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こんにちは、ぽっぽです。
228冊目はこちら↓
『AX』伊坂幸太郎(著)
”こんなにも人間味溢れる殺し屋がいたとは”
本書を読んだ多くの方が、とりわけ前二作を読了済の方は、きっとこう思うはず。
ここでしか出会えない殺し屋に、ぜひ会いにきてください!
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本の概要(あらすじ)
「最後に行き着くのは、魚肉ソーセージだ」
腕利きの殺し屋として裏社会では有名な「兜(かぶと)」。
しかし彼は業界内では珍しく妻子持ちで、家では妻に頭が上がらない恐妻家。
もちろん家族は兜の物騒な仕事のことは何も知らない。
高校生の一人息子・克己のためにも、殺し屋を引退したいと考えているがーー。
こんな人におすすめ
本書をおすすめしたいのはこんな人↓
- 殺し屋シリーズファンの方
- 家族を愛する恐妻家の方々
- 伊坂幸太郎さんの小説を読んでみたい方
本の感想
前回殺し屋シリーズ二作目の『マリアビートル』を読んだので、続けて三作目のこちらを。
また殺し屋たちの緊迫感あふれるバトルが見られると思いきや……
なんと今回はまさかの“家族小説”でした。
まあ家族小説と言うにはいささか物騒ではありますけどね。
基本的にはこれまで同様“殺し屋小説”なのですが、その中でも家庭をメインに描かれているという点が他とは違うポイントです。
まさか殺し屋小説で「家族愛」をこんなにも感じることができるとは。
ハードボイルドでありながら、ハートフルな物語。
これまでのシリーズとはだいぶ趣が異なりますが、ぜひこちらも読んでいただきたいです。
殺し屋は恐妻家
前二作と大きく違う点は、
- 連作短編形式であること
- 家庭生活が描かれていること
だと思います。
基本的に主人公ひとりの視点に固定されている点も、他とは違いますね。
これまではどこか異質な存在として描かれていた殺し屋たちですが、本書ではグッと人間味が増しているのも魅力のひとつ。
そんな今回のメインキャラクターは、なんと“妻子持ちの殺し屋”です。
しかも息子が呆れてしまうくらいの恐妻家ときたもんだ。
超一流の殺し屋なのに、恐妻家。
この設定だけでもう面白いですよね。
ちなみに殺し屋の仕事のことは、家族には内緒。
表向きは文房具メーカーの営業職…..というか、本当に昼間は会社員として働いています。
業界内では腕利きの殺し屋として有名なのに、深夜家に帰れば妻を起こさないようこっそりと魚肉ソーセージを頬張る姿は何とも涙ぐましく。
(なぜ魚肉ソーセージなのかがわかるあなたはきっとプロの恐妻家)
そんな情けない姿につい「あなた本当に殺し屋ですか?」とツッコミたくなるのですが、それも最初だけ。
気づけば兜の一挙一動に目を凝らし、「あ、そこ地雷では!?」と一緒になって妻の反応にハラハラしたりホッとしたり。
そして息子のさりげないフォローや、たまに掛けてくれる優しい言葉にウルっとし。
そんな家族とのやりとりは微笑ましくて、可笑しさと愛おしさで胸がいっぱいになります。
前半三篇はこのように家庭の様子が丁寧に描かれていますが、その分殺し屋の仕事はかなりあっさりめな印象。
どんな敵が襲いかかってきても「まあ兜なら大丈夫でしょ」と安心して見ていられました。
(それほど殺し屋としては一流なのです)
むしろ妻を前にした兜を見ている方が、緊迫感があってヒヤヒヤが止まりませんでしたね笑。
二つの顔がもたらす葛藤
仕事を淡々とこなす”殺し屋”としての兜と、家での気弱な”夫・父親”としての兜。
興味深いことに、彼はこの二つの顔を使い分けているわけではありません。
いつだって彼の第一優先は「妻の機嫌を損ねない」こと。
殺し屋と対峙しているときでさえ、妻からの電話に出られない言い訳を頭の中で必死に考えているのです。
それが何とも不器用で愛らしいのですが、そのかけ離れた二つの顔こそが彼の抱える葛藤に起因していて。
本来併せ持つはずのない、殺し屋としての自分と夫・父親としての自分。
それが彼の中で地続きに存在しているからこそ、苦悩も多いのだろうなと感じました。
だからこそ殺し屋を辞めたいという気持ちも強くなっていくのですが、そう簡単にもいかない理由があって。
辞めたいけれど辞められない、でももう人を殺したくない。
そんな現実に憤りを感じている兜ですが、ある男との出会いが、現状を大きく変えるきっかけとなり……
幻のエピソードD
本書は表題作「AX」から連なり、スズメバチと格闘する「BEE」、パパ友ができる「Crayon」と続き、物語が大きく動き出す「EXIT」そして「FINE」で締め括られます。
さて、ここであなたは気づいただろうか。
そう、「D」が抜けていることに。
一体なぜD章だけないのか。そこにはある重大な意図が隠されいて……というわけではなく。
著者である伊坂幸太郎さんによると「いくつかの事情で書く気力がなくなってしまい、そのままになっている」とのことらしいです。
