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こんにちは、ぽっぽです。
今日の一冊はこちら↓
『暗黒童話 』乙一(著)
本の概要(あらすじ)
「いくら探しても見当たらないの。どこかその辺りに、私の左眼が落ちているはずなんですけど・・・」
不運な事故で左眼を失ってしまった私。
目が覚めると、事故のショックで記憶も失くしてしまっていた。
臓器移植で左眼の手術を行ったが、やがてその左眼は様々な映像を映し出す。
それは、元の眼球の持ち主が見てきた「記憶の風景」だった・・・。
左眼の記憶を辿って、私はある町を訪れる。
そこにとんでもない悪夢のような事件が待ち受けているとも知らずにーー。
3つの特徴
物語の構成
本書は3つのパートに分けて構成されています。
<アイのメモリー>
両眼を失った少女のために、カラスが眼球を集めてプレゼントするという暗黒童話。
物語の冒頭と中盤に置かれています。
<白木菜深の物語>
メインパートでもある主人公視点で語られる物語。
臓器提供で眼球を移植した少女が、提供者(冬月和弥)の記憶を辿ってある事件の真相を追いかけます。
<ある童話作家の物語>
『アイのメモリー』の著者である三木俊の物語。
冬月和弥を殺害した犯人でもあり、ある特殊な力を持っています。
オーバーラップする童話と現実の物語。犯人の超人的な能力。「恐怖」というよりも「不気味」な雰囲気漂うホラー小説です。
少女の孤独
突然の事故で左眼と記憶を失くしてしまった少女。
事故以前は、明るくて勉強もできて運動神経も抜群。学校でも人気者でした。
しかし、記憶を失くしてしまった彼女は以前とは別人のようになってしまいます。
家でも学校でも以前の自分と比較され、苦しむ彼女。
みんなの中で優等生だったかつての「菜深」と劣等生の今の「私」は完全に分離していて、冷たい眼を向けられる日々。
そんな彼女は左眼を移植してからというもの、提供者の記憶の幻影を見るようになります。
記憶のない自分にとって、思い出の代わりとなり彼女を勇気づける様々な記憶のかけら。
しかしある時左眼が見せた記憶で、眼球の提供者・冬月和弥がある事件に巻き込まれて殺害されたことを知りーー。
私は、彼の死んだ場所へ行かなくてはならない。そう感じた。
ホラー❌ミステリー
本書はホラー小説ですが、ミステリー小説としても楽しめます。
登場人物が少ないので、犯人については途中で予想がついてしまうかもしれません。
が、読者を上手くミスリードして錯乱させているので、クライマックスに向かってハラハラ感を楽しめます。
特に後半からはスピード感もあがって、ラストに向かってページをめくる手が止まらなくなるかと。
そして犯人の描き方にも特徴が。
ただただ残虐非道な殺人鬼とするのではなく、ある特殊な力を持たせ、人間をも超えた存在として描かれています。
犯人の手により傷つけられた被害者たちとの関係もまた不思議で、そこにはどこか温かさすら感じられて。
ここに来た人間は、みんな手術を受ける。幸福な手術だ。そして閉じ込められる。不思議とそれは苦痛ではない。まるで時間が静止したように、すべてから解き放たれた気分になる」
被害者たちの奇行もまた不気味で、グロテクスな描写と相まって、読者をゾッとさせます。
本の感想
本書は乙一さんが初めて書いた長編小説。
ホラー小説は苦手ですが、乙一さんのホラーはきっと怖いだけではないだろうと思い読んでみました。
予想通り、不気味さや残酷さの中にも「切なさ」「温かさ」が共存する乙一さんらしいホラー小説でした。
人の闇や孤独を描きつつもどこか「優しさ」が感じられるので、読後も嫌な残り方をしません。
グロテスクな描写はあるものの、そこに「痛み」は存在しないため、個人的に見ていられないほどではなかったです。
ただ人によっては不快に感じられるかもしれないので苦手な人はご注意を。
『GOTH』が好きな方はこの作品もぜひ読んでみてください。
印象に残った言葉(名言)
「少女にもう一度、光と色を感じさせることができるのなら、世界が血でそまってもかまわない」
「なぜ、自分は彼女を崖の上から突き落としたのか。おそらく、昆虫にピンを刺すのと同じなのだ。それができるから、そうした。そして、見たかったのだ。どうなるのかを」
「あの二人のこと、秘密にしておいて」
乙一さんの作品
【No.46】~人間の心の残酷な部分に惹かれる、少年少女の物語〜 『GOTH 夜の章』 乙一(著) 【No.47】~深い闇にとりつかれた犯人と少年の物語〜 『GOTH 僕の章』 乙一(著) 【No.48】~ある場所へ記念写真を撮りに行く少女の物語〜 『GOTH 番外編〜森野は記念写真を撮りに行くの巻』 乙一(著) 【No.4】~切なさと優しさが詰まった一冊~ 『失われる物語』 乙一(著) 【No.26】~読めばきっとあたたかい気持ちになる ”怖くて優しいミステリー ”~ 『暗いところで待ち合わせ』 乙一(著) 【No.77】〜くすっと笑える乙一さんのコミカルなエッセイ集〜 『かいじゅうタイムズ 』乙一(著)この本の総評
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