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【No.118】〜安全でも適切でもない海を、愛を抱えて漂う女性たちの物語〜 『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』 江國 香織(著)

こんにちは、ぽっぽです。

今日の一冊はこちら↓

『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』 江國 香織(著)

久しぶりに購入した、江國香織さんの小説。

短編小説は『いつか記憶からこぼれ落ちるとしても』以来です。

色とりどりで、不可解で、凛々しくて、いとおしい。

いろんなテイストの物語に満ちた作品です。

いくつもの人生を切りとった、幸福で切ない物語。

 

文庫本はこちら⬇︎

本の概要(あらすじ)

「死ぬまでこんなふうに暮らせるかしら」

 

さまざまな女性たちの「愛」を描いた10の物語。

 

愛することと幸福は、決して同義ではない。

 

安全でも適切でもない人生の中で、それでも彼女たちは愛に生きる。

 

第15回山本周五郎賞受賞作品。

3つの特徴

10の物語

表題作をはじめとする、10の物語で構成されている短編小説集。

<愛にだけは躊躇わないーー躊躇わなかった>女性たちの一人称で、淡々と語られる物語です。

いくつもの人生の、たった一瞬を切りとったような。

二十ページほどしかないその物語たちは、短編小説とはいえあまりに刹那的。

しかし、それでいて物足りなさはなく、凝縮されたエッセンスが詰まっているのです。

  • 『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』
  • 『うんとお腹をすかせてきてね』
  • 『サマーブランケット』
  • 『りんご追分』
  • 『うしなう』
  • 『ジェーン』
  • 『動物園』
  • 『犬小屋』
  • 『十日間の死』
  • 『愛しいひとが、もうすぐここにやってくる』

『サマーブランケット』が特にお気に入り!

印象的な食べもの

江國さんの小説に登場する「食べもの」って、やたら印象に残りませんか?

なんてことのないありふれた食べものでも、江國さんの手にかかるととても魅力的にうつるのです。

そして本作にも、たくさんの食べものが登場します。

死に瀕した祖母を見舞いに行く途中で寄った、“マクドナルドのドライブスルー”。

身体全部を使って味わう、“甘く焦げたフォアグラ”。

年下の男の子と、砂浜でブランケットにくるまって食べる“オレンジ”。

犬小屋で眠る夫に気を揉む妻と“シュークリーム”。

初めて恋をした男が、ハーレーにまたがって食べていた”ホットドック”。

週に一度の逢瀬のあとに、乱れたベッドで食べる”エクレア”。

特に食べものの描写が印象的だったのは、いくつもの<食>を共有するカップルを描いた『うんとお腹をすかせてきてね』

あたしたちの身体はもうかなりおなじものでできているはずだ。栄養素というか、肉体的組織の構成成分として。その考えは、あたしを誇らしい気持ちでみたす。

いろんなテイストの物語を堪能できますよ!

瞬間の美しさ

It’s not safe or suitable to swim.

本作の「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」というタイトルは、江國さんが実際にアメリカを旅行していた際に見た立て札に書かれていた言葉だそうです。

表題作で主人公が言った<私たちみんなの人生に、立てておいてほしい看板ではないか>

という言葉には、まさにと頷きたくなるほど。

彼女たちだけでなく読者である私たちもまた、安全でも適切でもない人生を、泳いでいかなければならないのです。

瞬間の集積が時間であり、時間の集積が人生であるならば、私はやっぱり瞬間を信じたい。

という江國さん自身があとがきに残したこの言葉が、この作品でいちばんの名言。

ちなみに、山田詠美さんの解説もとても素敵なので、ぜひ最後の一ページまで読んでくださいね。

本の感想

さまざまな女性の人生から、<愛>を切りとった短編集。

 

「安全でも適切でもない」海のなかへと飛び込んだ彼女たちは、どこへ行き着くのか?

 

不倫の恋や、奇妙な夫婦愛、突然の別れ・・・

 

幸福とも不幸とも言えない、いろんな愛のかたち。

 

共感を求めるわけでも、肯定するわけでも、否定するわけでもない。

 

ただありのままを淡々と描いた物語から醸しだされる寂寥感が、とても心地よい。

 

やさしさに満ちた濃密な物語は、彼女たちのように<安全でも適切でもない海>を渡っていく私たちに、ほっと一息つかせてくれるのです。

文庫本はこちら⬇︎

印象に残った言葉(名言)

「人生が川だとするならば、あたしたちは同じ海に向かって流れていく、二つの別々の川だ。くっつきそうにそばを流れる、でも別の川」

 

「あたしは口をあけて受けとった。それがパンとバターと肉汁と果物そのものの味であるために、あたしはほとんど泣きそうになる。おいしいからではなく、野蛮だから」

 

「あたしの心臓は架空のもののために泣いていた。架空のものたちと、現実の智也と、現実のあたしのために」

 

「たとえほんとうにそうでも、浮気くらいで別れてやったりしちゃだめよ」

 

「結局のところ、私たちはみんな喪失の過程を生きているのだ。貪欲に得ては、次々にうしなう」

 

「男の人が犬小屋で寝るからって、そんなに気を揉むことないわ。チューリップみたいになっちゃうわよ。日なんてすぐに翳っちゃうんだから」

 

「大切なのは快適に暮らすことと、習慣を守ることだ」

この本の総評

読みやすさ
(5.0)
文章
(5.0)
雰囲気
(4.0)
読後感
(4.0)
総合評価
(4.0)

 

江國香織さんの他の作品

【No.8】~静かな狂気と、果てない旅の物語~ 『神様のボート』 江國 香織(著) 【No.42】~風変わりでいとおしい、ある家族の物語〜 『流しのしたの骨』 江國 香織(著) 【No.50】~少女と大人のあいだで揺れる女子高生の孤独と幸福を描いた物語〜 『いつか記憶からこぼれおちるとしても』 江國 香織(著) 【No.72】〜風変わりな一族を描いた、愛と秘密にあふれる物語〜 『抱擁、あるいはライスには塩を』江國 香織(著) 【No.58】~奇妙な三角関係を描いた、すれちがう魂の物語〜 『落下する夕方』 江國 香織(著) 【No.100】〜穏やかな不幸に包まれた、日々の余分な時間の美しさを描いた物語〜 『ホリー・ガーデン』 江國 香織(著)

 

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