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【No.42】~風変わりでいとおしい、ある家族の物語〜 『流しのしたの骨』 江國 香織(著)

こんにちは、ぽっぽです。

今日の一冊はこちら↓

『流しのしたの骨』 江國 香織(著)

少し風変わりなひとつの家族の内側を描いた物語。

やさしい、あたたかい、さみしい、こわい・・・一言では表せない、いろんな気分になる小説です。

 

江國さん独特の言葉選びや雰囲気を感じられる一冊です。

 

 

本の概要(あらすじ)

「私、もし誰かを殺してしまったら、骨は流しのしたにかくすと思う」

 

19歳のこと子は、いまはなにもしていない。

 

おっとりしているが頑固な長女・そよちゃん、妙ちきりんだけど優しい次女・しま子ちゃん、平やかな心をもつ小さな弟・律。

 

さまざまなこだわりを持つ母と、規律を重んじる父の、六人家族。

 

愛に溢れた、それでいて少し風変わりな宮坂家の日常を描いた、静かでささやかな物語。

 

3つの特徴

宮坂家の人々

「なんかへんだな」そんな雰囲気がただよう物語です。

ひとりひとりがどことなく個性的で、家族全体としてみても、どこか風変わり。

父のいないときに化粧をし、父の前では化粧をおとす母。

マイペースなのに超人的に頑固なそよちゃん。

どうしようもない男の人ばかりを好きになる、やさしくて妙ちきりんのしま子ちゃん。

聡明で穏やかだか、妙に幼さを感じる律。

そして主人公のこと子は、夜の散歩をする以外は、毎日ぶらぶらしています。

そんな宮坂家の日常がたんたんと描かれていますが、ささやかな事件もおこります。

そよちゃんの離婚、他人の赤ちゃんをひきとりたいと言うしま子ちゃん、律の停学・・・

けれど、依然として物語はたんたんと流れていきます。

そんな中でも特に印象に残っているのが、こと子がそよちゃんに離婚について聞く場面です。

「離婚するってどんな気持ちのもの?」

そよちゃんは鍋をみたまま少しだけ考えて、それから微笑を含んだ声でおっとりと、

「そうねえ、半殺しにされたままの状態で旅にでるような気持ち、かしら」と言う。

 

家族の秘密

家族というのはとても閉鎖的で、個性的です。

その家族だけの、決まりごとや習慣やタブーがある。

リモコンの呼び方ひとつとってみても、家庭によってさまざまです。

この物語では、そんな家族の内側を、こっそりと覗き見ることができます。

宮坂家はかなり独自性を持った家族なので、彼らにとっての日常は、私にとっては非日常でした。

そんな彼らの秘密を他人に見られてしまう決定的な場面があります。

こと子のボーイフレンドの深町直人と律と三人でフルーツパーラーに行ったときのこと。

その瞬間だった。たぶん律自身がいちばんびっくりしただろうと思うのだけれど、運ばれてきた深町直人のグレープゼリーーそれは、たしかに意表をついて大きく、透き通った葡萄色がいかにもつめたくて、昔風にぷりぷりと固く弾力のありそうなゼリーだったがーーを一目みるやいなや、律は身をのりだし、ひとさし指でそれをつついた。

自分のした行動に驚く律。家族以外の人間の前でそんなふるまいをする律におどろくこと子。

私と律は黙りこんだ。マナーとか行儀とかの問題ではなく、なんとなく、秘密をみられてしまったような気がしたのだ。

家族の前だけではするけれど、人前では絶対にしないようなこと。それをなぜだか深町直人の前でしてしまったのです。

このシーンは、なんだか私も見てはいけないものを見てしまったような気がして、思わず目をそらしたくなってしまいました。

 

流しのしたの骨

「流しのしたの骨」というのは、「かちかちやま」の物語に出てくるセリフのことです。

こと子たちは子どもの頃、母にいろんなお話をしてもらっていました。

なかでも衝撃的だったのがかちかちやまで、これは、私や律は勿論、いちばん年上でたいていの物事には動揺しない(と、当時私たちが思っていた)そよちゃんまで、容赦無く恐怖の底にたたきおとした。

「流しのしたの骨をみろっ」

離婚するそよちゃんの荷造りを手伝うため、台所の下の扉をあけること子としま子ちゃん。

パスタや缶詰、豆板醤、得体の知れない瓶詰めに、扉の裏にぶらさがっているたくさんの包丁・・・

そよちゃん家の流しのしたを見て、ふたりはあの物語を思い出したのです。

「私、もし誰かを殺してしまったら、骨は流しのしたにかくすと思う」

しま子ちゃんがぽつんと言った。

「私も」

奇妙な確信をもって言った。

秘密を隠すのは流しのしたがいちばんですね。

 

本の感想

江國さんのほとんどの小説に、変わった人たちが登場します。

 

こんなにもへんな人たちを描くのが上手な作家さんは、江國さんの他にいないんじゃないかと読むたびに思います。

 

この作品では、ひとつの風変わりな家族をとおして、彼らだけの閉鎖的で独特な世界をみることができます。

 

私は宮坂家の人たちがとても好きです。とくに、兄弟たちの仲の良さはみていてとても羨ましかったです。

 

台風キャンプや読書ごっこ、真夜中の電話や、シュウマイ作り・・・

 

たんたんとしていて静かで、流れるように時間が過ぎていきます。

 

この物語では、家族以外の人間はほとんど出てきませんが、そんな中でも唯一登場場面が多いのが、深町直人です。

 

私はこと子と深町直人の距離感が、とても心地よく感じられて好きでした。

 

著者ならではの個性あふれる表現もたくさん出てくるので、江國さんの小説が好きでまだ読んでいない方がいれば、ぜひ読んでみてください。

 

 

江國香織さんの他の作品

【No.8】~静かな狂気と、果てない旅の物語~ 『神様のボート』 江國 香織(著) 【No.50】~少女と大人のあいだで揺れる女子高生の孤独と幸福を描いた物語〜 『いつか記憶からこぼれおちるとしても』 江國 香織(著) 【No.58】~奇妙な三角関係を描いた、すれちがう魂の物語〜 『落下する夕方』 江國 香織(著) 【No.72】〜風変わりな一族を描いた、愛と秘密にあふれる物語〜 『抱擁、あるいはライスには塩を』江國 香織(著)

 

印象に残った言葉(名言)

「大切なのは幻想を抱かないこと。それに相手を間違えないことね。心配しなくても大丈夫。みかけほど悪いものじゃないのよ」

 

「ボーイフレンドって素敵よね。いるあいだはたのしいし、いなくなると気持ちいい」

 

「仕方ないわよ。万物はすべからく流転するんだから」

 

「台所には近づきたくないと思っていた。なにかぞっとするような、誰も知らない秘密がかくされているような気がして、心の底で気をつけていた」

 

この本の総評

読みやすさ
(5.0)
個性
(4.0)
家族
(5.0)
雰囲気
(5.0)
総合評価
(4.5)

 

 

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