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【No.87】『スロウハイツの神様』から飛び出した、大人気作家チヨダ・コーキのデビュー作!『V.T.R.』辻村 深月(著)

こんにちは、ぽっぽです。

今日の一冊はこちら↓

『V.T.R.』辻村深月(著)

スロウハイツの神様を読んだ方はぜひこちらも読んでみてください!

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本の概要(あらすじ)

「ティー、愛してる。一人ぼっちにならないで。アタシはあなたを愛してる」

 

三年前に別れた恋人、アールからの突然の電話。

 

「あなたは今からたくさんアタシのひどい噂話を聞くことになると思う。でもね、ティーには覚えていて欲しい。アタシは変わってない」

 

それだけ言い残して姿を消したアール。

 

それから俺はアールについての信じられないような噂を耳にしてーー

 

『スロウハイツの神様』に登場する人気作家、チヨダ・コーキのデビュー作!

3つの特徴

『スロウハイツの神様』のスピンオフ作品

辻村深月さんの長編ミステリー『スロウハイツの神様』。

本書はスロウハイツの住人であり、“今を切り取る”人気作家として愛されているチヨダ・コーキのデビュー作です。

そして解説はスロウハイツのオーナーの赤羽環

コウちゃんの作品の大ファンでもある環の熱い想いが綴られていました。

本書は単体としても楽しめますが、個人的には『スロウハイツの神様』を読んでからこちらを読むのがオススメです。

あのコウちゃんが書いた作品だと思うと、より思い入れも深くなります。

物語の設定

主人公のティーと、元恋人のアール。

ふたりはともに、マーダーライセンスという資格を持つ闇の世界の仕事人。

マーダーライセンスとは、千人だけが持つことのできる特別な免許で、人を殺すことが許されるライセンスです。

アールからの突然の電話に違和感を感じたティーは、友人たちから彼女の情報を集めて行方を追います。

マーダーライセンスという設定からバトルものを想像するかもしれませんが、戦うシーンはほぼありません。

どちらかというと、ティーとアールの愛情を描いた作品です。

殺し屋、くすり、銃、闇の世界・・・

ライトノベル好きの方は、心くすぐられる要素がたくさんあると思います。

登場人物の魅力

ティーとアールの他にも、彼らの友人たちーー絵描きのS、銃職人のJ、医者のY、箱庭療法士のAなどが登場します。

それぞれに魅力的ですが、私はやっぱりティーとアールのキャラクターが好きです。

まず、ティーの“一芸に秀でたヒモ男”という設定が良き。(アールに「あなたが一番向いている職業はヒモよ」と言われるくらいに、それはまぁ見事なヒモ男なのだ)

そしてアールのいい女っぷり。辻村さんの描く女性が好きなのですが、アールはまさにそれです。

強くて、まっすぐで、綺麗で、我儘で、芯のある、優しい女性。強さと繊細さを合わせもつ、アンバランスさも魅力。

『スロウハイツの神様』を読んだ方はわかると思いますが、アールと環はよく似ています。

(コウちゃんはきっとこういう女性が好きなんだろうなあ)

さらに忘れてはいけないのが、エデンと呼ばれる金属のゴミ捨て場。そこにいる壊れかけたロボットたち。

中でもアールの一番のお気に入りのロボット「ペロッチ」

このペロッチがなかなかに可愛いヤツで、アールと同様、私のお気に入りです。

本の感想

「あれ?辻村さんの小説にしては薄いし、表紙もライトノベルっぽい?」

 

そう思ってよく見てみると、なんとあの『スロウハイツの神様』のチヨダ・コーキことコウちゃんのデビュー作ではないですか。

 

しかも解説は赤羽環。これにはもう感無量。読むしかない。

 

もちろん実際に書いているのは辻村さんなわけですが、作品の中に登場する架空の作品がこうして物語の世界から飛び出しているのです。

 

これはもう激アツというやつなのですよ。

 

実際に読んでみると、辻村さんの作品としてなら少し物足りないというのが正直な感想でした。

 

辻村さんの魅力でもある丁寧な伏線回収や、登場人物の内面を掘り下げる過程がもう少し欲しいところ。

 

でもそれをしてしまうと、それはもうコウちゃんの作品ではなくなってしまう気もするので、難しいところですね。

 

若者に絶大な人気を誇るコウちゃんのデビュー作としては、流石だなという印象でした。

 

スロウハイツにいたあのコウちゃんは、環にとっての神様は、こんな物語を書くんだ。

 

そう思いながら読むと、なんだか感慨深かったです。

 

コウちゃんの他の作品も読んでみたくなりました。(特に『レディ』シリーズが気になります)

 

もう一度『スロウハイツの神様』を読みたくなる、そんな一冊です。

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この本の総評

読みやすさ
(5.0)
設定
(4.0)
キャラクター
(4.0)
個性
(4.0)
総合評価
(4.0)

 

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