短編

【No.89】月舟町シリーズの著者が描く、摩訶不思議な世界の物語『ガリヴァーの帽子』吉田篤弘(著)

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こんにちは、ぽっぽです。

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『ガリヴァーの帽子』吉田篤弘(著)

今まで読んできた著者の作品の中で、ダントツに奇妙な物語たちでした。

本の概要(あらすじ)

「ようこそ、我らの王国へ」

テントンと名乗る男からの奇妙の電話に誘われて、とある島へと向かった新聞記者S。

辿り着いたのは、ミニチュアの建物が連なる街と、赤児ほどの背丈の男。

<テントン><ガリヴァー><リリパット王国>・・・

『ガリヴァー旅行記』をなぞらえた、「ガリヴァーの帽子」を表題作とする短編小説集。

現実と異世界の狭間へと誘う、摩訶不思議な8つの物語。

3つの特徴

摩訶不思議な8つの物語

運命の出会いの裏に隠された秘密を描いた物語や、シャンパンの泡を語り手としたシュールな物語など、色とりどりのお話たち。

表題作をはじめとする8つの物語は、どれも奇妙で独特な世界観を味わえます。

・「ガリヴァーの帽子」

・「イヤリング」

・「ものすごく手のふるえるギャルソンの話」

・「かくかく、しかじかーーあるいは、彗星を見るということ」

・「ゴセンジ」

・「御両人、鰻川下り」

・「名前のないトースターの話のつづき」

・「孔雀パイ」

現実と異世界

8つの物語はそれぞれに奇妙なおかしさが漂っていますが、とりわけ不可解なこの3つの物語。

・「ガリヴァーの帽子」

・「御両人、鰻川下り」

・「孔雀パイ」

この3つは特に、こちら側とあちら側ーーつまり、現実世界と異世界の境界線があやふやな物語です。

「ガリヴァーの帽子」ではテントンが、「御両人、鰻川下り」では番頭が、「孔雀パイ」では絵の中の王子が。

現実と異世界の橋渡し的役割を担っています。

そしてこの3つの物語についで奇妙な物語が、「かくかく、しかじかーーあるいは、彗星を見るということ」。

こちら側の不条理さを嘆くシャンパンの泡のモノローグがなんともシュールで、物語全体をより奇妙なものにさせています。

彼らに導かれるようにして、読者もまた、あやふやで不可解な世界を体験することに。

個性的なあとがき

本書には著者による「あとがき」と「解説」が収録されています。

「ロイス・レーン相談所の話のつづき」として題されているあとがきですが、これは著者と物語の登場人物(アキ)との対談というおもしろい形式をとっています。

蛇足ですが、「ガリヴァーの帽子」はスーパーマンを知っている方なら「おっ!」と思うはず。

ロイス・レーン▶︎「スーパーマン」の恋人の名前

新聞記者<S>▶︎スーパーマンの正体であるクラーク・ケント氏の職業も新聞記者

この関連付けに深い意味があるわけではないですが、遊び心が感じられて良いなと思いました。

著者自身が解説で「おかしな作品」と語っている本作品。不思議な世界を体験したい方は、ぜひ読んでみてください。

この短編集ーー短編ではなく、あきらかな掌編もありますがーーには、いくつかのおかしな作品が含まれています。ここで云う「おかしな」は、不可解なもの、ともすればまるで意味のないものを指しています。

本の感想

これまで読んできた物語とは違い、「奇妙」や「摩訶不思議」といった言葉の方がしっくりくる作品でした。

言葉選びや雰囲気はまぎれもなく吉田さんのそれなのですが、他とは明らかに毛色の違う内容。

読後に「?」が残る物語もいくつかありましたが、読めば読むほど味が出てきそうです。

理解しようと思いながら読むのではなく、おかしな世界そのものを楽しむスタンスで読むといいのかなと思いました。

特に好きなのは「ものすごく手のふるえるギャルソンの話」「ゴセンシ」「名前のないトースターの話のつづき」。

摩訶不思議な世界を体験してみてください。

印象に残った言葉(名言)

「ねぇ、知ってる?わたしたちは毎日、未来の準備ばかりしてるの。毎日が未来のためにあるのよ」

 

「世界は、いろんなかたちの冷蔵庫で溢れ返って、氷を使うか、言葉を使うか、メロディーを使うか、それだけの違いなの」

 

「手のふるえないギャルソンなんてニセモノよ。手のふるえるギャルソンこそ、いずれ本物のギャルソンになる。そんなこと決まってるじゃない。むしろ、喜ぶべきことよ。手がふるえておめでとう、よ」

 

「この世は耳の遠い神様と忘れっぽいヒトやイキモノやモノで出来ている」

 

「なるほど、工夫は苦境からしか生まれない、ということか」

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