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こんにちは、ぽっぽです。
今日の一冊はこちら↓
『僕とおじさんの朝ごはん』桂望実(著)
タイトルに惹かれて購入した本でしたが、最後まで一気に読んでしまいました。
ほっこりした話なのかと思いきや、”生と死”というテーマでもあるので途中重たい部分もありますが、全体的に暗くならずにあったかい雰囲気のある作品でした。
本の概要(あらすじ)
「あなたですよね、ショートカットドラッグを持っているのは」
ケータリング業者・水島健一44歳。全てにおいて無気力なおじさん。
仕事に関しても面倒くさがり、手抜き料理ばかりで依頼をこなしている。
最近街では、冥途の料理人といわれるショートカットドラッグ(病気にみせかけ楽に死ねる薬)を売り歩く人間がいるという噂が立っているようだ。
健一は、ある日病院で英樹という少年と出会う。英樹との関わりを通して、真剣に料理と向き合うようになった健一だったが・・・
ショートカットドラッグとは?真摯に生きることを拒む健一の過去とは?そして、英樹がしたある決断とは・・・?
3つの特徴
主人公の憎めないキャラクター
主人公である健一は、自他ともに認めるほどの面倒くさがりな男。
ケータリングの仕事に関しても、出来合いのものを平気で出して手を抜きたがる。
いわゆるダメな大人ですが、なぜか見ていて嫌な気持ちにならないのが不思議です。
いい意味で気の抜けるような、なんのプレッシャーも感じられないところが、落ち着くのかもしれません。
実際に彼の周りの人間は、一緒にいて楽なのか、彼に親しみを持つ人が多い。
そんな中、健一を一番心配しているのが、秋川先輩です。
秋川先輩は、”健一は面倒くさがりだが、料理だけはちゃんとする奴だった”という。
それなのに、適当な料理ばかりしている健一を心配しているのだ。
なぜ、健一は料理までやる気をなくしてしまったのか。
そこには過去のある出来事が関係していて・・・
仕事を通じて出会うさまざまな人々
ケータリングの仕事を通じて、健一はいろんな苦悩を抱えている人たちと出会います。
- 恋人に裏切られ、捨てられた女性
- 事業に失敗し、多額の借金を抱えている男性
- 事故に遭い、片腕を失ったバレリーナ
- 難病を抱えた少年
中には死ぬことを選び、ショートカットドラッグという薬を求めて健一を訪ねてくる人もいます。
ケータリング業者をしている人間がその薬を持っているという噂を聞いて。
そんな人々を適当にあしらっていた健一でしたが、ある少年との出会いをきっかけに、薬の噂とも真剣に向き合うようになっていきます。
はたして、ショートカットドラッグは本当に存在するのでしょうか。
僕とおじさんの出会い
病院で出会った少年・英樹と健一。
ひょんなことから言葉を交わすようになったふたり。
健一は入院している英樹のために、弁当を作って持っていくようになる。
適当な料理ばかり作っていた健一だったが、英樹においしいと言われ、喜んでいる自分に気がついたのだ。
それからは、今までが嘘みたいに、真剣に料理を作るようになる健一。
英樹との関わりを通して変わっていく健一をみていると、それまでとのギャップに驚きます。
意外と優しい一面だったり、子どもみたいに声をあげて泣き出したり。
英樹のある決断も衝撃で、生きることと死ぬことについて、英樹の立場で、親の立場で、健一の立場で、自分ならどうするのかを考えざるを得なかったです。
本の感想
健一の過去。薬を求める人々。英樹の決断。
内容的には重たい部分もありますが、深く描いているわけではないのでさらっと読めます。
少年少女の成長物語はけっこうありますが、今回成長するのはおじさんだったので、なんだか新鮮でした。
個人的には、無気力で不真面目な、ダメなおじさんのほうの健一もなかなか好きです。
そんな健一を変えていった、英樹となぞの薬の存在。
特に英樹との距離感はほどよくて、英樹が健一の作った朝食を食べるシーンは、ぐっときました。
真摯に生きることから逃げてきたおじさんと、生と死に真正面から向き合う少年。
生と死を描きながらも、全体的にほっこりとあたたかい作品でした。
印象に残った言葉(名言)
「段取りを確認し、あとどれくらいだらだらしていられるかを逆算している途中で嫌気が差す。働くというのは、なんと面倒臭いのだろう。だか働かなければ食っていけない」
「料理は手を抜こうと思えばいくらでも手を抜けられますし、手を掛けようと思えば、いくらでも手を掛けられるものですから」
「お前はぐうたらなんだが、料理だけは一生懸命やる男だったろ。ま、気がのればという条件付きではあったが。だから、憎めないぐうたらだ」
「もう頑張らないよ。僕はもう頑張らないと決めたんだ」
「俺が作ったものが英樹を喜ばせている・・・それは・・・とても素晴らしいことで、俺ができる唯一で最高のことーー嬉しくて、そして切なかった」
この本の総評
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