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こんにちは、ぽっぽです。
今日の一冊はこちら↓
『失われる物語』乙一(著)
この本は、7つの短編小説と、1つの書き下ろし小説が収録された一冊です。
全編において儚さと優しさが感じられる、切なくも温かい小説でした。
本の概要
8つある物語のうち、私が特に好きな4つの物語の概要をまとめていきます。
「Calling you」
主人公のリョウは、内気な女子高生。人とうまく話すことができず、友達もいない。クラスメイト達が持っている携帯電話に強い憧れを抱き、暇な時間はいつも、空想上の携帯電話で遊んでいた。
ある日、空想であるはずの携帯電話のメロディが、頭の中で鳴り響く。
恐る恐る出てみると、男の子の声がした。彼の名前はシンヤ。リョウと同じく、空想上の携帯電話を使えるという。同じさみしさを抱えながら生きる2人は、すぐに仲良くなった。
2人は実際に会う約束をし、その日を迎えるが・・・。
「失われる物語」
突然の事故で全身不随となり、五感すべてを失った≪自分≫。唯一残されたのは、右腕の感覚だけだった。
妻は毎日病室を訪れ、自分の右腕を鍵盤に見立ててピアノを演奏する。
いつしか、指から伝わる感覚だけで、彼女の内面を感じ取ることができるようになった。
だからこそ、覚った。彼女の苦悩を。自分が鎖となって家族を縛り続けていることを。
意思表示すらすることのできない自分は、どうしたらいいのか。彼の出した答えとは・・・。
「傷」
孤独な少年≪オレ≫は、新しく特殊学級にやって来た同い年の≪アサト≫と出会う。
乱暴に見えるが優しい心を持つ少年と、人の傷を自分の体に移すことができる不思議な力を持つアサト。
世界の残酷さに傷つけられてきたオレだったが、アサトの純粋で無垢な優しさに触れ、仲を深める。
痛々しいほど純粋なアサトもまた、心に深い傷を抱えていたのだった。
残酷な世界で傷つけられてきた2人。「傷の深さも、痛みも、半分ずつ。」そうして暗闇を生きる彼らに救いは訪れるのか・・・。
「しあわせは子猫のかたち」
人づきあいが苦手で不器用な青年≪ぼく≫が、一人になるために引っ越した家には、優しい幽霊と白い子猫が住んでいた--
一人になりたくて越してきたのに、どうやらこの家には前の住人の幽霊と飼っていた子猫が住んでいるらしい。閉めたはずのカーテンが開いていたり、草花が花瓶にいけられていたり。
時々ちょっとしたいたずらを仕掛けて、ぼくをおちょくったりもする。
見えなくても確かにそばにいる彼女の存在は、冷めていたぼくの心を徐々に暖めていった。
そんな日々の中、ぼくは彼女が殺された意味と犯人を知ることとなる・・・・。
本の感想
今回小説を読んでみて、改めて乙一さんはすごい作家さんだなと思いました。
切なくて優しい心温まるような作品、とことん残酷に闇を描く作品、くすっと笑えるコミカルな作品・・・物語によって作風がガラッと変わるのに、共通して乙一さん独特の雰囲気が感じられます。
全ての物語おいて、ありきたりな結末で終わらないところも、印象に残り続ける理由の一つかなと思いました。
この本に収録されている「きみにしか聞こえない(calling you)」と「KIDS(傷)」は映画化されています。
短編の原作を2時間弱の映画にしてあるのに、原作の世界観はきちんと残しつつ、さらに膨らませて一本の映画に仕上がっているのですごいなと思いました。
私は原作を読んだ後に映画を観るのも、その逆も好まないのですが、この映画に関しては観て良かったなと思える作品でした。
心に残った言葉
「彼女が腕の上に広げていく刺激のリズムは、独房に唯一ある窓のようなものだった。」(失われる物語)
「傷の深さも、痛みも、半分ずつ。二で割って、はんぶんこだね。」(傷)
「おまえがいつも優しくて、他人のことばかり考えているということが、はるかに多くの人間を暗闇のような場所から救い上げるんだ。」(傷)
「明るい世界を見せられると、逆に、あまりに薄暗い自分の姿を浮き彫りにされたようで、胸がつぶれそうになるんだ。そんな時、いっそのこと、目をえぐりだしたくなる。」(しあわせは子猫のかたち)
「わたしは殺されたけど、この世界が好きだよ。どうしようもないくらい、愛している。だからきみに、この世界を嫌いになってほしくない。」(しあわせは子猫のかたち)
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この本の総評
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