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こんにちは、ぽっぽです。
今日の一冊はこちら↓
『ブラック・ティー』山本文緒(著)
誰もが持っている人間の「弱さ」に焦点を当てた、10の短編小説集。
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本の概要(あらすじ)
「私が初めて他人の鞄を盗んだのは、最後のアルバイトを辞めた日だった」
私は月に二十万、他人のお金を盗んで生活している。
本当は今頃、結婚をして、子どももいて、子育てをして、普通のおばさんになっているはずだった。
皆がやっていることは、私もできるものだと簡単に思っていた。
歯車が狂ったのは、どこからだったろう。
そう、職場の先輩に失敗を押しつけられ、会社を辞めた。あの時だーー
(表題作:『ブラック・ティー』)
3つの特徴
10の物語
「軽犯罪」をテーマに様々な境遇の人たちを描いた、10の物語。
- ブラック・ティー
- 百年の恋
- 寿
- ママ・ドント・クライ
- 少女趣味
- 誘拐犯
- 夏風邪
- ニワトリ
- 留守番電話
- 水商売
特に印象に残ったのは、表題作の『ブラック・ティー』と『誘拐犯』。
『ブラック・ティー』は、電車内での置き引きで生計を立てている女性の物語。
都会ならではの孤独感が滲み出ていて、切ない気持ちになりました。
主人公のモノクロな世界と赤いバラのコントラストが絶妙な存在感を放っています。
『誘拐犯』は、姉をいじめる女子生徒の猫を誘拐する弟の物語。
おねえちゃんを助けたいという思いが、哀しい悲劇を生んでしまいーー
意図して罪を犯したのではなく、純粋な思いからの行動だったというのが、なんともやるせない。
こちらもとても切ない話でした。
ささやかな罪
この作品に描かれているのは重大な犯罪ではなく、日常に散らばっている「ささやかな罪」です。
もちろんどんなに小さくとも罪は罪ですが、きっかけがあれば誰でも簡単に犯してしまえるという点では、非常に身近な存在だと思います。
だからこそ、心の片隅にある「小さな間違い」に気づかされ、ドキッとした人もいるのではないでしょうか。
万引き、借りパク、カンニング、信号無視、ポイ捨て・・・
私は万引きをしたことはないですが、手を伸ばしかけたことはあります。
カンニングをしたことはないですが、誘惑に負けそうになったことはあります。
あと一歩で地雷を踏んでしまう可能性はこれまでにたくさんあったし、これからもきっと私の人生にはたくさん埋まっていることでしょう。
自分は間違いを犯したことがないと自信を持って言える人がいたら、正直その方が怖いですね。
人間の闇
罪を犯してしまう主人公たちに負の感情を抱かないのは、彼らが罪を犯しながらも、必死に生きているからだと思います。
誰だって平凡で安定した人生を、純粋に生きていきたい。
常識の枠からはみ出ることなく、皆と同じところにいたい。
けれど、そうもいかないのが人間ですよね。
物語の彼らが特殊な存在なのではなく、人間誰しも危うい部分を抱えていると思います。
自分もほんの些細なきっかけさえあれば、彼らと同じように、あるいは彼らよりもっと重たい罪を犯してしまうかもしれない。
・・・不安です。
山本文緒さん自身の言葉がとても印象的なので、ぜひ「あとがき」まで読んでみてくださいね。
罪という名の地雷は、いたる所に埋まっている。今まで踏みつけなかったのは、ただ運が良かっただけだ。幸運がいつまで続くかは誰にも分からない。あるいはわざと地雷を掘り出し、踏みつけることもあるかもしれない。
自分が罪を犯さずにきたのを「ただ運が良かっただけ」と言い切ってしまうところがとても好きです。
本の感想
「罪」をテーマにしながらも、冷静で淡々としていて、重たい気持ちになりすぎずに読める作品です。
殺人や放火などの重犯罪ではなく、日常に潜む軽犯罪を描いているからこそ、妙にリアル。
罪を犯さず生きられる人間はいないのだなと、改めて思い知らされました。
意識的に、あるいは無意識に罪を犯してしまう人間の危うさが上手に描かれていて、「自分は大丈夫だろうか・・・」と思わず不安になる場面も。
強い悪意や覚悟がなくとも人は簡単に罪を犯す生き物で、犯罪は非日常ではなく、日常に溢れているものなのだなと思いました。
罪を犯す彼らを責めるわけでも改心させるわけでもなく、ただありのままの姿を描いているところが山本さんらしくて好きです。
サラッと読めるのに印象深く、暗いのに重たすぎないので、ぜひ読んでみてください。
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印象に残った言葉(名言)
「常識さえ捨てれば、働かなくても暮らしていける方法があるのだと、私は不思議に思っていた」
「大勢の人間の中で、微妙な駆け引きや恋愛をするのが恐かった。期待して期待して、最後まで一本のバラも貰えないかもしれない人生が恐かった」
「私達は純真でもなく、賢くもなく、善良でもないけれど。できることを精一杯するだけ。ただ精一杯するだけ」
「幸せになる人間は、思い切り傲慢に幸せそうな顔をするもんだ。それが礼儀ってもんじゃないか」
「間違わない人間はいないよ」
「代償が大きければ大きいほど、幸福は重く巨大なものなのかもしれない。幸福だった。死んでしまいたいほど幸福だった」
「人って恐い。私は自分のことは棚に上げてそう思った。本当は怒っているのに怒っていない顔で接していた人がたくさんいたのだ」
「優しくされるのは迷惑だった。一度そうされると期待してしまう。気弱になってしまう。それは命取りだった」
「私自身も大事にされ甘やかせれて育ち、自覚のないうちに他人の価値観を刷り込まれてきたのだ。そのことに気づかず生きてしまった自分に対して私は腹をたてたのだ」
「真実など、何の役にたつだろう。生活は、ただここに毎日あるだけなのに」
「生きることに、幸福も不幸もない。それはただ逃げ続けるだけだ。私達を押し潰す、何かとても大きなものから」
この本の総評
山本文緒さんの他の作品
【No.19】~母娘の闇と隠された秘密とは~ 『群青の夜の羽毛布』 山本 文緒(著) 【No.27】~純愛?狂気?他人を愛しすぎてしまう女性の衝撃の過去~ 『恋愛中毒』 山本 文緒(著) 【No.61】〜美しければしあわせになれる?ほんとうの美しさとは?〜 『きっと君は泣く』 山本文緒 (著) 【No.121】31歳、31通りの人生の“最優先事項”を切りとった、珠玉の短編小説集『ファースト・プライオリティー』 山本 文緒(著)
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