※当サイトはアフィリエイト広告を利用しています
こんにちは、ぽっぽです。
今日の一冊はこちら↓
『彼女のこんだて帖 』角田光代(著)
本の概要(あらすじ)
「大人になったいちばんの喜びって、好きなときに好きなものを好きなように飲み食いできることなのに」
失恋の痛みとともに噛み締める、ラムチョップ。
母と息子の思い出、かぼちゃの宝蒸し。
妹の傷を癒す特効薬、手作りピザ。
彼女の覚悟を込めた、松茸ご飯。
美味しい料理たちが心を癒す、レシピつき連作短編小説集!
3つの特徴ここがポイ
つながる15の物語
本書は連作短編小説なので、物語が少しずつつながっています。
一話目の主人公<協子>の会社の同僚<景>が二話目の主人公になり、景の姉<衿>が三話目の主人公になり・・・
ある物語では脇役だった人物が、別の物語では主人公になる。こんなふうに次へ次へと物語はつながっていきます。
最終話で最初の主人公<協子>のその後が知れたときは、なんだかとても嬉しくなりました。
ひとりひとりに物語はあって、だけどそれらは決してバラバラに存在しているのではなく、少しずつ何かしらでつながっている。
それを強く感じられるのが、連作短編小説の良さでもあると思います。
料理がもたらす心の変化
年齢も性別もさまざまな主人公たち。
彼らが日常の中で抱えている失恋や躓きや後悔などを描いているので、読者の心にもすっと入ってくる内容です。
「作ること」そしてそれを「食べること」で彼らの心は変化していきます。
大切なことに気づいたり、思い出させてくれたり。
それはとてもささやかな変化ではありますが、彼らの心に深く根づき、今後の人生の糧になる。彼らを見守る読者もそんな気持ちになります。
私がとくに印象に残った物語はこちらの3つ。
『泣きたい夜はラム』
長年付き合っていた恋人に振られた女性の物語。
久しぶりに過ごすひとりの週末を「泣いて過ごすのは御免だ。いっそ祝福してやろう」と生ハムのサラダとそら豆のポタージュ、そしてラムチョップを作る。
噛めば噛むほど味わい深いラム肉に、彼と過ごした四年間を重ねる彼女。
「それは失われたのでなはなく、栄養になりエネルギーになり、今もわたしの内にあり続ける」と気づいた彼女は、無理に彼を忘れる必要はないのだと悟る。
このさみしさも、ラム肉みたいにしっかり噛んで味わうべきなんだ。それさえわたしの栄養になるに違いないのだから。
『なけなしの松茸ご飯』
大恋愛の末に駆け落ち同然で上京した女性の物語。
思い描いていた生活とのギャップに「こんなはずじゃなかった」と思わずにはいられない彼女は、母からわたされた三万円を財布に入れ、スーパーへ向かう。
一番高い二万九千八百円の松茸を買い、松茸ご飯を作る彼女にはある決意があった。
嬉しそうに松茸ご飯を食べる彼に「うちにあった最後のお金で、この松茸を買いました」と言い放つ彼女。
その覚悟に心を動かされたのか「ごめん。あの、ちゃんとする」と反省した様子の彼を見て、彼女は気づいた。
母のお金を全部使って、追い詰めたかったのは修平ではなく自分だったのだ。
『食卓旅行 タイ編』
以前書いた記事で紹介しているので、興味がある方はこちらをご覧ください↓↓
ここをクリック
嬉しいレシピつき
「料理」がテーマの小説を読むと、そこに登場するひと皿を食べてみたくなりませんか?
あんまり美味しそうだと、本を読み終える頃にはお腹が空いてしまっていることも。
この小説は本編の後にそれぞれの物語に登場する料理の「レシピ」が写真付きで載っているので、自分で作ることができます。
和食に洋食に中華そしてタイ料理まで、さまざまなレパートリーが揃っています。
手軽に作れそうなものもあれば、ハレの日に食べるようなちょっと豪華な料理も。
個人的に作りたいのが、ラム肉のハーブ焼きと中華ちまきとタイ料理。
旅行や外食に行けない今だからこそ、お家でいつもと違う料理に挑戦してみるのも良いかもしれませんね。
本の感想
「料理」がテーマの小説が好きでたくさん読んできましたが、その中でもとりわけ読みやすくて元気が出る作品です。
特別なご飯というよりは、日常に寄り添った「作ること」「食べること」を描いているので、とても心に沁みます。
どんな悲しいことがあっても、人はごはんを食べないといけない。どんなにつらい日々が続いたとしても、必ずいつかは何かを口にする。
それは身体のためだけではなく、心の栄養のためでもあるんだなと、そんなことを思いました。
心が疲れていたり、気分が沈んでいたり。そんなときにこの本を読むと「今日は美味しいものを作って元気だそう!」と思えます。
レシピがついているのも嬉しいポイント。
「あとがき」には料理上手なお母様との思い出や、料理に対する想いが綴られているので、最後まで読んでみてください。
印象に残った言葉(名言)
「ドラマチックな恋なんて破滅するしかないんだよ。生活しなきゃなんないんだから。二十五歳を過ぎたらね、生活と折り合いのつく恋愛じゃなきゃだめ」
「私たちの毎日はかっこいいものとかっこわるいものでできあがっている。豊かであるというのは、きっとそういうことなのだ。」
「ひとりでもレストランにいける、そのために大人になったんじゃないの」
「外食が続いてようやく気づいたのだ、妻の作る料理はどこの店でも食べられないのだ」
「私の個人的な体験では、料理というものは、手間を超えた何かだった。食べることを超えた何かだった」
角田光代さんの作品
【No.15】~恋でも愛でもない感情の行き着く先は?~ 『愛がなんだ』 角田 光代(著) 【No.25】~悩みながらもひたむきに生きる女性を描いた小説~ 『薄闇シルエット』 角田 光代(著) 【No.36】~本好きの人に読んでほしい、本の魅力が詰まった9つの物語~ 『さがしもの 』角田 光代(著) 【バレンタイン編】~大切な本を贈るバレンタイン~ 『さがしもの ー初バレンタインー』角田 光代(著)
この本の総評
Amazonでちょっとでもお得に書籍を購入するなら、Amazonギフト券の購入がおすすめです。
現金でチャージするたびにチャージ額 × 最大2.5%分のポイントがもらえます。
ここをクリック
コメントを残す