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こんにちは、ぽっぽです。
今日の一冊はこちら↓
『月のぶどう』寺地はるな(著)
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本の概要(あらすじ)
「なにかになりたい、といつでも思いながら、ただ生きてきた」
大阪府月雲市にある「天瀬ワイナリー」。
曽祖父の代から受け継がれてきたワイナリーを営んでいた母が、ある日突然亡くなった。
母親似で優秀な双子の姉・光実と、逃げ続けてばかりの人生を歩んできた弟の歩。
母の死をきっかけに、光実とともに家業を継ぐ決心をした歩だったが・・・。
ワインづくりを通して見つめ直す、自らの生き方。
正反対の双子の成長を描いた物語。
3つの特徴
正反対のふたり
「出来のいいほう」の姉・光実(みつみ)と、「出来の悪いほう」の弟・歩(あゆむ)。
母が期待しているのは、子どもの頃から「家業を継ぐ」と決め、母に似て優秀な光実だけ。
自分は見向きもされていない。そのことに傷つき、家を避け、母を避けてきた歩。
求めなければ、近づかなければ、失わずに済む。
そんな歩でしたが、母の死をきっかけに家に戻り、光実とともにワイナリーで働くことに。
<しっかり者の光実>と<頼りない歩>という構図からはじまる物語。
しかし、徐々に光実の強さの裏に隠された弱さが浮きぼりになり、反対に歩の弱さの裏に秘められた強さが見え隠れします。
「ああやって平気で人に弱みを見せられるというのは、むしろ強いことかもしれん」
「我慢ばっかりして、意地はって突っぱり続けたら、いつかポキっと枝が折れてしまう」
正反対のふたりですが、それぞれに違う良さがあって。
ときにはぶつかり、ときには助け合い、それぞれのやり方で成長していきます。
いたずら好きな祖父と、おっとりしている父も良い味を出していて、家族ならではの温かさと厳しさが伝わる物語でした。
ものづくりの過酷さ
ワインの華やかさの裏に隠された、完成までの長く地道な道のりが、作品を通して描かれています。
ぶどうの栽培からワインの醸造まで、実際に経験しないと思い浮かべにくい場面もありますが、その過酷さは凄まじいものを感じました。
ものづくりの偉大さが伝わる物語です。
難しい言葉が出てくるわけではないので、ワインの知識がなくても大丈夫。
ワイン造りだけでなく、いろんな仕事や生き方に通じる考えのようなものが、作品全体に散りばめられていてハッとさせられました。
昔から憧れていた職業に就く、ということが人生のひとつの理想のように語られることがよくあります。
けれども歩くん、就きたかった職業でなくても、あなたが真摯に、一途に、日々取り組んでいるとしたら、それはとても美しい生きかただと、私は思います。
光実のように、小さい頃から夢があってそれを叶えている人はほんの一握りだと思います。
むしろ、「夢」がないことに苦しんでいる人や、「どうしてもやりたいこと」がないことに劣等感を感じている歩のような人はたくさんいるのではないでしょうか。
この作品は、光実と歩それぞれの視点で交互に語られるので、前者と後者どちらのタイプでも共感できる部分がたくさんあると思います。
晴れやかなラスト
母親のお葬式から始まり、光実の結婚式で終わる物語。
途中胸が痛くなるような場面もたくさんありますが、幸せな風景が広がるラストで一気に心が晴れやかになりました。
寺地さんの作品は胸にぐさぐさと刺さるような言葉もたくさんありますが、最後はあたたかい気持ちになれるので読後感がとても良いです。
きれいな部分だけでなくかっこ悪い部分も描いてあるからこそ、彼らに共感でき、真っ直ぐな言葉が心に届きます。
乾杯、と持ち上げると、皆のグラスの中で太陽がきらめいた。祝福が喉を通過して体の中に注ぎこまれると、幸福に変わる。
本の感想
『ビオレタ』『ミナトホテルの裏庭には』に続いて読んだ、寺地はるなさんの三作目の作品。
初めて読んだとき、天瀬ワイナリーの従業員(森園くん)の歩に対する嫌がらせにすごく心が痛んで、なんだかつらい印象が強く、再読していなかった小説です。
今回読んでみて、やっぱり幼稚ないじめを見ているようで心がざわざわしましたが、それ以上に素敵な部分がたくさんあることに気づきました。
寺地さんは等身大の人間を描くのがとても上手。
今まで読んだ作品も主人公の成長物語でしたが、その過程がとても良いです。
新たな才能を発揮するとかではなく、いろんな人たちとの関わりの中で、もともと持っている「良さ」が引き出されていくというか。
共感できる弱さがあるところも魅力のひとつだと思います。
心に響く言葉もたくさんあって、周囲の人たちの(特に祖父と父)厳しさと優しさのバランスがほどよいです。
自分の人生を「こんなはずじゃなかった」と思っている人。「なにかになりたい」と思いながらもその“なにか”がみつけられずにいる人。自分の生き方に迷っている人。
そういった人たちに読んでほしい一冊です。
寺地はるなさんの他の作品
【No.62】〜あなたは何を入れますか?大切な記憶をしまう”棺桶”をめぐる物語〜 『ビオレタ』 寺地 はるな (著) 【No.68】〜風変わりなホテルを舞台に紡がれる優しい物語〜 『ミナトホテルの裏庭には』寺地はるな(著)印象に残った言葉(名言)
「世間では夢を持つのは良いことだとされている。自分もそう思っているから、苦しいのだと歩は思う。「夢」という言葉を見聞きするたび、光実と相対するたび、ほんのすこし濁る」
「大切やない、必要のない仕事はない。必要でなかったら、それは存在してません」
「世の中にある華やかなものは、すべて誰かの地味な作業によって生み出されているのだ」
「誰かが大切に持っている夢は、その人自信がそっと手を開いて見せてくれるまで、軽々しく触れてはならないと思う」
「ぜんぶ理解できんでもええ。親族とはいえ、他人なんやから。共感もするな。共感なんてもんは、なんの役にも立たん」
「女だからふんわりしていなければならないなんておかしい。そんなの絶対におかしい」
「もっと大変な人はたくさんいる。何度も、何度も、いろいろな人間にそう言われてきた。あなたより辛い目にあっている人はたくさんいる。あなたは恵まれている。でもそんな考えかたは、嫌だった。それを是とすれば、つまるところ世界でいちばん不幸な人間しか苦悩を語ってはならないということになる。はたしてそれは、良いことなのだろうか。俺のほうがつらい、いや私のほうがもっと、と競い合うような、そんな苦悩選手権みたいな世界で生きるのは嫌だ」
「自分のつくったもんに自信を持つ、ということと、自分のつくったもんがわからんやつはおかしい、と否定することは違うで」
この本の総評
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