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【No.43】~ありふれた日常の尊さと儚さに気づかせてくれる〜 『100回泣くこと』 中村 航(著)

こんにちは、ぽっぽです。

今日の一冊はこちら↓

『100回泣くこと』 中村航(著)

何年も前に読んだきりになっていたので、もう一度読み返してみました。

関ジャニ∞の大倉忠義さん✖️桐谷美玲さんで映画化もされているみたいです。

大切な人より先に死ぬか、後に死ぬか。もし選べるとしたら、どちらを選びますか?
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本の概要(あらすじ)

「バイクで帰ってあげなよ」

 

実家で飼っている犬「ブック」が死にそうだと母から連絡を受けた僕。

 

バイクで拾ってきたその犬は、2ストのエンジン音を聞くと大喜びする犬に育った。

 

ブックのために、四年近く乗っていなかったバイクをよみがえらせ、実家に帰ろうと決めた僕。

 

彼女と一緒に分解したキャプレターを洗いながら、僕は彼女に「結婚しよう」と告げた。

 

一年間、結婚の練習をしようと言ってくれた彼女。

 

バイクは無事よみがえり、ブックも一命を取り留めた。

 

しあわせの連鎖は、ずっとずっと続くと思っていた・・・

3つの特徴

ブックとの出会い

浪人中だった僕こと藤井くんは、図書館で勉強した帰りに、図書館の駐輪場に捨てられていた犬と出会いました。

図書館にいたから「ブック」と名付けられたその犬は、目覚まし時計がお気に入りの、4ストと2ストのエンジン音の違いのわかる犬に育ちます。

上着の胸にブックを入れて顔だけ出し、バイクを走らせ河原に連れて行く様子は、想像するだけで可愛くてたまらないです。

ボールを投げて「取ってこい」と指さすと、とことこと嬉しそうに拾いに行くブック。

僕らは気まぐれに河原を走った。走るのに飽きると、石を投げた。川面で石が跳ね、パシャ、パシャ、パシャと水しぶきを上げる。ブックは口を開けて、それを眺める。「取ってこい」と向こう岸を指さすと、冗談ですよね?という顔で僕を見上げる。可愛いヤツだった。

ブックとの思い出はそう多くは描かれていませんが、私はこのシーンがとても好きです。

結婚の練習

バイクのキャプレターをベランダで洗いながら、僕は彼女にプロポーズをします。

「はい」と返事をしてくれた彼女。

それからふたりは、結婚の練習をはじめます。

一週間、結婚してみる。うまくいったら一年結婚してみる。僕らは結婚したつもりになって、一年くらい暮らしてみることに決めた。

一緒に暮らしはじめてから、藤井くんは毎晩みる夢の人称が”We”に変わっていたことに気づきます。僕ではなく、僕ら。

そうやってふたりは徐々に、YouとIからWeになっていきます。

恋人同士だったふたりが、結婚にむけて同じ方向を向いて歩いていく。

感情のままに追い求める恋愛小説と違って、お互いが地に足をつけてしっかりと育んでいく、そんなふたりです。

藤井くんみたいな人がタイプだと笑う彼女。柔道をして藤井くんを投げまくりたいと言う彼女。モグラの馬力を計算する彼女。解熱の舞いを踊ってほしいと言う彼女。

そんな彼女に対し、受け身の練習をしたり、くるくると解熱の舞いを踊ったりして応える藤井くん。

私は著者の描くユニークで可愛らしい「彼女」がとても素敵だなと思いました。

彼女の強さ

病気が判明した彼女は、不安や恐怖のなかにいながらも、しっかりとした口調で藤井くんに病気のことを説明します。

そして藤井くんも、自分にできることを必死に探し続けます。

「絶対に生還するね」と言う彼女。

抗がん剤治療で体重が減っても笑いながら「だいたい一ストーンくらい」笑う彼女。

「僕の彼女はなんて立派なのだろう」と藤井くんは思います。

何気ないその言葉を口にするのに、どれだけの強さが必要なのか。

彼女はいったい、どれだけの不安と恐怖に耐えながら藤井くんの前で笑うのか。

しかし治療は功を奏さず、彼女は余命三ヶ月と宣告されます。

僕はあと何年生きるんだろう。なぜその半分を彼女に分けてあげられないんだろう。喜びや悲しみや笑いを分かちあって、ここまでやってきた。だけど僕らはなぜ、病や死を分かちあえないんだろう・・・。

「元気になりたい」とささやく彼女の目から落ちる一筋の涙。

「大丈夫」「大丈夫だよ」と繰り返すことしかできない藤井くんの姿に、胸が痛くなりました。

彼女がいなくなってから時間が経ち、だんだんとWeではなくなっていく僕ら。

けれど藤井くんのなかで、彼女はいつまでもYouであり続けるのです。

本の感想

最初に読んだのは学生のときで、愛する人が死んでしまうという、いわゆるベタな恋愛小説だと思っていた気がします。

 

大人になってからまた読んでみると、当時はこの作品のよさを全然わかっていなかったのだなと痛感しました。

 

「大切な人の死」をテーマにしている作品は世の中にあふれていて、私はそういった作品をひとくくりにして「またお涙頂戴的なやつね」というどこか白けた目で見ていた気がします。

 

やたらドラマチックに描いていたり、壮大なラブストーリー感が強いものはあまり心を動かされないのですが、そうじゃない作品もあるのだと、この小説が教えてくれました。

 

ありふれた日常のなかにある幸せも、哀しみも、同じくらいたんたんと描かれていて、だからこそ胸に響くものがありました。

 

どんなにつらい出来事があっても、たんたんと現実は続いていく。

 

著者はそれをただひたすらに、真っ直ぐに描ける人なのだと思います。

 

永遠はない。どんなに大切に想っていても、終わりの瞬間は必ずくる。

 

何気ない日々のなかにある幸せの尊さを、そして儚さを、気づかせてくれる作品でした。

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印象に残った言葉(名言)

「やあ、嫁に来たよ」

 

「なまねこなまねこ」

 

「でもこれからは藤井君が全部覚えておいて」

 

「箱が欲しい。絶対に開かない箱を作って欲しいの」

中村航さんの他の作品

【No.54】~10年ぶりに再会したふたりの、切なくも甘酸っぱい物語〜 『あのとき始まったことのすべて』 中村 航(著)

この本の総評

読みやすさ
(5.0)
恋愛
(4.0)
(4.0)
切なさ
(5.0)
総合評価
(4.0)

 

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