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こんにちは、ぽっぽです。
今日の一冊はこちら↓
『法廷遊戯』五十嵐律人(著)
第62回メフィスト賞を受賞したリーガル・ミステリー。
ゲーム要素も織り交ぜたエンタメ小説としても読み応えがある一冊でした。
専門知識は登場するものの、法廷物のとっつきにくさはないので気軽に読んでみてください!
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本の概要(あらすじ)
「犯した罪には、罰をもって応えるしかないんだ」
法律家を目指す三人の学生、久我清義・織本美鈴・結城馨。
あるとき彼らが通うロースクール内で突如暴かれた、清義の暗い過去。
清義は名誉を毀損されたとして、審判者である馨に“無辜ゲーム”の開廷を申請した。
ゲームは無事終えることができたが、この事件をきっかけに次々と起こる不可解な出来事。
そしてついには三人を巻き込む殺人事件にまで発展してしまいーー。
3つの特徴
無辜ゲーム
本書は二部構成の物語で、第一部の舞台となるのは自他共に認める底辺ロースクール。
しかしそんな底辺校にも優秀な学生はいて、それが本書の語り手である久我清義(きよよし)、同級生の織本美鈴、そして結城馨です。
この三人の中でも馨は”別格”で、すでに司法試験に合格済みなのになぜかロースクールに通っている謎の多い学生。
第一部の“無辜ゲーム”で「審判者」を務めるのもこの馨です。
ちなみに“無辜ゲーム”というのは、ロースクールで不定期に行われている模擬裁判のこと。
内容を簡単に説明するとこんな感じです↓
- 何らかの被害を受けた<告訴者>が証拠を集めて犯人を特定する。
- 告訴者が指定した犯人と審判者の心証が“一致”すれば“犯人”が罰を受ける。
- 告訴者が指定した犯人と審判者の心証が“不一致”ならば“告訴者”が罰を受ける。
第一部では、久我清義が自身の名誉を毀損されたとして無辜ゲームの開廷を申請するところから始まります。
これに関しては案外あっさりと結末を迎えますが、その後織本美鈴を標的としたストーカー事件が起こり。
何が何だかよくわからないまま、物語はだんだんと不穏な方向へと進んでいきます。
そして続く第二部で描かれるのは、新米弁護士となった久我清義が挑むある殺人事件の裁判。
擬似法廷から本物の法廷へと舞台を移し、それぞれの過去と絡めて三人の物語が動き出します。
(ネタバレになるのでこの辺で)
罪と罰、制裁と救済。これらが法と感情の間で揺れ動き、人が人を裁く制度とは何かを読者に問いかける物語。
専門的な部分はあるものの、ゲーム感覚で展開していく法廷ミステリーという感じなので、抵抗なく入っていけるかなと思います。
魅力的な脇役
主要メンバーはロースクールの学生たちですが、個人的には脇役がいい味を出しているなと感じました。
特に何でも屋の佐沼、墓荒らしの権田、女子高生の佐倉は、それぞれを主人公にした物語も描いて欲しいくらいです。
この三人はいわゆる“社会の枠からはみ出してしまった者たち”ですが、とても魅力的に描かれているんですよね。
“墓荒らしの権田の事件”は最初おまけみたいなものなのかと思っていましたが、その意外な真相には驚かされました。
メインの結末よりも、むしろこっちの事件の方が個人的には爽快感があってよかったです。
主要メンバーの中で一番気になるのは馨ですね。
本書は清義の視点で描かれているのですが、馨が主人公の物語も読んでみたいなと思いました。
意外な結末
本書は不可解な殺人事件の謎に迫った、二転三転するミステリー。
彼らの間に何があり、どうして一人は死ななければならなかったのか、そして犯人は誰なのか。
これらを過去の出来事と絡めて解明していきます。
「模擬法廷ミステリー」から「本格ミステリー」へと変化していく構成は初めてだったので新鮮でした。
第一部で一見無駄に思えた断片的なエピソードが、第二部できれいに回収されていくのは圧巻ですね。
ただ、正直ミステリーの部分に関しては早い段階でほとんど予想がついてしまいました。
どちらかといえばミステリー初心者の方向けかも?
ただし本書は謎解きだけでなく、法や制度の問題点、人間ドラマも盛り込まれているので楽しめる要素は多いかと。
エンターテインメントとしても読み応えがあるので、気になる方は手にとってみてください!
本の感想
リーガル・ミステリーと聞いてまず思い浮かんだのは、中山七里さんの“御子柴シリーズ”。
私はこのシリーズを先に読んでしまっているので、同ジャンルで主人公の背景も似ているこちらとどうしても比較してしまう部分はありました。
そのため、心理描写や感情移入に関してはやっぱり物足りなさを感じてしまい。
本書は世の中のグレーな部分について考えさせられる部分はあるものの、感情移入できるかという点については微妙なところでした。
ただし本書の魅力は登場人物たちの心理描写ではなく、設定やエンタメ性の部分なのではないかと個人的には思います。
まず、デビュー作でこれだけの発想とクオリティに仕上がっているというのがすごいですよね。
(発刊当時、著者はまだ司法修習生だったそうです)
専門知識や業界のあれこれはリアリティがありますし、でも退屈にならないほどよい匙加減に抑えられていて。
法曹界とは縁遠い読者を、違和感なく引き込むためのテクニックにも工夫を凝らしているなと感じました。
特に第一部の“無辜ゲーム”は後々の伏線にもなりますが、法廷という特殊な場に読者を慣れさせる役割も担っていて。
そこからリアルな法廷劇への切り替えも鮮やかで、読者をどんどん引き込んでいきます。
本書は“リーガル・ミステリー”というジャンルに抵抗がある方の“入り口的な存在”になってくれるかもしれませんね。
法廷物は難しくて読みづらそうと躊躇していた方は、ぜひ読んでみてください。
(ちなみに本書は映画化が決定しているそうです!)
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印象に残った言葉(名言)
「生きるために罪を犯すなとは言わない。でも、自分が逃げるために無辜の人間に罪を被せるのは、最後の一線を超えてる」
「積極的な理由で決定される選択肢なんて、ほとんど存在しないと俺は思ってる」
「人間が人間を裁くには、確信に近い心証を形成しなくちゃいけない」
「時効が成立しても、無罪判決が確定しても、罪が精算されるわけじゃない」
この本の総評
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