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【バレンタイン編】~大切な本を贈るバレンタイン~ 『さがしもの ー初バレンタインー』角田 光代(著)

こんにちは、ぽっぽです。

今日の一冊はこちら↓

『さがしもの』 角田 光代(著)

この本はすでに紹介済みですが、

【No.36】~本好きの人に読んでほしい、本の魅力が詰まった9つの物語~ 『さがしもの 』角田 光代(著)

今回はバレンタインにちなんで、前回紹介しきれなかった短編のひとつ『初バレンタイン』についてご紹介します。

 

チョコレートと一緒に、大切な本を贈るバレンタインも素敵ですよね。

 

本の概要(あらすじ)

「人に本を贈るのはむずかしい。とくに、好きな人に贈るのは」

 

中原千絵子23歳、大学生。

 

2歳年下の田宮滋とは、2ヶ月前に交際をはじめたばかりだ。

 

恋人がいるはじめてのバレンタインに、気合が入る千絵子。

 

チョコレートだけでなく、自分にとっていちばん大切な本を贈ろうと決意するが・・・

 

甘くてほろ苦い思い出と、一冊の本の物語。

 

3つの特徴

人生を変える本

千絵子ははじめて恋人のいるバレンタインに気合が入っています。

チョコレートだけでは芸がない、他に何かもうひとつ贈りたい、そして千絵子が思いついたのは、一冊の本でした。

あまり名の知れない作家の、さらに知られていないデビュー作。

この本を、中原千絵子は中学三年生のとき読んだ。読み終えて、神様ありがとうとまず思った。神様、この本が世界に存在することに感謝します、と。この本が存在するのとしないのとでは世界はだいぶ違うだろうと中原千絵子は考えた。そうして、二十三歳になった今も、この本に出会うか出会わないかで私もだいぶ違っただろう、と思うことがある。

自分にとって大切なこの本を、千絵子は大好きな人にも読んでほしいと思ったのです。

一冊の本に出会うか出会わないかで人生が変わる、というのは大袈裟ではなく本当にそうだと思います。

きっと著者もこういった経験があったのだなと、千絵子の言葉から感じました。

 

千絵子の失敗

本を贈ろうとは決めたものの、千絵子はふと不安になります。

本なんか贈って暑苦しいと思われないだろうか。読め、と言ってるようなものだし。世界観を押しつけるみたいにとられないだろうか。それに、もし田宮滋がこれを読んでもなんにも感じなかったらどうしよう。

そして、いざとなったらチョコレートだけ渡そうと決め、デパートに買いに行きますが、殺人的に混んでいるチョコレート売り場にあえなく撤退。

仕方がないので本だけを贈ろうと当日をむかえますが、予想外のハプニングに、落ち込む千絵子。

最後の最後でなんとか本を渡しますが、滋が「え、何これ」という顔をしたのを千絵子は見逃しませんでした。

失敗した、と中原千絵子は思い知る。チョコレートを用意するべきだった。ごくふつうの、みんなと同じことをするべきだった。

 

七年後の物語

苦い思い出で終わったはじめてのバレンタイン。

それから七年後の物語が綴られています。

田宮滋とはあの後別れ、その後何度か恋愛を経験した千絵子は、来月結婚することになっています。

新居への引越しのため荷造りをする千絵子は、夫となる藤咲健二の本棚からある一冊の本をみつけます。

その本は、二十三歳の千絵子が恋人に贈った、あの本でした。

忘れていたいろんなことが、波のように押しよせます。

世界一だれかを好きだと思ったこと。その子の姿を見てかっこいいとどきまぎしたこと。本を選んだこと。選んで後悔したこと。チョコレート売り場の混雑。いっしょにいたいのにいつも帰りたかった、こんがらがった毛玉のようなあの気分。

藤咲健二はその本を、高校生の頃の彼女にもらったと言います。

どうだった、読んで?自分の問いが、やけに切実な響きを伴って中原千絵子の耳に届く。

「どうって、おもしろかったんじゃないかな、線引いてるし」

「感謝した?それをくれた女の子に」

「うん、そうだね、はじめてつきあった子だったしね」

前半の胸の痛みが、ふわっと和らいだラスト。

本を選んで渡したことを後悔をしている七年前の千絵子に、「大丈夫だよ」と言ってあげたくなりました。

 

本の感想

バレンタインと本をテーマにしたひとつの物語。

 

この物語のように、本をプレゼントしたり、されたりしたことがある人はいますか?

 

私は毎年、クリスマスプレゼントに本を贈りあっています。

 

自分の好きな本を選ぶか、相手の好きそうな本を選ぶか、毎年悩みながら一冊の本を選びだします。

 

どんな本をもらっても嬉しいですし、相手もきっとそうだとわかっているのに、やっぱり渡す前は千絵子のように不安になったりします。

 

でも、本を選んで渡すのも、相手が選んでくれた本をもらうのも、読み終わったあとにさらに交換して感想を伝え合うのも、どれもとても楽しみなんです。

 

この話を知り合いにして、「え?クリスマスプレゼントに本?安っ!普通アクセサリーとかバッグとかでしょ」とドン引きされたことがあります。

 

本を読まない人にとっては、”普通じゃないプレゼント”として認識されてしまうのかもしれません。

 

誰にでも喜んでもらえるとは思いませんが、もし自分にとって大切な本があるのなら、大切な人にその本を贈ることはとても素敵なことだと思います。

 

今年のバレンタインは、チョコレートと一緒に、一冊の本を贈ってみるのはどうでしょうか?

 

 

印象に残った言葉(名言)

「自分の一番好きな本を贈るなんて、すてきじゃないの」

 

「彼はこの本を読んでなんと言うだろう。どの部分に感動するだろう」

 

「自分も、夫になるこの人も、はじめてだれかを好きになり、いっしょにいたいのにいっしょにいると気まずい思いを味わって、プレゼントひとつ贈るのに考えて考えて、自分以外のだれかのことをそんなに考えるのなんかはじめてで、はじめてのそのことにびっくりしたり疲れたりして、そうして今、ここにいるんだなあ」

 

「けれど本当に人生が変わったとしたら、それはその本を読んだときではなくて、その本をだれかのために選んだときかもしれない」

 

角田光代さんの他の作品

【No.15】~恋でも愛でもない感情の行き着く先は?~ 『愛がなんだ』 角田 光代(著) 【No.25】~悩みながらもひたむきに生きる女性を描いた小説~ 『薄闇シルエット』 角田 光代(著) 【No.36】~本好きの人に読んでほしい、本の魅力が詰まった9つの物語~ 『さがしもの 』角田 光代(著)

 

この本の総評

読みやすさ
(5.0)
共感
(5.0)
(5.0)
バレンタイン
(4.0)
総合評価
(4.5)

 

 

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