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【No.64】〜真夜中の光を描いた切なく儚い物語〜 『すべて真夜中の恋人たち』 川上 未映子 (著)

こんにちは、ぽっぽです。

今日の一冊はこちら↓

『すべて真夜中の恋人たち』川上 未映子 (著)

光の描写がとても繊細で綺麗な小説。

月9ドラマ『リッチマン、プアウーマン』の主題歌にもなっていた、miwaさんの『ヒカリへ』という曲の歌詞は、この『すべて真夜中の恋人たち』にインスパイアされて誕生したそうです。

 

ひとりの夜に読みたくなる一冊です。

 

本の概要(あらすじ)

「真夜中は、なぜこんなにもきれいなんだろうと思う

 

フリーランスで校正の仕事をしている、入江冬子。

 

人と言葉を交わすことにさえ自信がもてず、ひとり部屋で仕事をするだけの日々。

 

唯一関わるのが、仕事のやりとりをしている石川聖だけ。

 

そんな冬子の毎日を変えたのは、三束(みつつか)さんとの出会いだったーー

 

芥川賞作家が描く、切ない光に満ちた究極の恋愛小説。

3つの特徴

正反対のふたり

人とほとんど関わることのない冬子ですが、唯一関わりがある人物が、石川聖です。

聖は大手出版社の社員で、冬子へのゲラや原稿の受け渡しの担当をしています。

美人で誰に対してもはっきりとものを言う聖と、自分に自信がなく人と話すことも苦手な冬子。

正反対の2人ですが、聖は冬子のことを面白い人だと笑い、信頼しているのだと言ってくれます。

友達とまではいかないものの、それなりに良い関係を築けているようにみえていた2人でしたが、物語の後半で激しい言い争いをします。

「(略)きれいごとってそんなにいい?何がいいの?軽くみられるのがいやなの?何か大事なものを守ってるように男にみられたいの?誰にみられたいの?そういう自分が好きなの?言っとくけど、それってただのグロテスクだよ」

強い言葉でまくしたてる聖に、冬子ははじめて言い返します。

「・・・みんながみんな、あなたの常識で動いてるって思わないでほしい」

誰かに言い返すなんて、これまでの冬子なら考えられなかった行動。

胸にぐさぐさ刺さる言葉を投げつけた聖が、最後には泣きながら「あなたのことをもっと知って、あなたの友達になりたい」と言う場面で、ほんとうは聖も不器用な人だったのだなと知りました。

 

真夜中の散歩

九年前の冬、クリスマスイブ。

二十五歳の誕生日の夜に、冬子はふと、真夜中を歩いてみようと思い立ちます。

真っ白の輝く月が顔をだした、しずかな誕生日の夜。

なんの変哲もない、見慣れた景色でも、真夜中だととても輝いてみえます。

自分にだけわかるような、ひそやかな意味が隠されているような気がする、真夜中の光。

ひとつひとつを丁寧に目に映しながらわたしは歩き、みつめるものの数がふえるたびに、胸のあたりで小さな音が鳴るようだった。夜の光だけが、わたしの誕生日をひそかに祝ってくれているような、そんな気がしたのだ。

それから毎年、冬子は誕生日の夜に、散歩に出るようになります。

真夜中は、なぜこんなにもきれいなんだろうと思う。

それはきっと、真夜中には世界が半分になるからですよと、いつか三束さんが言ったことを、わたしはこの真夜中を歩きながら思いだしている。光をかぞえる。夜のなかの、光をかぞえる。

 

三束さんとの出会い

カルチャースクールで三束さんと出会った冬子。

ある出来事がきっかけで連絡先を交換し、週に二回、喫茶店で話をするようになります。

物理の先生をしているという、優しくおだやかな三束さんに、徐々に惹かれていく冬子。

物語の序盤で出会ったふたりですが、冬子が自分の気持ちを言葉にできたのは、なんと物語も後半にさしかかった頃。

わたしは三束さんのことがすきだった。たぶん、はじめてあったときからわたしは三束さんのことがすきだった。

一度は三束さんと距離を置き、仕事も減らし、一日中ぼんやりと過ごしていた冬子でしたが、あるときふと思い立ちます。

三束さんに会わなければ、とわたしは思った。そう思うと、胸が動いた。三束さんに会わなければ、わたしは大事なことを忘れてしまう。これまでどんなふうに話してきたのか、わたしのたったひとつの大事なことが薄まって、やがて取り返しのつかないことになってしまう。大事なことが、ほんとうになくなっていってしまう。

そして冬子は三束さんに電話をし、三束さんの誕生日に会う約束をします。

外見に無頓着だった冬子が、化粧をしてハイヒールをはき、香水をつけて三束さんに会いに行く様子が、なんだかとてもいじらしかったです。

帰り際に「わたしの誕生日を一緒に過ごしてくれませんか」と泣きながら言う冬子に、何度も肯いてくれた三束さん。

しかし、三束さんは待ち合わせの喫茶店には現れず、かわりに届いたのは、一通の手紙でした・・・。

本の感想

恋愛小説といっても、青春爽やか系やドロドロ系、純愛系などさまざまにありますが、この作品はどういう言葉で表現できるのだろうと考えてしまいました。

 

大人の恋愛ではありますが、子どものような純粋さと初々しさがあり、頼りなく、不器用です。

 

女性たちの言動はぞっとするほどリアルですが、一転して冬子と三束さんの恋愛は、どこまでも純粋で幻想的な雰囲気すらあります。

 

昼と夜を、リアルと幻想を、どちらも感じられる不思議な作品です。

 

私がこの作品の中でとくに魅力を感じたのは、「真夜中の散歩」と「光の描写」

 

川上さんの小説を読んだのはこの作品が初めてでしたが、とても感性豊かで繊細な文章を書く方だなと思いました。

 

 

 

印象に残った言葉(名言)

「昼間のおおきな光が去って、残された半分がありったけのちからで光ってみせるから、真夜中の光はとくべつなんですよ」

 

「きのうまで平気だったことが今日もまた平気だなんて、そんなのわからないじゃない?」

 

「なんで入江くんにこんな話できたのかっていうとね。それは、入江くんがもうわたしの人生の登場人物じゃないからなんだよ」

 

「こんなにもたくさんの人がいて、こんなにもたくさんの場所があって、こんなに無数の音や色がひしめきあっているのに、わたしが手を伸ばせるものはここにはただのひとつもなかった」

この本の総評

読みやすさ
(4.0)
文章
(4.0)
恋愛
(4.0)
(5.0)
総合評価
(4.0)

 

 

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