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こんにちは、ぽっぽです。
今日の一冊はこちら↓
『パンとスープとネコ日和』群ようこ(著)
実写ドラマ化もされた、シリーズ第一作目。
『福も来た』『優しい言葉』『婚約迷走中 』と四作目まででています。
本の概要(あらすじ)
「私が食堂を?この私が?」
唯一の家族である母を突然亡くし、勤めていた出版社を辞め、母の食堂を継ぐことにしたアキコ。
真面目で気配りのできるしまちゃんと二人で、お店を切り盛りしていく。
メニューは、サラダ・サンドイッチ・スープ・フルーツのセットのみ。
できるだけシンプルで優しい料理を提供するのが、アキコのこだわりだ。
しまちゃんやネコのたろと過ごす、ほのぼのとした物語。
3つの特徴
シンプルな食堂
母の店を継ぐ決心をしたアキコは、出版社を辞め、調理師免許を取得するため学校に通います。
一年後、見事調理師試験に合格し、いよいよ店の改装をはじめるアキコ。
アキコの内装のイメージは、白い壁にすっきりと柱が天井に伸びている、修道院の食堂だった。大きな木製のテーブルを三つ置き、そこにデザインの違う木製の椅子を四脚ずつ置いた。食器も乳白色や淡いベージュに揃えて、生花以外の無駄な飾りは一切なしだ。
”すっきりとシンプルに”というアキコの要望どおりに仕上がった内装。
内装と同じく、メニューもとてもシンプルです。
お食事 千円(税込)
◎サンドイッチ、スープ、サラダ、小さなフルーツ(パンは全粒粉か天然酵母。二種類から選べます)
募集していたスタッフも、体育会系で気配りもできるしまちゃんに決まり、ついにアキコの店がオープンします。
アキコの心配をよそに、開店四ヶ月で閉店まで食材が持たないほどの人気店となったお店。
順調にいってはいるものの、客層に偏りがあることや、自分のこだわりを貫き通していいのかなど、悩みは尽きません。
そんなある日、母の知り合いだというお婆さんがお店にやってきて・・・
母への反発
アキコの母親は、「お食事処 カヨ」という食堂を経営していました。
父親の顔を知らずに育ったアキコ。
物心ついたときから、一階が店舗、二階と三階が住居になっているこの場所で、母とふたりで生活をしてきました。
煙草を吸っている母の姿は大嫌いだった。左手に煙草を持ったまま、母が酒を飲んではしゃぐ姿を見るのも大嫌いだった。
子どもの頃から母親と食堂に関するすべてを鬱陶しく感じてきたアキコ。
その反発心からなのか、アキコの理想とする店は、母の食堂とはまったく違ったものでした。
母が営んでいた、緑色の砂壁に木目の梁が目立ち、大きな将棋の駒や、扇子や藍染の布、こけしが飾ってある、いかにも昭和の食堂といった内装をそのまま引き継ぐ気はなかった。私は私のやりたい店をやるだけなのだ。
メニューに関しても、冷凍食品や電子レンジを多用していた母の料理とは違い、アキコは自分の信念を貫き通します。
アキコはそれは母のやり方で、自分はそうはしたくなかった。品数が少なくても、できるだけいい食材を使って、ひとつひとつ丁寧に作って出すのを信条にしたかった。
その結果、母の食堂とは雰囲気も料理も客層もすべてが真逆になったアキコの店。
「母と私は違う」と居直っていた部分もありましたが、本当にそれでよかったのかと悩むようになります。
ネコのたろ
物語に登場する、グレーのキジトラ柄のネコ「たろ」
たろは、店の横にうずくまっていたところを、アキコに拾われたのだ。
誰かにもらってもらうつもりだったアキコでしたが、あまりにかわいくて手放すのが惜しくなり、たろの家族になることを決めます。
母を亡くしたアキコにとって、今はたろが唯一の家族なのです。
店を閉めて部屋に戻ると、たろが全力で甘えてきます。(かわいい)
アキコが日中店に出てしまっているので、たろは夜までお留守番をしているのです。
抱っこされ、ぐふう〜と鼻息を出して幸せそうにするたろ。
アキコとたろは、お互いがかけがえのない家族なのです。
しかし、ある日店を閉めて部屋に戻ると、いつもと様子の違うたろ。
あわてて動物病院へ連れて行くアキコでしたが・・・
本の感想
パンとスープとネコ。
タイトルからして癒されそうだなぁと思い、読んでみた小説。
料理やたろとの触れ合いは見ていてほのぼのしますが、アキコの家庭事情に関しては重たい部分もありますし、悲しいお別れもあります。
終始ほのぼのした雰囲気というわけではなかったです。
個人的には、口うるさいご近所さんや、昔の常連客、詮索好きのおばさんが苦手だったので、二作目以降は読んでいません。
けれど今回改めて読んでみて、アキコは誰一人として嫌な人だとは思っていないということがわかりました。
自分の受けとり方しだいで、物語に対するイメージも変わってしまうんですね。
ドラマは見たけれど小説は読んでいない、という人はぜひ読んでみてください。
印象に残った言葉(名言)
「やっぱり料理もセンスが必要でね。お母さんが家族に作る家庭料理は、とても大事な意味があるけれど、お金をいただく料理となると、家庭料理の延長ではないのね。やっぱりその間には壁があるのよ」
「修道院のように簡素な空間で安心できる食材を使って、おいしいパンとスープの店を出したい」
「人が作ったものをおいしいとかまずいとか、偉そうにいうなんてどこか間違ってますよ。自分がおいしいと感じる店を選ぶ目を持っていれば、それでいいだけのことじゃないんでしょうか」
「二人でくすくす笑っていたら、笑いが止まらなくなってきた。くだらないことを一緒に笑い合える人がいるのは幸せだ」
この本の総評
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