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こんにちは、ぽっぽです。
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『父と私の桜尾通り商店街』今村夏子(著)
今村夏子さんの四作目の作品。
可愛らしい表紙を裏切るかのような、相変わらず不気味で痛々しい物語たちでした。
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本の概要(あらすじ)
「お父さんは死ぬまでここで働くの」
桜尾通り商店街で、小さなパン屋を営んでいる父と娘の私。
めっきりお客が寄り付かなくなってしまったこのパン屋を、父はとうとう閉店することにした。
しかし、私がある人のために作ったコッペパンサンドが予想外の評判を呼びーー。
(表題作:「父と私の桜尾通り商店街」)
こんな人におすすめ
本書をおすすめしたいのはこんな人↓
- 今村夏子さんの世界観が好きな人
- ザワザワとした違和感を堪能したい人
- 不器用な人たちの物語を読みたい人
本の感想
「こちらあみ子」「あひる」「星の子」に続く四作目となる作品。
文庫化にあたり新たに加わった「冬の夜」を含め、全7編が収録されている短編小説集です。
それぞれに独立した物語ですが、全編に共通している不器用な登場人物や不穏な空気は相変わらずで。
その中でも私の印象に残っている三編について触れていこうと思います。
「ひょうたんの精」
あらすじ
なるみ先輩は誰よりも高くジャンプした。
チアリーディング部のマネージャーである「わたし」は後輩マネージャーにそう説明するが、全く信じてもらえない。
確かに今の先輩には見る影も無いが、全盛期はすごいチアリーダーだったのだ。
お腹に宿した“七福神”を失うまではーー。
感想
もともとすごく太っていた先輩が、ひょうたんのキーホルダーを覗いたことでお腹に七福神を宿し、それ依頼どんどん痩せてきれいになっていく。
という本書の中でも一番ユニークで突拍子もない内容。
摩訶不思議な物語ではありますが、一瞬で希望が消え失せる残酷さや、青春の儚さも同時に感じられる物語です。
神様を信仰する人という意味では「星の子」と共通していますが、こちらは怖いというよりもユーモラスな雰囲気でした。
「せとのママの誕生日」
あらすじ
かつて同じスナックで働いていた、アリサ、カズエ、「わたし」の三人。
全員とっくにクビになっていたけれど、ママの誕生日を祝うために「スナックせと」を訪れた。
思い出話に花を咲かせながら、わたしたちはママの目覚めを待ち続けるーー。
感想
読み進めるたびにこちらの想像が覆されていく物語。
スナックの女の子たちが登場するのは「ピクニック」(「こちらあみ子」に収録されている短編)以来ですね。
笑いながら語られるママとの思い出は、微笑ましいと思いきや、こちらがギョッとするほど暴力的で。
ママが女の子たちのコンプレックスを見世物として稼いでいたことや、そのせいでみんな何かを(おへそ、乳首、唇など)失っていることが明らかになっていきます。
そしてその商売道具を失ったことで店をクビになっていたことも。
ママの誕生日を祝うために集まった彼女たちですが、本当に待ち望んでいるのはママの「目覚め」ではなく「死」なのではないか。
そんな不気味な想像をしてしまう展開が待っています。
「父と私の桜尾通り商店街」
あらすじ
母の駆け落ち騒動で、商店街からつまはじきにされてしまった父と娘の「私」。
材料が全部なくなったらパン屋を閉店し、故郷に帰ろう。
そう決めていた私たちだったが、ある日店を訪れた女性がコッペンパンを美味しいと言ってくれてーー。
感想
とある女性客のために作ったコッペパンサンドが人気を呼び、閉店を目前にして持ち直していくお店。
状況だけ見ればハッピーエンドに向かっていきそうなのに、「私」の純粋さが暴走して不穏な展開へと突き進んでいきます。
やっと材料がなくなってホッとしている父に対し、主人公が「終わらせない」「もっとやれる」と追い詰めていく様子はもはやホラーで笑
「私」の女性客に対する執着は、どこか「むらさきのスカートの女」の語り手を彷彿とさせました。
ズレている人たち
今村さんが描く人たちは、みんなどこかズレているんですよね。
純粋で、一途で、一生懸命で、でもものすごく不器用で。
頑張れば頑張るほど常識の枠から外れていってしまう、そんな人たちばかりなのです。
だからこそ、一生懸命になっている彼らの姿はどこか痛々しくて、ときどき目を背けたくなって。
でも決して嫌いになれないというか、愛おしさすら感じられる瞬間もあるんですよね。
(リアルで仲良くなれる自信はありませんが)
そこも今村さんの作品の魅力なのだと思います。
見えない着地点
どこに向かっているのかわからない。ある瞬間から予想外の方向へと進んでいく。
そんな物語ばかりですが、今村さん自身にも着地点が見えていないこともあるのだとか。
ハッピーエンドなのかバッドエンドなのかわからないラストも多々ありますが、今村さんはあえて読者ではなく“主人公にとって希望がある方”を選んでいるのかなと。
特に表題作は、店が繁盛する、あるいは無事に閉店を迎えられるのが読者の想像するハッピーエンドな気がしますが、これが主人公視点となると話は別です。
彼女にとってはお客さんが増えることなどどうでもよく、ただ一人の女性と友達になりたい。そのことしか頭にないのです。
実際にそれが叶うのかは不明ですが、主人公にとっては明るい方に向かっているのかなと。
ザワザワとした落ち着かなさを感じるのに、最後はどこか爽快ですらあるのがなんとも不思議です。
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まとめ
不穏な空気が漂いつつも、どこかユーモラスで予測できない展開を堪能できる本書。
好みは分かれるかもしれませんが、個人的にはどの物語からも今村さんらしさが感じられる短編集だったかなと思います。
不器用で孤独な人たちの暴走の果てには何が待っているのか。
ぜひご自身の目で確かめてみてください。
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この本の総評
今村夏子さんのその他の作品
【No.2】~ほんわか小説と思いきや、実は・・・!?~ 『あひる』 今村夏子(著) 【No.102】宗教にのめり込む家族の愛と崩壊を描いた物語『星の子』 今村 夏子(著) 【No.152】2022年映画公開予定!芥川賞作家の衝撃のデビュー作『こちらあみ子』 今村夏子(著) 【芥川賞受賞】不安定で奇妙な世界に魅了される摩訶不思議な小説『むらさきのスカートの女』今村夏子 (著)
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