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こんにちは、ぽっぽです。
今日の一冊はこちら↓
『その可能性はすでに考えた』井上真偽(著)
テレビドラマ化された『探偵が早すぎる』の原作者・井上真偽(まぎ)さんの作品。
斬新な設定に驚きましたが、中身は正統派ロジックものでした。
一風変わったミステリー小説が読みたい方におすすめです!
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本の概要(あらすじ)
「『奇蹟』は世界で最も美しい真実です」
十五年前、とあるカルト宗教団体施設で集団自殺が行われた。
唯一生き残ったのは、当時まだ幼かった少女ただひとり。
彼女は事件の謎を解くため、青髪の探偵・上苙丞のもとを訪れた。
しかしそこで語られたのは、なんとも摩訶不思議な首なし死体の記憶でーー?
異色の探偵が、すべてのトリックが“不成立であること”を証明する!
3つの特徴
異色な探偵
本書の主人公は碧眼白皙の美青年・上苙丞(うえおろじょう)。
青い髪にオッドアイ、白い手袋に赤い上衣というなんとも派手な見た目の青年です。
彼の職業は「探偵」なのですが、その実態はかなり異色。
そもそも推理小説における探偵というのは、一見不可能に思える犯罪が可能だということを証明したり、トリックを暴いて犯人を指摘したりするのが一般的ですよね。
しかしこの探偵は違います。
彼は一見不可能だと思えることを、本当に不可能だと証明することに心血を注いでいるのです。
これだけで本来の探偵の役割からだいぶ逸脱していることがお分かりいただけると思います。
トリックを暴いて犯人を特定するのではなく、トリックをことごとく否定して犯人がいないことを証明しようとしているのですから。
彼が成し遂げようとしていること、それは「奇蹟の証明」です。
つまり彼は“奇蹟”であることを証明するために、人知の及ぶあらゆる可能性を全て否定しようとしているのです。
彼の探偵活動の軸になっているのがこの「奇蹟の存在証明」というわけですね。
探偵小説としては斬新ですが、それゆえに一体どんな物語が紡がれるのか興味をそそられる設定だと思います。
推理勝負
本書は青髪の探偵のもとに舞い込んだ一件の依頼を軸に展開していきます。
ちなみに物語の語り手は中国人女性・フーリン。
探偵に多額の金を融資している金貸し屋です。
依頼を持ち込んできたのは、カルト宗教集団自殺事件の唯一の生存者。
彼女が語ったのは、とても信じがたい摩訶不思議な出来事の記憶でした。
謎を解明してほしい依頼人と、奇蹟を証明したい探偵。ついでに金を回収したい債権者。
この三人を中心とし、章ごとに新しいキャラクターを迎えて「推理勝負」が展開していきます。
対戦相手は探偵と因縁がある老人・大門、フーリンの昔の仕事仲間・リーシー、探偵の弟子・八ツ星少年。
それぞれにバラエティ豊かなトリックを披露し、上苙に挑戦状を叩きつけます。
悪魔の証明
本書の最大の特徴である「奇蹟の証明」。
これはいわゆる「悪魔の証明」というやつですね。
探偵は「やった」ことを証明するのではなく、「やっていない」ことを証明しなければならないのです。
たとえ1/1000の成功率だとしても、たった一回が起こる可能性さえ見つけられればいい挑戦者側。
対して探偵側は、確かな事実や証言を示してその可能性が“決して生じないこと”を証明しなければなりません。
どちらが有利かは一目瞭然ですよね。
この致命的とも言えるハンディキャップを背負いながら、探偵はどう相手を論破していくのか?
奇想天外なトリックばかりで読み応え抜群です!
本の感想
著者の作品は初めて読みましたが、正直読みやすいとは言えなかったです。
この独特な文体は好みが分かれそうだなと思いました。
個人的には言い回しがくどくてスッと頭に入ってこない部分も多く。
中国語がちょこちょこ入ってくるのもすんなり読めなかった理由かなと。
拷問知識や聖人伝説も多用されていますが、あまり本題には関係なかったのでそれらがなければもっとスッキリするのになと思ってしまいました。
ただ、繰り広げられる推理合戦の中身については興味深くて読み応え抜群です。
毎回同じパターンなので、多少食傷気味にはなりますが。
理詰めの連続なので、正統派ロジックものが好きな方にはもってこいだと思います。
最終的にスッキリするかと言われれば微妙なところですが、続編があるのでそちらに期待ですかね。
決して万人受けするとは言えませんが、一風変わった設定のミステリーに興味がある方はぜひ!
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印象に残った言葉(名言)
「常識は絶対不変の真理ではありません。常識は常識です。もっとあなた自身の経験を重視してください。あなたが見聞きしたものをそのまま受け入れてください。それこそが最も確かな事実です。あらゆる先入観は捨ててください」
「人は、己の間違いを認めることこそが最も難しい」
「この男は、人間に奇蹟が不可能なことを証明したいのではない。人間に奇蹟が可能なことを、証明したいのだ。その苦しみは必ず報われると。その祈りは必ずどこかに通じると。そこに救いは存在すると。神はまだ、人間を見限ってはいないとーー」
この本の総評
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