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【読書記録】2024年10月に読んだ本一覧(計5冊)

こんにちは、ぽっぽです。

2024年10月に読んだ本を一覧にまとめました。

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今月読んだ本

今月読んだ本は全部で5冊。

『流星シネマ』吉田篤弘(著)

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かつて川が流れていた、都会のへりのガケ下の町。

この町では、むかし、川に海から一頭の鯨が迷い込み、絶命したという逸話が語り継がれていた。

巨大な鯨を埋葬した<鯨塚>と呼ばれるガケの下で、<流星新聞>を発行している僕。

幼なじみのゴー君や、メアリー・ポピンズを愛するミユキさん、<ひともしどき>のカナさん、ピアノ弾きのバジ君ーー

個性的豊かな町の住人が織りなす、“再生”の物語。

シリーズ三作目の『鯨オーケストラ』を隅々まで味わうため、一作目のこちらを再読。

前回読んだのはそこまで前ではないのですが、思っていた以上に忘却していた部分があって驚きました。

アルフレッドが残した8ミリフィルム、バジ君の静かなピアノの音、アキヤマ君が消えた日のこと。

シリーズものは基本的に順番に読みたいタイプですが、吉田篤弘さんの作品はどういう順番で読んでも楽しめるんですよね。

そして一度読み終えた後は、また違う順番で行ったり来たりするのも新たな発見があっておすすめ。

この後『鯨オーケストラ』を読もうと思っていたのですが、本書を読んだらもう一度『屋根裏のチェリー』を読みたくなったので次はそちらを。

厳しい冬の寒さが終わり、暖かい春がめぐってくるように。

それぞれに思いを抱えた登場人物たちのもとに、静かな春の訪れを予感させる最後でした。

『屋根裏のチェリー』吉田篤弘(著)

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本書の主人公は、父が遺してくれたアパートの屋根裏部屋に住む、元オーボエ奏者のサユリ。

アマチュア楽団<鯨オーケストラ>が解散してしまってからは、部屋に閉じこもってばかりで。

唯一の話し相手は、頭の中にいる小さな女の子・チェリー。

チェリーは「もっと外へ出て行かなくちゃ」と言うけれど、サユリはなかなか一歩が踏み出せずにいる。

しかしある出来事をきっかけに、止まっていた時間が少しずつ進み始めてーー?

個性豊かな登場人物たちが織りなす、ささやかでいとおしい物語。

改めて『流星シネマ』と本書を再読してみると、いろんな発見がありました。

前回読んだときは気づけなかった部分も、続けて読んだことで鮮明になることもあって。

あちらとこちらが重なる場面にたくさん気づくことができるので、できれば時間を空けずに読むことをおすすめします。

アキヤマ君のこと、鯨のこと、オーケストラのこと。

二つの作品に描かれている出来事は、もっとドラマチックに派手に描くこともできると思うんですよね。

けれど淡々と描かれているからこそ、読み終えるとスルッと記憶から抜けていき。

それでも心地よい余韻は残り続けるから、またはじめから読みたくなってしまうんだろうなと思いました。

今回再読してみて一番印象的だったのは、ミユキさん。

『流星シネマ』ではなんとなく謎の多かったミユキさんですが、こちらを読んでからグッと距離が縮まったように感じました。

もう一度あちらを読んでからこちらに戻ってくると、ミユキさんの空白の時間がより切なく感じられて。

と同時に、サユリとふたりで食堂を始める未来が、眩しいくらいに明るく思えてなんだか泣きそうになりました。

太郎とサユリ以外の登場人物も、みんな個性豊かで魅力的で、それぞれにいろんな人生があって。

今回はそんな主人公以外の人物たちにも注目して読んでみましたが、より作品全体に深みが増したように思えました。

さて、それではいよいよシリーズ三作目の『鯨オーケストラ』の世界へ。

『鯨オーケストラ』吉田篤弘(著)

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町のローカルラジオ局で、深夜番組を担当することになった僕。

