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こんにちは、ぽっぽです。
今日の一冊はこちら↓
『食堂かたつむり』小川糸(著)
『ツバキ文具店』『ミ・ト・ン』などで有名な、小川糸さんのデビュー作。
イタリアの文学賞である”バンカレッラ賞料理部門”を受賞した作品でもあります。
本の概要(あらすじ)
「私にとって、料理とは祈りそのものだ」
ある日アルバイトから帰ってくると、家の中は空っぽだった。
同棲していた恋人に、家具から台所道具まで何もかも持ち逃げされたのだ。
唯一残ったのは、祖母から受け継いだぬか床のみ。
ショックで声を失った倫子は、意を決して故郷に戻り、小さな食堂をはじめることに。
1日1組だけの予約制。自然の恵みをたっぷりと使ったあたたかい料理。
こだわりがたくさん詰まった倫子の食堂。
しかし、やっと食堂が軌道に乗ったと思った矢先、哀しい現実が倫子をおそう・・・
3つの特徴
願い事が叶う食堂
食堂かたつむりには、様々に事情を抱えた人たちがやってきます。
彼らが倫子の料理を食べると、不思議なことに、奇跡のような出来事が次々とおこるのです。
別れた奥さんが戻ってきたり、好きな人と両思いになれたり、大切な人の死から立ち直れたり。
いつしか、食堂かたつむりについて、こんな噂が流れるようになります。
「食堂かたつむりの料理を食べると恋や願い事が叶う」
はじめはそんな噂を聞きつけた人たちが物珍しさから食堂に訪れていました。
しかしだんだんと、味を評価して「もう一度食べたい」というお客さんが来てくれる、そんな食堂へと成長していきます。
おいしそうな料理たち
物語に登場する料理は、どれもおいしそうなものばかりです。
特別な料理というよりは、地元の豊かな自然からとれる食材を使い、丁寧に心を込めて作られた料理ばかりです。
食堂かたつむりに決まったメニューはなく、倫子がその時期にとれる食材から、お客さんに寄り添った料理を作ります。
・倫子と食堂を支え続けてくれる熊さんには、ザクロカレー
・高校生の桃ちゃんとサトルくんには、ジュテームスープ
・食の好みが違うカップルには、野菜だけを使ったフランス料理
そして、倫子がおかんに作る、最初で最後の料理とは・・・?
母と娘の確執と愛情
倫子は十五歳で家を出てから、ずっと祖母の家で生活をしていました。
それ以来、おかんとは年賀状での交流だけ。
故郷に戻って食堂を開いてからも、おかんとの溝はなかなか埋まりません。
「おかんは貞淑すぎる実の母親に反発してそれとは正反対な波乱万丈な生き方を選択し、その母に育てられた私は、そうはなるまいと反発し、また、それとは正反対の地道な生き方を選択する。
永遠のオセロゲームをしているようなもので、母親が白に塗り替えたところを、娘は必死に黒に塗り替え、それをまた、孫は白に塗り替えようと努力する」
倫子とおかんの価値観は相入れず、ずっと反発してきた倫子。
しかし、ある出来事をきっかけに、おかんの一途さや、娘への不器用ながらも深い愛情を知ってーー
本の感想
小川糸さんの作品の、ふんわりとあたたかい雰囲気が好きで、この作品も読んでみました。
主人公の料理への真摯な姿勢や、食材への感謝の気持ちが散りばめられていて、あたたかい気持ちになります。
タイトルからほのぼのとした内容を想像する人もいるかもしれませんが、場面によっては残酷だと感じる人もいるかもしれません。
受けとり方は人それぞれだと思いますが、私は著者が「命の尊厳」を伝えるために、あえてそういう部分も描いたのかなと思いました。
ただ、たまに出てくる下品な表現は、食べるということを描いているこの作品にはそぐわない印象を受けました。
「私たちは命を食べて生きている」という、当たり前だけれど忘れてしまいがちなことを、あらためて思い出させてくれる作品です。
小川糸さんの他の作品
【No.53】”伝えたい想い”を手紙にして届ける代書屋の物語『ツバキ文具店』小川糸(著) 【No.70】狭い世界から飛び出して、自分の心と向き合う物語『さようなら、私』小川糸(著)印象に残った言葉(名言)
「祖母は次第に冷たく、硬くなっていく。その横で、私は一晩中ドーナツを食べ続けた。生地の中にケシの実を入れ、シナモンと黒砂糖をまぶした優しい味を、私は一生忘れないだろう」
「おかんと私の価値観は、正反対。おかんにとってのガラクタは、私のとっての宝物だった」
「今までは自分がすべて料理を作っているような気持ちになっていたけれど、私は、単に素材と素材を組み合わせているに過ぎないのだ。」
「イライラしたり悲しい気持ちで作ったりしたお料理は、必ず味や盛り付けに現れますからね。食事を作る時は、必ずいいことを想像して、明るく穏やかな気持ちで台所に立つのですよ」
「料理は、自分以外の誰かが心を込めて作ってくれるから心と体の栄養になるのだ」
この本の総評
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