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こんにちは、ぽっぽです。
221冊目はこちら↓
『儚い羊たちの祝宴』米澤穂信(著)
「小市民シリーズ」の次はちょっと不穏な感じがするこちらの一冊を。
慇懃な口調で語られるダークな物語を存分に堪能できました。
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本の概要(あらすじ)
「いつか訪れる儚い者へ」
わたし村里夕日は、幼き頃からとある名家のお嬢様にお仕えしております。
大学生になられたお嬢様は「バベルの会」という読書サークルにお入りになったそうで、夏合宿をとても楽しみにされていました。
しかし、合宿の二日前。屋敷でとある事件が起こったのです。
翌年も翌々年も、同じ日に起こる惨劇。
なぜ毎年お嬢様の合宿を邪魔するかのように事件が起きるのでしょうか。
もしかして犯人は……。(「身内に不幸がありまして」)
こんな人におすすめ
本書をおすすめしたいのはこんな人↓
- 浮世離れしたミステリーを読みたい人
- 残酷で毒々しい内容が好きな人
- 最後の一行の衝撃を堪能したい人
本の感想
浮世離れしたミステリー
米澤穂信さんといえば「古典部シリーズ」や「小市民シリーズ」を想起する人も多いのではないでしょうか。
実を言うと私もまだ小市民シリーズしか読んでおらず、そのため「日常の謎」をテーマにした青春ミステリー路線の作家さんなのかと思っていました。
しかし今回読んだのはなんともダークで浮世離れした内容のミステリー小説。
日常の謎とは打って変わって、純粋な悪意に満ちた残虐な事件ばかりでした。
軽めの青春ミステリーも好きですが、個人的にはこの重苦しくて不気味な世界観は大好物。
<お嬢様と使用人>という古風な設定も、この独特な雰囲気を醸し出すのに一役買っています。
夢想家が集う「バベルの会」
本書は独立した物語を収録した短編小説ですが、良家の“お嬢様”や“使用人”による独白形式で描かれているという点で共通しています。
夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル内で次々と起こる殺人事件。犯人はいったい誰なのか?その目的は……?
という内容のミステリーだと予想していましたが、全く違いました。
読んでいただくとわかると思いますが「バベルの会」はメインではなく、あくまで各話をゆるく繋げている存在。
物語が進むにつれて、しだいにこの「バベルの会」の実態も明らかになってゆきます。
五つの物語
それでは早速各話の内容に触れていこうと思います。
基本的にネタバレはしないのでご安心を。
「身内に不幸がありまして」
上記に記載したあらすじは、この巻頭の物語です。
「バベルの会」夏合宿の二日前、地方の名家・丹山家の屋敷で起きたとある惨劇。
それはまるで呪いのように翌年も翌々年も同じ日に起こり続け……。
というミステリーですが、着目すべきは“わかる人にしかわからない伏線”と“犯行の動機”。
作中に登場する様々な小説の共通点に、あなたは気づけるだろうかーー。
「北の館の罪人」
母の死後、行き場をなくし、厄介者になる覚悟で名家・六綱家を訪れた妾の子・内名あまり。
現当主である光次郎はあまりを受け入れたが、代わりに「北の館」で軟禁している長男・早太郎の監視を命じた。
「北の館」での暮らしは意外と平穏に過ぎていくが、早太郎はあまりに奇妙な買い物を頼むようになり……。
という内容ですが、この物語の面白いところは買い物の謎よりも反転する景色。
意味がわかった瞬間に、これまで見ていた景色がガラッと変わる感覚を味わえるはずです。
「山荘秘聞」
山奥の別荘地「飛鶏館」の素晴らしさに感銘を受け、以後管理人として館の手入れを続けてきた屋島守子。
待ちに待った初めての“お客様”は、雪山で滑落していた青年だった。
待望のお客様を前にして、心躍らせる守子。絶対に逃したくない。
しかし喜びも束の間。青年の仲間である捜索隊が館を訪れ……。
というなんとも不穏な物語ですが、見どころは読者の予想を軽やかに裏切る顛末です。
たぶんあなたも予想を裏切られたのではないでしょうか。
「玉野五十鈴の誉れ」
名家・小栗家のただ一人の跡取りである純香は、ある日祖母から召使いである玉野五十鈴を与えられた。
純香は五十鈴に主従以上の感情を抱くようになるが、伯父が起こした事件を機に五十鈴とは引き離され、屋敷の片隅に幽閉されてしまう。
その後、後継である男の子が誕生したことから、小栗家にとってまったくの無用の者となってしまった純香。
そんな純香のもとを訪れた五十鈴は、毒酒を純香に差し出しーー。
ミステリーファンはピンと来るかもしれませんが、この物語のタイトルは『イズレイル・ガヴの誉れ』をもじったもの。
本書の中でもとりわけインパクトが強いラストで、読者によって解釈が分かれるところだと思います。
私の勝手な考察ではありますが、五十鈴の真意を三パターンに分けてみたので気になる方は下記をクリックしてみてください。
※未読の方は要注意!読みたい方だけクリックしてください!
