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【読書記録】2025年1月に読んだ本一覧(計5冊)

こんにちは、ぽっぽです。

2025年1月に読んだ本を一覧にまとめました。

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今月読んだ本

今月読んだ本は全部で5冊。

『テスカトリポカ』佐藤究(著)

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メキシコで起きた、麻薬密売組織による抗争。

これにより、メキシコのカルテルに君臨していたカサソラス四兄弟の組織は、壊滅に追い込まれた。

兄弟の中で唯一生き残った三男のバルミロは、追っ手から逃れるため、海を渡ってジャカルタへ。

そこで臓器密売コーディネーターをしている日本人医師・末永と出会う。

ジャカルタを離れて日本に渡り、川崎で「心臓密売」のビジネスを立ち上げたバルミロ。

しかし、とある少年との出会いにより、運命の歯車は狂い出しーー。

第165回直木賞受賞作。

ボリュームがけっこうあるので年末年始に読もうと意気込んでいたのですが、読み始めたらあっという間で。

アステカ文明、神々への儀式、麻薬密売、臓器売買。

狂気と欲望と信仰心渦巻くただひたすらに黒い世界は、目を背けたくなるほど残虐で惨たらしいのに。

なぜか読むのをやめられない自分もまた、この暗い闇に絡めとられていくようでゾッとしました。

少しの光も見出せない、圧倒的なまでの血と暴力と破壊の物語に、こんなにも惹きつけられてしまうなんて。

私が非日常的だと感じるこの漆黒の世界が、誰かにとっての日常で。

自分の日常が無数の闇の上に成り立っているのかもしれないと思うと、なんだか足元がすっと冷たくなっていく感覚がしました。

信じ難いくらい残酷な描写も多く、現実離れしているんだけれど、どこか現実味があるのが恐ろしい。

重厚感はあるけれど、読み始めるととまらなくなるこのダークな物語を、ぜひ読んでみてください。

『チェレンコフの眠り』一条次郎(著)

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とある暑い夏の日の午後、悪名高いマフィアのボス・チェレンコフが警官隊によって銃殺された。

チェレンコフの邸宅である<生命線プラザ>が襲撃を受け、仲間たちもろとも全滅してしまったのだ。

唯一生きのこったのは、チェレンコフが飼っていたヒョウアザラシのヒョー。

ひとりのこされてしまったヒョーは、亡霊となったチェレンコフに促され、荒廃した町へと繰り出したがーー。

たったひとり、世界を漂流するアザラシの、不条理で不可思議な物語。

『ざんねんなスパイ』を履修済みなので、期待通りのぶっ飛んだ設定に思わずニヤニヤ。

今回の主役はアザラシなので、何気ない動作もアザラシで想像するだけでいちいち可愛らしい。

(なかなかにバイオレンスなシーンもあるけれど)

放射線に晒された土地、プラスチックの雨、汚染された海ーー。

まるでディストピア小説のようにすさまじく荒廃した血と暴力に満ちた世界は、終末SFのような雰囲気もあります。

設定もさることながら、やっぱり魅力的なのはユーモアと哀愁漂う文章のキレっぷり。

今回の主人公はヒョウアザラシということで、ヒョーの口から出る人間への皮肉もきいていました。

「あんたら人間ってのは、共感でしかものを見れないわけ?」

「きっとあんたは流れ星を見ても、映画のオープニングみたいだなんておもったりするようなタイプなんだろうな」

「字が読めるのが、そんなに重要なわけ?(中略)世界は文字に書けないことでいっぱいなんじゃないのか?」

こんなにもどんな展開が待ち受けているのか(というかどんな内容なのか)がわからないエンタメ小説はなかなかないので、ワクワクしながら読み進められました。

この唯一無二の世界観は好みが分かれると思いますが、好きな人はハマってしまうはず。

不思議な読み心地をぜひ体験してみてください。

『去年の雪』江國香織(著)

