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【No.44】~子どもたちに伝えたい、大切なことはなんですか?〜 『つむじ風食堂と僕』 吉田 篤弘(著)

こんにちは、ぽっぽです。

今日の一冊はこちら↓

『つむじ風食堂と僕』吉田篤弘(著)

月舟町シリーズ番外編です。

作家としてだけではなく、デザインの仕事もされている著者の吉田さん。

プリマー新書の装幀デザインも、創刊からすべて吉田浩美さんとふたりで担当してきたそうです。

カバーも挿絵もとても素敵なので、ぜひ読んでみてください。

月舟町三部作を読んだ方は、番外編もぜひ読んでみてください!
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本の概要(あらすじ)

「物語はいつも途中から始まる」

 

サンドイッチ屋「トロワ」の息子、リツ君12歳。

 

少し大人びているリツ君は、つむじ風食堂で、町の大人たちに「仕事」についてたずねます。

 

大人たちはそれぞれに、自分の仕事や人生についての話をしてくれます。

 

リツ君は彼らの話を聞き、何を思うのか・・・

 

月舟町シリーズ三部作の番外編。

3つの特徴

つむじ風食堂と少年

『それからはスープのことばかり考えて暮らした』で登場するサンドイッチ屋の息子、リツ君が主人公になって物語は語られます。

少し大人びたリツ君には、考えることがたくさんあります。

「むかし」のこと、「将来」のこと、「仕事」のこと・・・

ちょっと待ってほしいと、ときどき思う。考える時間がほしい。そのためには雰囲気を変えて、いつもと違うところへ行きたくなる。

そしてリツ君が考え事をするために選んだ場所は、隣町の「つむじ風食堂」でした。

前にオーリィさんに連れて行ってもらって以来、忘れられなくなってしまった食堂。

リツ君は、週に二回ほど、ひとりで路面電車に乗って食堂へごはんを食べに行くのです。

つむじ風食堂と大人たち

リツ君は、食堂でいろんな大人たちと出会います。

食堂のマスターに「将来はサンドイッチ屋を手伝うの?」と聞かれますが、リツ君は

考える前に将来が決まっているのは、なんだか面白くない。僕は自分で考えた道を進みたい。

そう思っているので、食堂で出会う大人たちに、「仕事は何ですか」と訊くことにしています。

文房具屋さん、花屋さん、肉屋さん、魚屋さん、電気屋さん、ダンサー・・・

月舟町シリーズに登場した帽子屋の桜田さんや、果物屋の青年、コンビニのタモツさんたちも再登場します。

彼らの仕事に対する考え方は、バラバラ。

「適当に遊びながらね」「進歩するからさ」「好きっていうのも考えもの」「なるべく新鮮なうちに」「ひとを思うということ」「得意なことをやった方がいい」「好きこそ物の上手なれ」・・・「世の中、そんなに甘くない」「持ちつ持たれつ」「これこそ、人間が考え出した最大の発明です」

はじめは「どんな仕事をするか」について考えていたリツ君ですが、彼らの話を聞き、「幸せとは何か?」「自分が楽しいと思うことは何か?」について考え始めるようになります。

お父さんの仕事

リツ君は、一つの仕事を続けられずに三回も転職をした父のことを、あまりよく思っていません。

大人たちに仕事について訊いていることを知ったオーリィさんは、「お父さんにも訊いてみたら?」とリツ君に言います。

お父さんの仕事については知っているーーそう思っていたリツ君ですが、直接お父さんに訊いてみると、意外な発見がありました。

「毎日食べてもらいたいんだよ。実際、毎日食べてくれるひとがたくさんいるし、こっちもそのつもりでつくってる。だからこそ、本当においしいものをつくらないと」

(え?)と心の中の小さな僕が驚いた。父も町のひとたちが毎日食べているものをつくっていたのかーー。

さらにお父さんは続けます。

「サンドイッチはバランスなんだよ。お前にはまだわからないだろうけど。静と動というか、静かなものとにぎやかなものがひとつになっている。それがサンドイッチなんだな」

またまたリツ君は驚きます。そんな話はこれまで聞いたことがなかったのです。

新作の「目玉焼きのサンドイッチ」を食べて思わず「おいしい」と声がでてしまうリツ君。

お父さんの仕事は「町のひとたちが毎日食べるおいしいサンドイッチを作ること」だったのです。

それからリツ君はあまり食堂には行かなくなります。考えることが少なくなってきたからです。

いろんな大人たちの話を聞き、リツ君は何を思ったのか。

お父さんの仕事から、何を感じとったのか。

本の感想

人気シリーズ「月舟町三部作」の番外編ではありますが、この作品を含めて「月舟町四部作」と私の中では思っています。

 

他の三冊と比べるととても短く、あっという間に読み終わってしまう物語ですが、とても考えさせられる内容です。

 

「子どもたちに、ひとつだけ伝えるとしたら、あなたは何を伝えますか」というのが、プリマー新書の基本だそうです。

 

今回の作品は、そんなプリマー新書の記念すべき二百冊目らしく、吉田篤弘さんの「子どもたちに伝えたいこと」がつむじ風食堂を舞台に描かれています。

 

リツ君に質問され、大人たちは自分の仕事や生き方について、ときには自問自答をしながらリツ君に語りかけます。

 

著者のあとがきにも書いてありましたが、「初心に戻りたくなる」作品だと思いました。

 

明確な答えはありませんが、この本を読むと、ちょっと立ち止まって人生を振り返りたくなります。

 

リツ君がどんな大人になるのか楽しみです。

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印象に残った言葉(名言)

「生きてゆくことは、毎日、少しずつ「むかし」をつくってゆくことなんだと思う。だから、生きれば生きるほど「むかし」は増えてゆく」

 

「人生が大変なのは、これから先の「将来」のことを考えなければならないからだ。考えたくなくても、自然と考えてしまう。そういうふうになっている」

 

「でも、本当はなくしてしまったことに気づいていないものがたくさんある。たぶん、忘れてしまった記憶もたくさんある」

 

「考え方ひとつで人生はつらくなったり楽しくなったりするの。だから、なんて言うのかしら、どう考えて、どう生きてゆくか、それを決めればいいのよ」

吉田篤弘さんの月舟町シリーズ

月舟町シリーズ一作目⬇︎

【No.6】~不思議な魅力あふれる、月舟町シリーズ第一作~ 『つむじ風食堂の夜』 吉田 篤弘(著)

月舟町シリーズ二作目⬇︎

【No.29】~名なしのスープをめぐる、やさしくてあたたかい物語~ 『それからはスープのことばかり考えて暮らした』 吉田 篤弘(著)

月舟町シリーズ三作目⬇︎

【No.39】~小さな映画館の看板犬と町の人々の物語<月舟町シリーズ>完結作〜 『レインコートを着た犬』 吉田 篤弘(著)

月舟町シリーズまとめ⬇︎

【吉田 篤弘(著)】〜月舟町シリーズ三部作+番外編の魅力と読む順番〜

 

この本の総評

読みやすさ
(5.0)
雰囲気
(5.0)
個性
(4.0)
学び
(4.0)
総合評価
(4.5)

 

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