持って生まれてはこなかった。この手は、大事なひとの背中をさすったり、美味しいものを食べたり、美しいものをつくったりするためにある。
そんなぼくを穏やかな優しさで受け入れる雪乃。
ふたりは「優しくない」ことを嫌い、優しくあろうとします。
彼らが「優しくないね」という言葉をかけるのは、テレビの向こうの政治家だったり、自分の欲を満たすためだけに他者を利用し続ける大人たちだったり。
しかし他者に対して優しくありたいと願うばかりに、自分本位になれない彼ら。
優しすぎる彼らは、お互いに想いを伝えることもできないまま、別れを選びます。
「優しさ」をテーマにしつつも、ただ美しいものとするだけではないのが特徴的な作品です。
優しすぎるが故に別れという道を選んだ彼ら。世界の終焉を前にしてやっと、たったひとつの想いを胸に走り出すのです。
果たされた約束
ぼくは離れた町にいる雪乃に会いに行くため、ひたすら進み続けます。
マメだらけの足、底をついた食糧、朦朧とする意識。
極限状態の彼を動かし続けるのは、雪乃と交わしたたったひとつの約束。
彼は道中で、自分と同じように大切な誰かのもとへ向かう人々と出会い、助け合います。
別れた彼女に会いに行く青年、老夫婦、家族、ひとりぼっちの男の子・・・
彼らはみんな、交わした約束と愛のために歩き続け、あるいはその場に留まり続けます。
暴動も略奪もない、われ先にと逃げ出す大人もいない。
それぞれが大切な人たちのそばで、穏やかに、最期を迎える。
だからこそ、この世界の終わりはとても優しいのです。
本の感想
何年か振りに読み返してみて、やっぱり素敵な小説だなと思いました。
「世界の終わり」と聞くと、ウォーキング・デッドやバイオハザード的なものを想像してしまいますが(私だけ?)この世界はそういった激しさや争いや憎しみなどとは無縁の世界。
徹底的に濁りは排除された、愛と優しさを描いた純度の高い作品です。
綺麗なだけの小説はあまり読まないのですが、市川拓司さんの小説は抵抗なく読むことができるものばかり。
代表作の『いま、会いにゆきます』や『そのときは彼によろしく』なども読んできましたが、どの作品も読むと心が透き通る気がします。
この作品に描かれていること、つまり世界の終わりは現実の世界にも起こりうること。
明日、自分や大切な人が生きている保証はどこにもないのです。
もしそうなった時、世界は、人間は、どんな行動をとるのでしょう?
この物語のように、みんな一目散に大切な人のもとへ駆け出すのか?それとも、食糧や安全な場所を奪い合って傷つけ合うのか?
作中にも何度も出てくる「優しくないね」という言葉。
「優しい」に溢れた世界なんて想像もできないけれど、せめて世界の終わりには、この物語のように「優しい世界」になってくれるといいなと切実に思います。
印象に残った言葉(名言)
「大人だからって、すべて正しいことをするとはかぎらないでしょ?」
「世の中にはひとを傷つける言葉が多すぎるよ。そんなのなくしちゃえばいいんだ」
「ほんとに大事なものは、誰かに見せびらかしたりなんかせずに大切にしまっておくものだから」
「ひとはせめて子供のときぐらいは絶対に無条件で幸せでなくちゃいけないのよ」
「見えるものはたかが知れてる。有限でいつかは消えてなくなる。けれど、見えないものにはーー果ても終わりもないんだ」
この本の総評
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