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こんにちは、ぽっぽです。
今日の一冊はこちら↓
『失われた地図』 恩田陸(著)
恩田陸さんは、多彩な作風で数々の賞を受賞してきた経歴のある、有名な作家さんです。
『蜜蜂と遠雷』で直木賞と本屋大賞をダブル受賞していて、映画化もされていますね。
『蜜蜂と遠雷』後の一作目がこの『失われた地図』。
前者の世界観に惹かれて後者を読んでみた人は、全く異なる世界観に度肝を抜かれたのではないでしょうか。
本の概要(あらすじ)
「だけど、これから先もあたしたち一緒にはいられない」
錦糸町、上野、大阪、六本木・・・日本各地に発生する「裂け目」。
「裂け目」とは、かつてそこで生きた人々の情念が形を成してできるものだ。
鮎観(あゆみ)と遼平の一族は、代々この「裂け目」を封じる力を受け継いできた。
ふたりは結婚し、息子が産まれて幸せな日々をおくっていたが、だんだんと歯車は狂い始めーー。
3つの特徴
個性がすぎる世界観
物語は、錦糸町で「裂け目」を探すところかはじまりますが、まぁついていけない。
え?これ何の話?からはじまり、人物像や会話も頭に入ってこない。
(錦糸町なので、場所のイメージはだいたいできました)
ちょっとくじけそうになりながらも読んでいくと、なんとなく「裂け目」が何なのかや鮎観たちの「仕事」についてがわかっていきます。
それでも兵隊の格好をした「グンカ」や、戦争の記憶が残る「軍都」、そしてそれらが生み出す「裂け目」など、かなり独特の世界観のため、場面を想像することもたやすくはないです。
私はお花見の場面あたりから、少しずつ鮎観と遼平の過去などもわかっていき、読みやすくなりました。
知性あふれる多彩な表現
世界観についていくのが難しいながらも、ところどころでおもしろいなと感じたのが、垣間見える著者の知性と表現力です。
- 戦闘シーンででてきた「ぽーの黒猫」
- お花見のシーンの「桜の話」
- 石垣が飛んでくるシーンで言った「草間彌生の新作か」
- グンカの例えとして「宅配便によく入っている、プチプチ」
シリアスな場面で急におもしろい表現や、なるほどなという例えを入れてくるので、思わず感心してしまいます。
そういう何気なくひっかかる部分を見つける、そんな楽しみ方もできる作品だなと思いました。
なんともいえないラスト
具体的な内容は控えますが、一言でいってしまうと「なんともいえない終わり方」です。
おそらく著者も、読者がどうとでも受けとれるようなラストにしたのではないかと思います。
希望ととるのか、絶望ととるのか。あなたはどっちでしたか?
本の感想
恩田陸さんといえば、SF・ファンタジー・ミステリー・ホラーなど、様々なジャンルを網羅している小説家です。
『夜のピクニック』や『蜜蜂と遠雷』などの作品のイメージを持っていた人は、180度違う作風に驚くと思います。
ここまで全く異なる世界観を書き分けられるのかと、正直私も驚きました。
今まで、著者のSFやミステリーに分類される作品には、なかなか触手が動かず読んでこなかったので。
今回アクション・エンターテインメント作品を読んでみて、恩田陸ワールドに驚きつつも、自分なりの楽しみ方が見つけられそうだなとも感じました。
理解できるかといわれると、難しいところではありますが・・・。
他の作品も読んでみて、慣れてからもう一度読んでみると、また違った感想がうまれそうだなと思いました。
本に出てくる言葉(意味を調べた言葉)
・阿鼻叫喚 : 非常に悲惨でむごたらしいさま。
・金襴緞子 : 華やかで美しい贅沢な織物
・ぽーの黒猫 : エドガー・アラン・ポーの怪奇小説に登場する黒猫
・快哉を叫ぶ : たまらなく愉快なことに歓声をあげること
恩田陸さんの他の作品
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