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おばあちゃんの身仕度を覗き見るのが好きな男の子。

自分の死に気づいたタクシー運転手。

失くした腕時計は時を跨いで平安時代の少女に拾われ、おじさんと女の子は時空を越えて路上でぶつかる。

不思議な声が聞こえる双子の姉妹、時代を行き来するカラス、別の世界をみている黒猫のトム……

数多の人々の日常を紡いだ、儚く幻想的な物語。

流れるような詩的な文章はそのままに、これまで読んできた作品では見かけなかった不思議な構成。

ひらひらと舞い散る雪を手のひらでそっと受け止めるような、そんな作品でした。

消えゆく一瞬の間にぱっと映し出される、いくつもの人生のかけら。

もう少しその先を見てみたいと思って手を伸ばしても、次のひとひらは、また別の誰かの物語を映し出す。

時間や時空を超えてゆるやかにつながる彼らの日常のように、自分のささやかな営みもまた、この世界に織り込まれているのかもしれない。

そんな不思議と温かな感覚もしました。

登場人物は100人を超え、いくつかの物語は奇妙に交わったかと思えば、一度しか描かれない人もいて。

最初は「全部把握しなければ!」とどこか必死になってしまいましたが、肩の力を抜いて流れに身を任せ始めたら、ぐっと読みやすくなりました。

そして本書の最後には、凪良ゆうさんの解説が。

『流しのしたの骨』で印象的だった会話や、『ぬるい眠り』で知ったプルキニエ現象。

同じ本を読み、同じことを感じた人がいる。そのことがなんだかとても嬉しくて。

江國作品のファンは、必ず自分の中に『江國香織の世界』を持っているのだ。

という言葉に、心の中で深く頷いてしまいました。

「なんか江國さんっぽい」としか言い表せない感覚を共有してくれる、とても素敵な解説。

江國作品への愛にあふれた解説に、読んでいるこちらもほっこりしました。

『丸の内魔法少女ミラクリーナ』村田沙耶香(著)

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私の名前は茅ヶ崎リナ!

魔法のコンパクトに呪文を唱えれば、魔法少女ミラクリーナに大変身!

今日もみんなを笑顔にするために、ミラクリーナはがんばります☆

・・・・・・という「設定」で、私が魔法少女ごっこを始めたのは、小学3年生の春のこと。

あれから27年。

ミラクリーナを辞めるきっかけを失ったまま36歳になった私は、まだ魔法少女を続けていた。

コンパクトで変身することは、ストレスフルな会社員生活を乗り切るための大事な魔法。

しかし親友を守るため、なぜかモラハラ男と魔法少女ごっこをするはめになりーー(表題作)

性別が禁止された学校「無性教室」、“怒り”が失われゆく社会を描いた「変容」など、衝撃の4篇を収録した短編種。

度肝を抜かれるぶっ飛んだ設定と、こちらの価値観を揺さぶるような問い。

そんな村田作品の魅力はそのままに、本書は短編集ということもあって重たすぎない読み心地でした。

どの物語もインパクトがありましたが、私は表題作の主人公が一番好き。

36歳の社会人が、おもちゃのコンパクトで魔法少女ごっこをしている姿はおそろしくシュールで滑稽だけど。

誰に迷惑をかけているわけでもなく、むしろストレスフルな日々をキュートな妄想で乗り切っている姿はかっこよくて。

独特なやり方ではありますが、自分の機嫌をちゃんと自分でとっていて、とても魅力的な生き方だなと感心してしまいました。

彼女の秘密のコンパクトのように、日常を楽しく料理する魔法のアイテムを持っておくことは、ストレス社会を生き抜くための素敵なアイデアなのかも。

頭の中でミラクリーナに変身することで心の平和を保っている主人公とは裏腹に、魔法少女になりきってまちがった「正義」を振りかざす親友のモラハラ彼氏。

日頃の鬱憤を晴らすために魔法のコンパクトを使うモラ男が成敗されるシーンは痛快でした。

表題作は笑える台詞やスカッとする場面も盛り込まれているので、著者の作品を初めて読む方にもおすすめできそう。

ぜひ読んでみてください。

『99%の誘拐』岡嶋二人(著)

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末期の胃癌に冒された男が死の間際まで病床で綴った、三冊の手記。

そこには、当時五歳だった息子が誘拐されたときの記憶が書き残されていた。

解決されないまま幕を閉じた、身代金誘拐事件。

そして十二年後。

かつての事件をなぞるように、新たな誘拐事件が発生した。

コンピューターを駆使して行われた、前代未聞の完全犯罪の真相とはーー?

本書が刊行されたのは1988年。

まだPCやネット通信が一般的ではなかった時代に、徹底してハイテク機器を用いた倒叙ミステリーを描いていることに驚きました。

当時からしてみれば、衝撃の近未来SFだったのではないでしょうか。

かといって今読んでみても古臭い感じはなく、逆に当時よりも犯人が仕掛けたトリックの解像度が上がってより楽しめるかもしれません。

子どもを巻き込んでいることに疑問は感じつつも、犯人が緻密な計画通りに、華麗に十億円を奪うさまはお見事。

倒叙形式なので犯人やトリックについては明らかなのですが、警察や関係者が翻弄される姿や、スピード感のある展開が小気味よかったです。

ラストにもうひと盛り上がりあるかな?と思っていましたが、意外とあっさりな終わり方。

”間違えて”しまった大人たちの最後は、どこか哀れで切なく、なんだかしんみりとした気持ちになりました。

まだ読んだことがない方はぜひ。

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