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こんにちは、ぽっぽです。
今日の一冊はこちら↓
『奈良まちはじまり朝ごはん』いぬじゅん(著)
ほんわかした表紙の絵につられて、読んでみました。
本書は三部作になっていて、本書は第一作目です。
本の概要(あらすじ)
「ここで、今、私の”新しい一日”が始まった」
新入社員として初出社をむかえたその日、会社が倒産して無職になってしまった南山詩織。
呆然としながら「ならまち」を彷徨っていた詩織は、朝ごはんしか出さない店の店主・柏木雄也に助けられた。
無愛想で無口な雄也だが、彼の作る朝ごはんは温かく、硬くなった感情がほぐれていく。
詩織の事情を知った雄也は「ここで働かないか?」と提案し・・・
1日のはじまりを応援する「朝ごはん」に癒される、ハートフルな物語。
3つの特徴
「朝ごはん」しか提供しないお店
道に迷っていた詩織に「朝ごはんを食べていけ」とぶっきらぼうに言う店主・雄也
出てきたのはふんわり包まれた卵に赤いケチャップが添えられた、どうみても「オムレツ」ですが、雄也は「西洋卵焼き」と言い張ります。
箸で黄色い卵に切れ目を入れると、ほわっと深い白色の湯気が立ちのぼった。半熟かと思ったけれど、中までしっかりと火が通っているよう。お母さんの作るオムレツもこんな感じだったな、と思い出し口元が緩んでしまう。
ひと口大に切って口元に運ぶと、なにかが卵の中から伸びているのに気づく。
チーズかも、という予想は、口に入れて間違いだったと気づく。
オムレツだと思って食べたそれは、中にお餅が入っているだけでなく、細切りの玉ねぎや椎茸も入っていて、ケチャップには出汁を使っています。
「西洋卵焼き」と日本語にしている理由がようやくわかった詩織。
温かいごはんに、心までじんわりと温かくなります。
「朝ごはんは一日のはじまりだろう?」
「最初にお腹に入れるものが温かい食べ物ならば、人の心は元気になれる」
そんなふうに話す雄也。
朝ごはんしか提供しない店。そこには、雄也の「温かい朝ごはんを食べて、新しい一日を過ごしてほしい」という気持ちが込められていました。
いろんな事情を抱えたお客たち
- 第一話:「はじまりは、西洋卵焼き」
- 第二話:「思い出おにぎり」
- 第三話:「茶粥が見ていた永い恋」
- 第四話:「魚と野菜と結婚が苦手です」
- 第五話:「さよなら、ならまちはずれの朝ごはん」
それぞれの物語に、いろんな事情を抱えた人たちが登場します。
お母さんの再婚に悩む中学生の女の子、思い出の池で来ない恋人を待ち続ける女性、恋人との結婚に踏み切れない男性・・・
困っている人を放っておけない詩織が、彼らの悩みを解決するために、ひとり突っ走ります。
雄也はそんな詩織に「深入りするな」と叱りつつも、最終的には温かい朝ごはんで彼らの心を癒してくれます。
それぞれの物語に登場する朝ごはんのレシピが、かわいいイラスト付きで載っているので、私も作ってみようと思いました。
雄也の抱える過去
雄也がときどき悲しい顔をする瞬間があることに気づいた詩織。
雇用契約書の役員の欄に書かれた「柏木穂香」という名前。
頑なに過去の話には口を閉ざす雄也ですが、物語が進むにつれ、徐々にその理由が明かされていきます。
「失ってから気づくこともある」
「そばにいるときにもっと気持ちを言葉にすべきだった、と今ならわかる。失くしてからだと遅すぎるんだよ」
事情を知っている常連客から、自分を責め続けている雄也を「助けてあげてほしい」と頼まれる詩織。
雄也の抱える過去とは?
詩織は雄也の閉ざした心を開くことができるのでしょうかーー?
本の感想
表紙のかわいさと「朝ごはんしか提供しない店」という設定に惹かれ、読んでみた小説です。
奈良は修学旅行で行ったことがあるくらいだったのですが、この作品を読んでもう一度行ってみたいと思いました。
「大和野菜」や「茶粥」というのも初めて知りましたし、「卵浸しパン」という和風のフレンチトーストも興味深かったです。
設定は面白いなと思ったのですが、主人公のキャラクターが独りよがりな感じがして、少し苦手でした。
主人公のお節介があってこそ物語は展開するのですが、どうしても押し付けがましさを感じてしまって。
三部作の一作目なので、これから徐々に物語や登場人物にも深みが増していくのかもしれません。
印象に残った言葉(名言)
「温かい食事を食べて、悩みをここに置いていってほしいんだよ」
「時間は人それぞれだ。昼間に起きて朝ごはんを食べる人だっているんだ。お前ら人間の悪いクセは、多数決で一般常識を決めたがることだ」
「今日が夏芽ちゃんにとって”新しい一日”でありますように」
この本の総評
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