ある日のラジオで、十七歳の頃に絵のモデルをした思い出を語ると、リスナーから興味深い葉書が届いた。

その人はとある美術館で、僕にそっくりの肖像画を見たのだとか。

ここに行けば、僕の絵を描いた“多々さん”との再会が叶うかもしれない。

そんな予感に導かれるようにして動き出した僕に、思いがけない出会いが待っていてーー。

土曜日のハンバーガー、キッチンあおい、流星新聞、鯨オーケストラ……

すべてが繋がっていく、ささやかな奇跡の物語。

深夜ラジオ、静かな声、レコード、針がとぶ、ダブルベース。

これまでに読んできた作品と響き合うワードが散りばめられていて、見つけるたびに嬉しくて懐かしくて。

著者の作品は、読めば読むほど点が線で繋がっていくように広がっていくので、本当に奥行きがあるというか。

どの物語も終わることなく、私が読み終えた後もずっと続いているのだろうなという不思議な感覚になります。

本書はチェリーの続きということで、次は行方不明の団長の物語かな?と想像していたのですが、意外な人物が主人公で。

ミユキさんがとある美術館で出会った、アキヤマ君に似た肖像画。

そう、今回はこの絵のモデルとなった人物の視点で描かれているのです。

まさかこの絵の真相が本書で明かされるとは思っていなかったので、意外でした。

行方不明だった団長が帰ってきて、オーケストラが再結成されて、鯨の標本も完成してーー

という“大きなもの”が待ち受けていると思いきや、意外にも最後は“小さなもの”で締めくくられていて。

小さな奇跡で紡がれた物語がここに終わり、ここからまた始まっていくのだという確かな予感が静かに心を震わせました。

月船町シリーズは単体で読み返すことも多いのですが、鯨シリーズは3冊セットで再読したくなりそう。

単体でももちろん楽しめますが、このシリーズは合わせて読むことで、欠けているピースがはまっていく感覚がするんですよね。

『流星シネマ』と『屋根裏のチェリー』を読んだ方、あるいは本書から読み始めた方は、ぜひシリーズ三作を合わせて読んでみてください。

『魔女たちは眠りを守る』村山早紀(著)

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桜の花びらが舞い落ちる季節。古い港町に、ひとりの若い魔女が降り立った。

赤毛の長い髪をなびかせ、黒猫を連れて歩くその魔女の名前は、七竈七瀬。

世界中のいろんな街や村には、ひとに紛れて、魔女たちがひっそりと暮らしていたり、束の間の旅人として滞在していたりするのだ。

七瀬が目指すのは、魔女たちの住処『バーバヤーガ』。

長く旅を続け、ひとりさすらって生きる暮らしに少し疲れていた七瀬は、かつて住んでいたこの港町に帰って来たのだーー。

長い長い時を生きる魔女たちの、切なくも温かい出会いと別れの物語。

人間の街のあちらこちらで、密かに紛れるように生きている魔女たち。

ひとの子たちの眠りを守り、ときに彼らを救いながらも、その存在に気づかれることも、感謝をされることもなく。

ただ見守って、やがて静かに地上から消えてゆく。

悪い魔女が登場する作品もたくさんありますが、本書で描かれているのは、人々のささやかな日常を慈しんでくれる優しい魔女です。

長い長い時を生きる魔女と比べると、ひとの一生はとるに足らない、儚いものに映るかもしれません。

けれど彼女たちが人々に向けるまなざしは、とても穏やかで優しくて。

魔法を使えない人間たちが知恵や想像で生み出してきたものを、美しいと思える七瀬の感性も素敵だなと思いました。

子どもはもちろん、繰り返される日々に少し疲れてしまった大人にもおすすめの作品です。

子どもの頃はこういうファンタジーが大好きだったなと、なんだか懐かしい気持ちにもなりました。

不思議な魔法にワクワクしたり、もしこの世界にも魔女がいたら……と空想をしたり。

そういった純粋にファンタジーの世界を楽しむ心を、少し取り戻せたような感覚がした一冊です。

『カルピスを作った男 三島海雲』山川徹(著)

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以前「カルピスはいつか作れなくなるかもしれない」という噂を耳にし、カルピス菌について調べたことがありました。

それを機に何年かぶりにカルピスを飲んでみたらハマってしまい、夏になるとカルピスを炭酸水で割って飲むのが定番になっているこの頃。

次はカルピスのルーツについて知りたいと思っていたところ、偶然Kindle Unlimitedで本書を見つけたので、読んでみました。

カルピスの原点が“モンゴルの遊牧文化”というのは意外な事実で。

現地での乳製品の作り方や食べ方は興味深く、本来の遊牧文化や便利さがもたらした変化には思わず考えさせられ。

カルピスについて知りたいと手にした本でしたが、思いがけずモンゴルや遊牧文化についても興味を持つきっかけにもなりました。

カルピスそのものについてというよりは、カルピスが辿ってきた軌跡と、三島海雲という人物についてよく知ることができる一冊です。

カルピスといえば「アサヒ飲料」というイメージが強かったので、以前は「味の素」の傘下に入っていたという事実は意外で。

(株や経営に無頓着な三島が、うっかり味の素に経営権を奪われた話はちょっと笑ってしまいました)

現在では「カラダにピース」の方が馴染みがありますが、カルピスの最初のキャッチコピーは「初恋の味」だったことも本書で初めて知りました。

(「初恋」という言葉をキャッチコピーに使用するまでの葛藤なども、現代の感覚とは大きく違うので驚きがあります)

「カルピス」というキーワードを通して、現代とは大きく異なる当時の暮らしや価値観などを知ることができたのもよかったです。

三島海雲について語る人々が口を揃えて言うのは、彼の国利民福の理念と素直な性格。

三島が多くの人から慕われていた理由は経営者としての手腕ではなく、「社会のために、人のために、健康のために」と信念を貫き通す姿や、純粋な人柄だったのだろうということが伝わってきました。

あくまで本書は三島海雲という人物に焦点を当てた作品なので、カルピスそのものについて知りたい方にはちょっと退屈に感じる部分もあるかも。

けれど最後まで読むと「三島海雲の人生を抜きに、カルピスについて語ることはできない」ということを実感できると思います。

100年以上も愛され続けているカルピスのルーツやその原点に触れたい方は、ぜひ読んでみてください。

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