ちなみにDから始まる物語のタイトルは「Drive」。
海ほたるを舞台に攻防が起こる予定だったそうなのですが、今後も書く予定はないようですね。
(途中までは『小説 野性時代』で掲載していたようです)
その代わりに「EXIT」「FINE」の書き下ろし二篇を収録したのが本書。
幻となってしまった「Drive」が読めないのは残念ですが、「EXIT」からの展開と息子視点で描かれる「FINE」によって、とても満足度の高い作品に仕上がっています。
とりわけ「FINE」は伏線回収という意味でも見事ですが、これまで兜視点でしか描かれていなかった「家族愛」が、息子の目線で描かれることによってより深さを増したというか。
兜のひたむきさや愛情がちゃんと伝わっていて、そして息子と妻からも兜は愛されていたのだということがわかって安堵しました。
しかし、妻が息子に言った「お父さんはいつも気楽に、のんびり生活していたんだから」という言葉には、思わず兜への哀れみを禁じ得ませんでした。
でも彼にとってはそれが本望なのかもしれませんね。
自分の気遣いを妻には決して気取られない、これぞまさにプロの恐妻家ではないでしょうか。
意外な伏線回収
一作目:「グラスホッパー=バッタ」
二作目:「マリアビートル=てんとう虫」
とこれまでは昆虫の名前がタイトルになっていますが、今回の「AX」は「斧(おの)」という意味です。
ネタバレというわけではないので種明かしをしてしまいますが、これは第一章で交わされた兜と息子の会話「蟷螂(とうろう)の斧」からきている言葉。
蟷螂とはカマキリのことで、「弱いにも関わらず、必死に立ち向かう姿」のことを蟷螂の斧と言うらしいです。
父と息子の他愛もない会話として、すっかり頭から離れていたこのやりとり。
実はこの言葉、後々「こういうことだったのか」と気付く場面があるので、楽しみにしていてください。
ハッピーエンドというには切ないですが、読後は温かい気持ちになれるラストだったなと思います。
伊坂さんの作品って、残酷さと温かさの配分が絶妙ですよね。
まとめ
本書はシリーズものの三作目ではありますが、伊坂幸太郎さんの小説をあまり読んだことがないという方にもおすすめな作品です。
「殺し屋シリーズ」といういかにも物騒なワードに躊躇してしまう方も、まずはこちらから読んでみてはいかがでしょうか。
連作短編形式で伊坂さんの小説特有の目まぐるしさもないので、とても読みやすいと思います。
殺し屋としての主人公よりも夫や父親としての視点の方が多いので、共感できる方もたくさんいるはず。
プロの恐妻家としてのノウハウも惜しげもなく披露してくれているので、特に恐妻家の方々は参考にしてみてください笑
今回は過去のキャラクターがたくさん登場するわけではありませんが、私の好きな「蜜柑と檸檬」「槿」は登場しました。
最新作『777』はあの天道虫が主役らしいので、彼が次はどんな不運に見舞われるのか、今から楽しみです。
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印象に残った言葉
「事実を声に出す。そんなことは誰にでもできる。けれど、誰もやらない。分別と常識があるからだ。強いて言えば、そいつは、感情に任せて、分別を失って、言ってもどうにもならない事実を発声しただけだ」
「命を危険に晒す争いに参加することなく、机に向かってペーパーテストを解くことができるのは、つまりそれほど社会の治安が落ち着いているのは、限られた国の、限られた時代、しかも限られた若者だけだからだ」
「感情って相殺されないんですよね」
「世の中の人間はどのような者も大変なのだから、どのような状況であろうとそれを労っておけば問題がない。兜はそのことを、妻との生活から学んだ。一緒に暮らし始め、とりわけ克己が産まれて以降、妻が抱える苛立ちや不満の大半は「自分の大変さをあなたは正しく理解していない」ということに還元できる」
「暗いというのは、単に、静かに日々を楽しむことができる、ということですよ」
「人が誰かを憎むのに、論理的な理由は必要ないからな」
「苦しむのはいつだって自分以外の誰かで、責任があるのはいつだって自分以外の誰か、と信じているのだ」
この本の総評
伊坂幸太郎さんのその他の作品
✳︎大人気殺し屋シリーズ一作目⬇︎
【No.129】疾走感あふれる殺し屋シリーズ第一弾!『グラスホッパー』 伊坂 幸太郎(著)✳︎大人気殺し屋シリーズ二作目⬇︎
【ハリウッド映画化】殺し屋シリーズ第二弾!『マリアビートル』伊坂幸太郎(著)✳︎楽しさを追求した予測不能のエンタメ小説⬇︎
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【No.202】 ファンタジーとミステリーが入り混じる圧巻のデビュー作!『オーデュボンの祈り』伊坂幸太郎(著)
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