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こんにちは、ぽっぽです。
今日の一冊はこちら↓
『ボーイミーツガールの極端なもの』山崎ナオコーラ(著)
著者の名前は前から知っていたのですが、なんとなく読む機会がなく今日まできてしまいました。
ペンネームの由来は、「コーラが好きだから」らしいですが、じゃぁナオの部分は?と思って調べてみたら、本名が山崎直子さんなんですね。
”山崎直子+コーラ” で山崎ナオコーラ。
どんな小説を書く人なのか気になっていたので、今回たまたまこの作品をみつけられて良かったです。
本の概要(あらすじ)
「絶対的な恋なんてない」
9つの短い物語を綴った、連作短編小説。
野球選手の妻になりたい大学生、さようならを言ったことがない青年、付き添いがいないとテレビに出られないアイドル・・・
年齢も、性別も、境遇も異なる男女が出会い、恋をし、ときには別れを経験する。
不器用でも、不格好でもいい。
ひとりひとりの恋愛を、生き方を、そのまま肯定してくれる優しい一冊。
3つの特徴
極端な人々とサボテン
この作品では、ひとつの物語につきひとつのサボテンが登場します。
この設定を知らずに読んだ私。
最初のページがいきなりサボテンの写真だったので、「あれ?間違えて植物図鑑読んでる?」と焦りました。
物語の主人公たちは、みんなそれぞれに”極端な部分”をもった人たち。
サボテンもまた、主人公にぴったりの極端な形をしたものばかりです。
サボテンについての知識はまるでなかったので、こんなにもいろんな形のサボテンがあるのかと驚きました。
名前がまたすごいのです。
「白雲鸞鳳玉(はくうんらんぽうぎょく)」「白刺竜女冠(しろとげりゅうじょかん)」「鬼面角(きめんかく)スピラリス」「吹雪柱綴化(ふぶきちゅうてっか)」などなど。
どんな形のサボテンなのか、気になりませんか?
著者がサボテンとのコラボをした意図はわかりませんが、サボテンの生き方は人間と似ているな、と思いました。
サボテンや多肉植物の場合、他の植物と違って一気に大きくならず、ちょびちょび生長する。
もこもこ伸びたり、真っ直ぐに伸びたり、休んだり・・・様々な生長を繰り返して、サボテンや多肉植物は、その個体だけの、唯一の形になっていく。
サボテンごとに特徴が違うので、自分にぴったりのサボテンをみつけてみたくなりました。
少しずつ繋がるそれぞれの物語
私はどちらかというと長編小説派なのですが、この作品のような”連作短編小説”もとてもすきです。
- ひとつの物語が終わっても、また別の物語で再会できる
- 前の主人公の後日談を、別の物語の中でさらっと知ることができる
こういったところが、連作短編ならではの良さですよね。
それぞれの物語の主人公たちが、直接的あるいは間接的に関わっていくので、最終的には個々の短編でありながらも、ひとつの物語を読んだ気持ちになりました。
- 野球選手の妻になるために管理栄養士になった女の子の話「野球選手の妻になりたい」
- いじめがきっかけで引きこもるようになってしまった、松田聖子に恋する兄の話「恋人は松田聖子」
- 自分からは決して”さようなら”が言えない弟の話「さようならを言ったことがない」
- 同性に対する恋心を描いた「ガールミーツガール」 etc..
これらの物語が、後半に進むにつれて、だんだんと繋がってゆきます。
「さようならが言えない弟の話」
生まれつき「別れ耐性」を持っていない入鹿(いるか)は、0歳のときから、誰とも別れようとしなかった。
「さようなら」を口にしたことも、手を振ったこともない。
さらに、入鹿は人だけではなく物に対しても「さようなら」ができない。
使い終わって毛が開ききった歯ブラシともお別れできず、子供の頃から使ってきた代々の歯ブラシを、ぎっしりと抽出の中に隠している。
寝る前に小説を読み切ってしまったときは、本を閉じるのが辛く、最終ページを開いたまま布団に載せて眠る。
しかし、さようなら以外のことは何でもできた入鹿。
成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗。もちろん、女の子からもモテる。
しかし、女の子と付き合いが始まったら絶対に別れず、告白されると断ることもできない入鹿。
何人もガールフレンドがいるという状況になり、責められる入鹿だったが、それでも自分が間違っているとは思えない。
「別れるのが嫌だ」というのは、そんなにおかしいものだろうか。と疑問を持ち続けていた。
「世間に馴染めなくても、友人から嫌われることがあっても、できるだけ人とは別れずにやっていこう」と十八歳になった入鹿は、腹を決めた。
しかし、あることがきっかけで自室にこもるようになってしまった入鹿。
ある日、兄のくれたサボテンを見て、こう思う。
その真っ直ぐな根元と、先に広がったぶざまな赤い部分とを比べてみて、ああ、もう僕も、真っ直ぐには生きられない、と悟った。傷を抱えてこの先の人生を進むしかない。しかし、これからも絶対に「さようなら」は言えないと思ってしまうのだった」
少し切ない終わり方ですが、また別の物語で、入鹿とある女の子の後日談を知ることができ、安心しました。
どの物語もよかったですが、私はこの物語がいちばんすきです。
本の感想
著者の独特のペンネームから、小説の内容も奇抜なものを想像していましたが、予想とは全然違いました。
サボテンとのコラボという設定は独特ですが、人それぞれの恋愛の仕方を肯定してくれる、やさしい小説です。
恋愛小説ではありますが、おばあさんの初恋だったり、引きこもり青年の松田聖子さんへの恋心だったりと、いろんな恋愛の形を描いています。
典型的な恋愛小説が苦手な私でも、最後まですらすらと読むことができました。
何歳になったって、どんな人間だって、同性同士だって、人それぞれの恋愛をすればいいのだ。
そんなふうに思わせてくれる作品です。
印象に残った言葉(名言)
「私の人生には、昼の輝きがなかった。生まれてから死ぬまで、ずっと夜だった」
「自分の人生を進めるために人と関わるのではない。何の意味もなく、人と関わるのだ」
「男のことは、ひとり占めできなくて、全く構わない。ただ、自分のこの胸の高鳴りが、できるだけ長く続くことを竜子は願っている。棺桶に入るときまで、自分の体が痺れていたら、どんなに良いだろうか」
「お互いが生きているだけで、いや、どちらかが死んだって、愛していける。高め合うためでなく、祈るために関係を築く」
「振られたって恋だ。想いを伝えられない片思いだって恋だろう。同性に恋する人もいる。ひとりではなく何人もの人に恋をする人だっている。言葉も体も交わさない恋もある。絶対的な恋なんてない。ひとりひとりの、個人的な恋しかないのだ」
この本の総評
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