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【No.119】京都を舞台に繰り広げられる、ユーモアたっぷりの青春恋愛ファンタジー『夜は短し歩けよ乙女』 森見 登美彦(著)

こんにちは、ぽっぽです。

今日の一冊はこちら↓

『夜は短し歩けよ乙女』 森見登美彦(著)

言わずとも知れた森見登美彦さんのベストセラー小説。

2017年にはアニメーション映画化され、第41回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞しました。

主人公の声を<星野源さん>が、黒髪の乙女の声を<花澤香菜さん>が担当されていましたね。

Amazon Kindleで無料になっているので、まだ読んでいない方はこの機会にぜひ!

個性豊かに彩られた、ユーモアあふれるラブストーリーです。

ファンタジー要素の強いラブコメディ!

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本の概要(あらすじ)

「夜は短し、歩けよ乙女」

 

クラブの後輩である、黒髪の乙女にひそかに想いをよせる私。

 

彼女の後ろ姿を見つめに見つめてはや数ヶ月。

 

なんとか彼女の眼中に入りたい私は、「なるべく彼女の目にとまる作戦」通称「ナカメ作戦」を決行する。

 

夜の木屋町先斗町で、夏の下鴨神社の古本市で、秋の学園祭で。

 

しかし、彼女のあとを追いかける私を待ち受けていたのは、珍事件の数々だったーー

3つの特徴

個性豊かな曲者たち

本作の魅力のひとつでもある、個性的な登場人物たち。

<黒髪の乙女>
好奇心旺盛で天然な女子大生。純粋で優しく、マイペース。かなりの酒豪。得意技は「おともだちパンチ」と万能のおまじない「なむなむ!」

<先輩>
黒髪の乙女に想いをよせる、偏屈な大学生。<もはや私は彼女の後ろ姿の世界的権威である>と自負している。「ナカメ作戦」でなんとか彼女の眼中に入ろうと、四苦八苦。

<羽貫さん>
黒髪の乙女が夜の街で出会った、大酒飲みの美女。他人の宴会にまぎれこんでタダ酒を飲むことが得意で、酔っぱらうと人の顔を舐める。

<樋口さん>
羽貫さんとともに夜の街で出会った、浴衣姿の若い男。自称「天狗」。

<東堂さん>
「東堂錦鯉センター」の経営者。災厄のために借金を重ね、落ち込んでいるところに黒髪の乙女と出会う。

<李白さん>
木屋町先斗町界隈では有名なオカネモチの老人。本業は高利貸し。底抜けにお酒を飲み、偽電気ブランの元締めを務めていたりもする。

<学園祭事務局長>
先輩の友人のひとり。男にはもったいないほどの美貌の持ち主。趣味は落語と女装。先輩の恋心にも気付いており、アドバイスをくれる。

<パンツ総番長>
願いごとが叶うまでパンツを穿き替えないと誓い、歴代記録を塗り替えて「パンツ総番長」の称号を手にした男。

<須田紀子さん>
学園祭で「象の尻を撫でる」という出し物をしている美女。小さくて丸いものが大好き。

 

他にもまだまだたくさんの個性的なキャラクターが登場します。

私が一番好きなキャラクターは、キュートで天然な「黒髪の乙女」!

どたばたラブストーリー

物語の語り手は、<黒髪の乙女>と<先輩>のふたり。

視点が切り替わるタイミングが絶妙で、テンポよくサクサクと読み進められます。

乙女の視界に入ろうと奮闘しては、空回りを繰り返す先輩。

そんな彼の姿に「阿呆だなあ」と呆れつつも、その必死さには思わず声援をおくりたくなってしまいます。

そして、そんな先輩の想いなどつゆ知らず、出会すたびに<あ!先輩、奇遇ですねえ!>と天真爛漫な笑みを浮かべる、黒髪の乙女の天然さよ。

好奇心旺盛で純粋な彼女が見せる、驚くべき酒豪っぷりや<おともだちパンチ>はとても魅力的。

本作の骨格だけを抜き出すと、いたってシンプルでありふれたラブストーリー。

ですが、他の様々な要素を加えることで、キュートでポップな恋愛ファンタジーとなっているのです。

珍妙な事件

京都のいたるところへ黒髪の乙女の跡を追いかけては、珍事件に巻き込まれる先輩。

春には夜の街をもみくちゃにされながら歩き抜き、夏には古本市で火鍋の死闘に挑み、秋の学園祭ではゲリラ演劇の大役を乗っとった。

空想と現実の境界が曖昧な、ユーモアあふれるハチャメチャな展開が続きます。

偽電気ブランや、天狗、『ラ・タ・タ・タムーちいさな機関車のふしぎな物語』の絵本や、象のお尻・・・などなど、興味深いものもたくさん。

特に、「パンツ総番長」「韋駄天コタツ」「偏屈王」「桃色ブリーフ」など、阿呆すぎて笑える学園祭がカオスの極み。

果たして先輩は、難攻不落の黒髪の乙女の城を落とすことができるのか!?

作中に登場する黒髪の乙女の思い出の絵本『ラ・タ・タ・タム』もぜひ読んでみてください!
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本の感想

ありふれたラブストーリーも、森見さんの手にかかるとこんなにも独創的な世界観になるのだとびっくり。

 

その独特さ故に好みは分かれそうですが、私はとても楽しみながら読みました。

 

昔は森見さんの作風が少し苦手だなと感じていたのですが、最近になってやっとその面白さにハマりつつあります。

 

本作の魅力はなんといっても「黒髪の乙女」のキャラクター。彼女の魅力なくしてこの物語は語れません!とにかく可愛い!

 

そんな彼女のマイペースさと、周囲で繰り広げられているシュールな展開とのコントラストが絶妙です。

 

本作に登場した「詭弁論部」や「桃色ブリーフ」「天狗」などは、以前読んだ『新釈 走れメロス』にも登場しているので、そちらも合わせて読んでみてくださいね。

 

なむなむ!

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印象に残った言葉(名言)

「親指をひっそりと内に隠して、堅く握ろうにも握られない。そのそっとひそませる親指こそが愛なのです」

 

「硬く握った拳には愛がないけれども、おともだちパンチには愛がある。愛に満ちたおともだちパンチを駆使して優雅に世を渡ってこそ、美しく調和のある人生が開けるのです」

 

「私は太平洋の海水がラムであればよいのにと思うぐらいラムを愛しております」

 

「若人よ、自分にとっての幸せとは何か、それを問うことこそが前向きな悩み方だ。そしてそれをつねに問い続けるのさえ忘れなければ、人生は有意義な者になる」

 

「忙しいって言う人間ほど閑なものだ。閑であることに罪悪感を抱くから、やたら忙しいと吹聴したがるんだね」

 

「本を巡る偶然に出くわした時、私は何か運命のようなものを感じてしまうのです。そして、私はそれを信じたい人間なのです」

 

「出版された本は人に買われる。やがて手放され、次なる人の手に渡る時に、本はふたたび生きることになる。本はそうやって幾度でも蘇り、人と人とをつないでいく」

 

「今までの人生で読んできた本をすべて順に本棚にならべてみたい。誰かがそう書いていたのを読んだことがある。そういう気持ちが君にはあるか」

 

「学園祭とは青春の押し売り叩き売り、いわば青春闇市なり!」

 

「桃色で、しかもブリーフだと!おお、神も仏もないのか!」

この本の総評

読みやすさ
(4.0)
ストーリー
(4.0)
ユニーク
(5.0)
恋愛
(4.0)
総合評価
(4.0)

 

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