- 純香の教えを忠実に守っただけ
▶︎召使いとして愚直に言いつけを守っただけというある意味“ホラー”な解釈 - 純香を助けたかった
▶︎五十鈴も純香に対して主従を超えた感情を持っていたという“感動的”な解釈 - 純香と読者の思い込み
▶︎ただの偶然の事故に猟奇を見出した“夢想家”の解釈
「儚い羊たちの晩餐」
荒れ果てたサンルームに迷い込んだ女学生が目にしたものは、古びた一冊の日記だった。
おもむろにページをめくってみると、そこには「バベルの会はこうして消滅した」という走り書きが。
そう、これは「バベルの会」を除名された大寺鞠絵による、世にも恐ろしい惨劇の記録であったーー。
キーワードは「アミルスタン羊」。読み進めるうちに意味を察することができますが、ミステリーファンはこれだけでピンと来るでしょう。
そしてこの物語でやっと読者は「バベルの会」の本質を知ることができるのです。
共感できない主人公
本書の主人公たちに共感した、という読者はほとんどいないのではないでしょうか。
それほどまでに、浮世離れした世界で生きる彼女たちの言動や思考は、我々には理解し難いです。
目的のためには一切の躊躇もない主人公たちは冷酷なようにも思えますが、はたして本当にそうなのでしょうか。
各話で起きる事件にはたしかに悪意が存在しますが、その背後には主人公たちの切実な想いも込められているように感じました。
いや、むしろ異常なまでの切実な想いが、あのような事件を引き起こさせたのかもしれません。
もしそうなのだとしたら、彼女たちが身を置く世界のなんとシビアで不自由なことか。
ここに記されている残虐な行為の数々は、厳しい世界を生き抜くために彼女たちが身に付けた“したたかさ”なのかもしれませんね。
最後の一行
本書は「最後の一行」にこだわり抜いた作品ですが、中でも衝撃が群を抜いていたのは「玉野五十鈴の誉れ」。
解釈は様々ですが、真っ先に頭をよぎった真相に背筋がゾワっとさせられました。
果たして純香は再び五十鈴と再会することができるのでしょうか。
それ以外の物語に関しては、暗い笑いを誘うような静かな狂気を感じました。
全体的にどんでん返し的な衝撃があるというわけではないため、そこは変に期待しない方が純粋に物語を楽しめる気がします。
このホラーとも思えるような冷ややかな恐怖をぜひ味わってみてください。
まとめ
本書は伏線として提示されているものがかなりマニアックなため、読者にもある程度の知識が求められる作品です。
かと言って伏線に気づかなくとも読み進めれば真相に辿り着けるので、知っていればより楽しめるという認識で問題ないかと。
全編を通して残酷で身勝手な物語ではありましたが、共感こそできないものの、不思議と後味の悪さや不快さを感じることはありませんでした。
本書を機に、これからは米澤穂信さんのダーク路線の作品にも手を出していく所存です。
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印象に残った言葉
「あなたがわたしに対して抱いていたのが、愛ではなくて忠誠だったなら、わたしたちは生涯一緒にいられたかもしれないのに」
「わたしは、そういう甘ったれが、殺したいほどに嫌いなのです」
「言いつけを愚直に守り、ひたすらに役目を果たすことが、わたしの誉れ。いえ、そうしなければ、生きてはいかれないのです」
「わたし、わたしは。あなたはわたしの、ジーヴスだと思っていたのに」
「勘違いをなさっては困ります。わたくしはあくまで、小栗家のイズレイル・ガヴです」
「バベルの会とは、幻想と現実とを混乱してしまう儚い者たちの聖域なのです。現実のあまりの単純さに、あるいは複雑さに耐えきれない者が、バベルの会には集まってきます。わたしたちは、いわば同じ宿痾を抱えた者なのです」
「ただの偶然を探偵小説のように味わい、何でもない事故にも猟奇を見出すのです」
「しかしあなたは腹の底から実際家でしょう」
「夢想家がひととき夢に浸る場所に実際家が闖入すれば、引け目を感じるのは常に夢想家の方なのです」
この本の総評
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