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こんにちは、ぽっぽです。
今日の一冊はこちら↓
『GOTH 番外編〜森野は記念写真を撮りに行くの巻』 乙一(著)
GOTH番外編の物語です。
本の概要(あらすじ)
「写真、撮っていただけませんか」
人間の残酷で暗い部分に惹きつけられる<僕>と同級生の<森野>。
森野が七年前におきた死体遺棄現場へ写真を撮りに行くという物語。
たまたま居合わせたカメラマンの男に、写真をお願いする森野でしたが・・・。
GOTH番外編。
3つの特徴
記念写真を撮りに行く森野
七年前におきた女子高生の死体遺棄事件。
死因は高濃度の塩化カリウムを注射されたことによる心停止。
犯人は少女を殺害した後、山で遺体を撮影していたことで当時話題になった事件です。
森野はその事件に興味を持ち、少女の遺体が放置されていた現場へ、記念写真を撮りに行きます。
そこで出会った、ひとりの男。
森野はその男に、亡くなった少女のふりをして記念写真を撮ってもらいます。
その男こそが、七年前に女子高生を殺害した犯人だとは知らずに・・・。
犯人の闇
犯人はこれまでに三人の女性を殺害し、遺体を撮影をしてきました。
犯人の目的は殺すことではなく、感情をもたない人間を撮影すること。
人を殺すことに快感を覚える、という人たちがいる。まったく同意できない。私はそのような異常者たちとはちがう。できることなら殺人などしたくはないのだ。おぞましい、とさえおもう。しかし私には、レンズをむけられても作為的な表情をしない被写体が必要だ。
理想の写真を撮るためには、レンズをむけても演技をしない、自意識の宿らない被写体を作ってしまえばいいのだと思いついた男。
それで三人もの女性の命を奪い、理想の写真を撮り続けてきたのです。
犯人の次のターゲットは森野。
死体の演技も上手だったし、彼女となら恋愛ができるかもしれない。いや、馬鹿げた話だ。恋愛などという行為にふけるよりも、写真のなかでのこり続けていくべきなのだ。恋人にするくらいなら、死体にする。
不運な森野は、またしても犯人の標的になってしまったのです。
僕と犯人
記念写真を撮りに行ったのは森野ひとりでしたが、実は「僕」も一緒に行く予定でした。
森野の引きの悪さを知ってる僕は(本編でも森野はよく犯人たちに狙われていました)森野にあらかじめ忠告していたことがありました。
その忠告通りに「僕」に連絡をしていた森野。
森野から連絡を受けた「僕」は電話で犯人とある交渉をします。
今回ばかりは純粋に森野を助けたのか・・・?と思いきや、そんなことはありません。
すべては彼のシナリオ通りだったのです。
「もしも私が犯人だと仮定して、あの少女を殺し、写真を撮っていたら、きみはどうしてた?」
「あなたをさがします」
「復讐をしたか?」
「いえ、作品を見せてもらうようにお願いしたでしょう」
清々しいほど冷酷な「僕」は、この物語の中でも健在です。
本の感想
下巻を読み終え、そのまま番外編へ突入しました。
最初は人形っぽい印象のあった森野ですが、この物語で一段と人間味が増したように感じました。
不器用なところやポンコツ具合が可愛いです。(いつか本当に事件に巻き込まれそうで心配)
今回は森野がメインの物語・・・と思いきや、やっぱり裏では「僕」が動いていました。
今回は犯人がナレーターとなって語られているので、犯人の抱える苦しさや葛藤などを見てとることができます。
異常な思考をもつ犯人をみていても、私には「僕」の方がよっぽど冷酷な人間に思えました。
犯人や森野の方が、よほど人間らしい感覚を持ち合わせている気がします。
それでもやっぱり私は「僕」の暗い魅力に惹かれて、またGOTHシリーズを読むのだと思います。
印象に残った言葉(名言)
「写真を撮る側と撮られる側は、銃口をむける側とむけられる側の関係にちかい」
「現像された少女たちの死に顔は、その向こう側にある深遠な宇宙を想起させた」
「きみは、なぜ犯人を目撃したかった?
ー動物園にライオンを見に行くのとおなじ心理です」
「友だち。その言葉を聞いた瞬間、私はぞっとして、鳥肌がたった。少年の声には何の感情もこもっていなかったからだ」
GOTHシリーズ
GOTHシリーズ一作目⬇︎
【No.46】~人間の心の残酷な部分に惹かれる、少年少女の物語〜 『GOTH 夜の章』 乙一(著)GOTHシリーズ二作目⬇︎
【No.47】~深い闇にとりつかれた犯人と少年の物語〜 『GOTH 僕の章』 乙一(著)乙一さんの他の作品
【No.4】~切なさと優しさが詰まった一冊~ 『失われる物語』 乙一(著) 【No.26】~読めばきっとあたたかい気持ちになる ”怖くて優しいミステリー ”~ 『暗いところで待ち合わせ』 乙一(著)この本の総評
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