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【No.45】~いろんな”さきちゃん”に訪れる、小さな奇跡の物語〜 『さきちゃんたちの夜』 よしもと ばなな(著)

こんにちは、ぽっぽです。

今日の一冊はこちら↓

『さきちゃんたちの夜』 よしもと ばなな(著)

あなたの周りに”さきちゃん”はいますか?

もしいたら、そのさきちゃんの人生について訊いてみたくなるような、そんな物語です。

 

少し不思議で少し優しい、よしもとばななワールド全開の作品です。

 

 

本の概要(あらすじ)

「きっと沙季ちゃんが天使だからだと思う」

 

失踪した友人を探す早紀ちゃん。

 

祖父母の豆スープを配る咲ちゃん。

 

双子の兄を亡くした崎ちゃんと、姪のさきちゃん・・・

 

年齢も境遇も異なる、いろんなさきちゃんたち。

 

彼女たちにおきる、小さな奇跡の物語ーー

 

 

3つの特徴

いろんなさきちゃん

この作品には、5つの物語にそれぞれ違うさきちゃんが登場します。

失踪した友人を探す、妊婦の早希ちゃん「スポンジ」

亡くなった叔母さんが残した鬼たちと出会う紗季ちゃん「鬼っ子」

豆スープを無料で配る祖父母のもとで育った咲ちゃん「癒しの豆スープ」

子どもが大好きなのに自分で産むことができない沙季ちゃん「天使」

双子の兄を亡くした崎ちゃんと、父親を亡くした姪のさきちゃん「さきちゃんたちの夜」

それぞれに違った人生を生きる、6人のさきちゃん。

彼女たちに共通するのは、「さき」という名前だけ。

同じ名前をもつ女性の、いろんな夜を描くという発想がとても新鮮でした。

 

「癒しの豆スープ」

私がいちばん印象に残ったのが、「癒しの豆スープ」の物語です。

両親が離婚し、母と一緒に父方の祖父母の家で暮らす咲ちゃん。

祖父母は週末になると、近所の人たちに無料で豆スープを配っていました。

豆スープを求めに来る人たちを眺めているうちに、咲ちゃんは人間を愛おしくも、そしてこわくも感じます。

祖母の手がまるでぼろぞうきんみたいにがさがさになって、血が出てばんそうこうをしているのに、それには気づかない。鍋を運んでくる祖父が足を引きずっていても、めったに手伝いはしない。それをなんとも思わないでいられる、あるいは目に入らない、あるいは見てみぬ振りをする人間の鈍感さ。あるいはずるさ。

この物語では、そんな人間の中に潜む小さな悪魔についても描かれています。

なんとなくざらっとした気持ちのまま読み進める物語。

しかし、ある日小さな女の子が「おばあちゃんのお仏壇にあげてください」とハンドクリームを持って来てくれたことで、そんな気持ちもすっと消えていきました。

「こういうことは、生きてるあいだにしなくちゃ意味がないんだよ、って思ったんだけど、それでも持ってきたかったの。しょっちゅうスープ飲ませてもらってたから、ママと」

見ている人は見てくれているし、それで行動をおこせる人もいる。そして、そうじゃない人もいる。

自分はどっち側の人間なんだろうと、はっとさせられた場面です。

この物語で一番好きなのは、咲ちゃんが母と祖父母と一緒にちいさな家で生活しているシーンです。

地味でささやかだけれど、とてもあたたかくて「こんな家に帰える子どもになりたかったな」と心から思いました。

 

小さな奇跡

それぞれの物語で、不思議な出来事がおこります。

さきちゃんたちに訪れる、小さな奇跡。

「スポンジ」では、失踪した友人のお風呂場でスポンジを手に取った早紀ちゃんが、ある光景を目にします。

私の閉じた目はなぜか別の景色を見ていた。インドの町が見える。リキシャが見える。建物が見える。アシュラムだ。・・・

「大丈夫、高崎くんはインドにいる。ヨガをやってる。山も見える。空気がとてもきれい。きっと健康になって帰ってくるよ」

「さきちゃんたちの夜」では、双子の兄を事故で亡くした崎ちゃんが、兄の奥さんと電話で話している最中に、不思議な現象を体験します。

私の声の中に、急に兄が降りてきた。私は急にしゃべりだした。口が勝手に動き出した。私はイタコなんかじゃないし、霊能力もない。なのに、なぜだろう。私に兄が重なり、私は自分を一瞬忘れた。兄が強烈に近くにいて、私の目からは懐かしさのあまり自動的に涙がどんどん出てきた。

どれも身近でおこったとしたら、若干ホラーじみていて怖いと思いますが、小説の中でおきる奇跡のような不思議な出来事たちは、不思議と怖くなく、むしろあたたかさすら感じます。

 

 

本の感想

著者の作品はいろいろ読んできましたが、どれを読んでも「よしもとばななさんの本」という感じがして、確立された個性のすごさを感じます。

 

けれどいざ感想を言葉にして伝えようとすると、うまくまとまらないというか、ちょうどいい言葉が思いつかないんですよね。不思議です。

 

著者の独特の文章だったり表現だったり捉え方だったりが、好きな人にはたまらないのだと思います。

 

不思議な物語の中に、しんどさと優しさと少しの希望が詰まった、そんな作品が多いですよね。

 

あとがきに「読む人も希望を持てるようなものを書きたかったです」と書いてあるように、きつい人生の中でも、明るく前をむいていこうと思えるような、そんな作品でした。

 

「ちょっと疲れたな」と感じるひとりの夜に、読んでほしい一冊です。

 

 

 

印象に残った言葉(名言)

「彼はそういう人だった、どんなに心配していても、ふだんの生活ではぺらぺらと口を出さない。ただそこにいようと決めて、いる。そこがいちばん好きになったところ」

 

「だれにも認められない仕事だけど、人として大きな仕事だったんだよ。スティーブ・ジョブズと同じくらい偉大な仕事だよ」

 

「世の中は毛布や愛や笑顔や支えや美しい景色や透明な夜露や甘い色の花びらだけでできているのではない。」

 

「善良な人々に潜む小さな悪魔がこわかった。極小だからこそ、決して消えることはない」

 

【No.1】~デビュー作にして世界中で読み継がれるベスト・セラー~ 『キッチン』 吉本ばなな(著)

この本の総評

読みやすさ
(5.0)
個性
(4.0)
表現
(4.0)
不思議
(4.0)
総合評価
(4.0)

 

 

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