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こんにちは、ぽっぽです。
今日の一冊はこちら↓
『ペンギン・ハイウェイ』森見登美彦(著)
『夜は短し歩けよ乙女』『有頂天家族』など、独特の世界観でファンの多い著者のSF小説『ペンギン・ハイウェイ』。
第31回日本SF大賞を受賞し、映画化もされている作品です。
本の概要(あらすじ)
「この謎を解いてごらん。どうだ。君にはできるか」
ぼくはまだ小学四年生だが、もう大人に負けないほどいろいろなことを知っている。
毎日きちんとノートを取るし、たくさん本を読むからだ。知りたいことはたくさんある。
そんなぼくの住む街に、ある日突然ペンギンがあらわれた。
この不思議な現象に、歯科医院のお姉さんが関係していると知ったぼくは、謎を解明するべく研究をはじめるーー。
3つの特徴
個性的な登場人物
主人公である少年<アオヤマ君>は、大人びた口調で話す、研究が大好きなちょっと変わった小学生。
子どもとは思えないほど論理的に物事を考える少年ですが、意外に子どもっぽいところがあり、年相応の可愛らしさもあります。
そんな少年と仲良しなのが、歯科医院のお姉さん。
大人っぽい口調で話す少年と、さばさばと独特な口調で話すお姉さんの会話が、テンポが良くみていて楽しいです。
「それで、君はどう推論するの?ペンギンたちはどこから来たんだろ?」
「まだ情報が足りません」
「私は宇宙人が連れてきたんだと思う」
「可能性としては否定できないけれども、宇宙人がわざわざそんなことをする根拠が分かりません」
「侵略ね。ペンギンはかわいいから、それで地球人をたぶらかして、みんなが油断しているうちに国連本部を乗っ取るのだ」
「なるほど、筋は通りますね」
「あんまり私を馬鹿にしないで。歯を引っこ抜くよ」
他にも、いじめっ子だけれどどこか憎めないスズキ君や、気弱なウチダ君、お人形みたいに可愛いけれど気が強いハマモトさんなど、個性豊かな子どもたちが日常を彩っています。
いろんな人が出てきますが、少年とお姉さん以外はいい意味で主張しすぎず、けれどちゃんと存在感があってバランスがいいなと思いました。
不思議な現象
少年の街では、ある日を境に不思議な現象が起こります。
まずは、ペンギンの出現。そして、さまざまな生き物の出没や、草原に浮かぶ<海>の存在。
そういった不思議な現象を、少年は逐一メモに残し、仮説を立てて検証していきます。
「プロジェクト・アマゾン」や「ペンギン・ハイウェイ研究」「海の研究」など、さまざまな研究で少年の毎日はとても忙しいのです。
しかし、日々研究を進めるうちに、少年は不思議な現象たちは全てつながっていることに気づき・・・
子ども目線の好奇心でワクワクする部分と、大人顔負けの観察力で思わず感心してしまう部分と、読んでいる側もいろんな気持ちになって楽しめる内容です。
お姉さんの秘密
不思議な現象の核となるのが、歯科医院のお姉さん。
少年は、お姉さんが缶コーラをペンギンに変えてしまうところや、チェス盤をコウモリに変えてしまうところを目撃します。
不思議な現象とお姉さんは、どう関係しているのか?
お姉さんはいったい、何者なのか?
長い物語の最後で、少年はその答えを自分で導き出すことができるのでしょうかーー
本の感想
今回この作品を読むのは2回目でしたが、1回目同様、楽しんで読むことができました。
不思議な現象は想像しながら読むとワクワクしますし、少年とお姉さんのやりとりはおもしろいし、魅力的な要素満載です。
著者の他の作品とは雰囲気が違いますが、わたしはこの作品も好きでした。
映像映えする内容なので、映画化を知ったときは興味があったのですが、キャラクターが想像と違いすぎたので、結局みませんでした。
小説自体がおもしろいので、映画をみてまだ小説を読んでいない人は、ぜひ読んでみてほしいです。
子どもから大人まで、世代を問わず楽しめる一冊だと思います。
印象に残った言葉(名言)
「問題が何か、ということが分かるのは、たいてい何度も間違ったあとだ。でも訓練を積んだ人は、だんだんとそれを見つけ出すのが上手になる」
「さあ少年!目には目を!べたべたにはべたべたを!」
「ぼくはわかっている。でもわかっていることと、安心することは、ぜんぜんちがうことなんだよ」
「それだけえらくなったら、私の謎も解けるだろうな。そうしたら私を見つけて、会いにおいでよ」
「僕が知りたいのはそういうことではなかった。そういうことではなかったということだけが、ぼくに本当にわかっている唯一のことなのだ」
この本の総評
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