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【No.205】就職試験を舞台に描かれた一気読み必至のエンタメ小説! 『プロパガンダゲーム』根本聡一郎 (著)

こんにちは、ぽっぽです。

今日の一冊はこちら↓

『プロパガンダゲーム』根本聡一郎(著)

本書は電子書籍で人気を博した大人気作品を改稿した完全版。

「就活」をテーマにした内容なのかな?と思いきや、なかなか現代的で興味をそそられるエンタメ小説でした。

大学生以外でも楽しめる内容なので興味がある方はぜひ読んでみてください!

大手広告代理店の最終選考で与えられた驚くべき課題とは……!?

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本の概要(あらすじ)

「諸君の力を測るために、我々はあるゲームを用意した。名前は、プロパガンダ・ゲーム」

 

大手広告代理店「電央堂」の就職試験に挑む大学生8名。

 

最終選考で彼らに課された課題は、宣伝により仮想国家を戦争に導けるかどうかを競い合うゲームだった。

 

政府側とレジスタンス側に分かれた彼らは、果たしてどのような戦略でこのゲームを闘い抜くのか。

 

そして明らかになる、最終選考に隠された真の意図とはーー?

 

ネット社会における民主主義の意味を問う、一気読み必死のエンタメ小説!

3つの特徴

斬新な就職試験

物語の舞台は、大手広告代理店「電央堂」の就職試験会場。

最終選考まで勝ち残ったのは個性豊かな8名の大学生たち。

ここからさらに最後のふるいにかけられるという、緊張感漂う場面から物語は始まります。

彼らに告げられた最終選考の課題は「プロパガンダ・ゲーム」

(プロパガンダ:政治的宣伝を意味する言葉)

仮想国家を戦争に導けるかどうかを競うゲームをさせ、その中での活躍度合いを見て採用者を選ぶというのが企業側の趣旨。

もしも現実にこんな採用試験があったらハードすぎますよね。

ランダムに“政府チーム”と“レジスタンスチーム”に分けられた学生たちは、各々の個性を発揮して果敢にこのゲームに挑みます。

物語の語り手は、“政府チーム”の後藤正志と“レジスタンスチーム”の今井貴也。

両チームの視点が交互に入れ替わることにより、より緊迫感あふれるゲーム展開を楽しむことができます。

先の読めないゲーム展開

プロパガンダ・ゲームの大まかな設定は以下の通りです。

  • 政府チームとレジスタンスチームに分かれる
  • 両チームは仮想国家「パレット」にて自分の陣営の宣伝を行う
  • 宣伝を行う対象(パレットの国民)は一般市民100名
  • 隣国・イーゼルと戦争を行うべきかどうかを国民投票で決定する

つまり、隣国との戦争を推進する政府チームと、それに反対するレジスタンスチームが宣伝合戦を行うということですね。

政府チームの勝利条件は国民投票での賛成票が反対票を上回ること。

逆にレジスタンスチームは反対票が賛成票を上回れば勝利ということです。

どちらがより多くの市民を自分たちの側に扇動できるかどうかを競い合うゲーム、と言ったところでしょうか。

この他にも戦況を大きく左右する設定がいくつかあるのですが、それは読んでからのお楽しみということで。

もし自分が政府側だったら、レジスタンス側だったら、あるいは一般市民側だったら。

先の読めないゲーム展開を楽しむと同時に、自分だったらどうするか?を常に意識させられる内容でした。

本書は今年の8月に舞台化もされていたようです!

明かされた真意

最終的に勝利をおさめたのはどちらのチームか?

というプロパガンダ・ゲームの結末が本書の山場かと思っていましたが、実はまだその先があるのです。

「就職試験にしてはかなり大掛かりな設定だな」という違和感の正体はそこで明らかになりました。

予想外のラストといえばそうなのかもしれませんが、正直個人的にはゲームの部分だけでもよかったのかなと。

題材にリアリティがあって読み応えがあった分、最後は無理矢理な感じがしてちょっと不自然に感じてしまいました。

はたして彼らの革命は成功するのでしょうか……!?

本の感想

就活にまつわるストーリーということで朝井リョウさんの『何者』のような物語を想像していましたが、全然違いました笑

 

就活生たちの心理描写に焦点を当てているというよりは、あくまでもエンタメ小説として楽しめる内容だと思います。

 

最後はちょっと失速感が否めませんでしたが、緊迫感あふれるゲーム展開は読み応え抜群です。

 

設定そのものは非現実的な感じもしますが、中身はかなりリアリティを彷彿とさせる内容でした。

 

普段何気なく触れている<宣伝広告の本質>について考えるきっかけにもなると思います。

 

自分が持っている意見や価値観。これは本当に私のものなのか?

 

それとも誰かにそう思わされているものではないのか…..?などと色々考えてしまいました。

 

ネット社会においては個人よりもむしろ大衆心理の方が扇動しやすいのかなと感じましたが、それってかなり怖いことですよね。

 

たくさんの情報に触れられる便利な時代だからこそ、多角的な視点で物事を考えるよう意識することが大事だなと改めて思いました。

 

エンタメ小説として楽しみつつも、現実社会に落とし込んで考えられるテーマでもあるので、ぜひ一度読んでみてください!

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印象に残った言葉(名言)

「あらゆる手段を用いて人々に訴え、顧客を支持する世論を作り上げる。これが宣伝という仕事だ。情報化された現代社会では、顧客にあらゆる人間が想定される。このことを肝に銘じておきたまえ」

 

「今の人らはな、ネットでみんなが話題にしている人気の商品を、自分も購入したがる。つまりな、ネットが普及した今の方が、長いものに巻かれたがる人間が増えてんねん」

 

「マーケティングの世界やとね、選挙は先に争点を設定できた側が勝つってのが常識になってるんよ。投票するための判断基準を、自分で国民に提供してしまう。そうすると、その基準を土台にして国民が考えてくれるようになる」

 

「たしかに選挙でも商売でも、基準を自分で作って、そのルールを「そういうものなんだ」と信じ込ませることができる人間が一番強い」

 

「自分たちは戦争を望んでいない。相手が一方的に平和を踏みにじろうとしている。だから、私たちは立ち上がる。言い回しはオリジナルだけど、戦争をはじめる指導者は、驚くほど同じことを言ってる。全員が平和を望むなら、戦争になるわけないのにね」

 

「どのような結果が出たにしろ、このシステムの中では、その結果が正解です。正解をおかしいと思うなら、システムを変える努力をすることです。嘆くだけでは、現実は変わりません」

 

「短所を見つけて言葉にするのは、長所を言語化するより、ずっと簡単なんだと思う。自分の良いところを見つけるのを諦めてしまった人たちが、相手の短所だけを見つけて『宣伝』する。あのゲームで起きたのも、きっとそういうこと」

この本の総評

読みやすさ
(5.0)
キャラクター
(4.0)
エンタメ
(4.0)
ラスト
(3.0)
総合評価
(4.0)

 

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