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【No.10】~本屋大賞受賞の感動作~ 『羊と鋼の森』 宮下 奈都(著)

こんにちは、ぽっぽです。

今日の一冊はこちら↓

『羊と鋼の森』 宮下 奈都(著)

宮下奈都さんの作品の中でも、一番最近読んだ一冊です。

雰囲気や文章がとても好きで、いろんな著者の作品を読んできましたが、

中でもこの一冊は、いちばん静かで深い作品だなと感じました。

物語が終わってしまうのが淋しくて、ゆっくり時間をかけて読んだ一冊です。

 

好きな小説が映画化されると複雑な気持ちになるのは、わたしだけでしょうか?

 

 

本の概要

「僕は調律という森に出会ってしまった。山には帰れない」

 

高校の体育館で、調律師の板鳥さんと出会うところから始まる、主人公の物語。

 

調律という世界に魅せられた彼は、高校卒業後に調律の専門学校に通い、その後念願の調律師としての人生を歩み始める。

 

迷いながらも、真剣に。こつこつとひたむきに、音と向き合う主人公。

 

個性的な先輩や憧れの板鳥さん、双子の姉妹、いろんな人たちに囲まれて、たしかな音を探し続ける。

 

まるで、調律という森の中を彷徨うように。

 

3つの特徴

調律という仕事の奥深さ

音楽をテーマにした小説はたくさんありますが、裏方である「調律師」を題材にした物語には初めて出会いました。

調律師について、ピアノについて、本当に緻密に描かれているので、この作品を通して普段目にすることのない世界にふれることができます。

この本を読む前は、調律という仕事は、型通りの決められた答えのある仕事なのかと思っていました。

決められた基準となる音があって、ひたすらそれに近づけていく仕事なのだと。

でも、この本を読んでみて、自分の想像とは全く異なっていたことを知りました。

ピアノの特性、演奏する場所、演奏者の好み、腕前、年齢・・・

さまざまな要素を組み合わせて、最もふさわしい音にしていく。

正解のない答えを探し続け、奥深い森の中を手さぐりで進んでいくような、そんな途方もなく壮大な作業なのだなと驚きました。

 

理想の音とは

主人公が板鳥さんに、どんな音を目指しているのかを聞く場面があります。

「明るく静かに澄んで懐かしい文体、

少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、

夢のように美しいが現実のようにたしかな文体」

板鳥さんはこう答えます。

これこそがまさに、板鳥さんの音であり、主人公の世界を変えた音なのです。

そしてこの言葉は、宮下奈都さんの書く文章そのものだと、私は思いました。

 

主人公の成長

物語の冒頭で、主人公の人生が劇的に変わる瞬間が描かれています。

人によってはなんでもない出来事でも、だれかの人生を変えてしまうほどの瞬間になる。

その場面がていねいに描かれています。

それからの彼の人生は、暗い森をかきわけて進むような、途方もない道のりです。

成長の物語ではありますが、とても地道でささやかな場面が切りとられているため、本当にこつこつと少しずつ進んでいく、そんな印象を受けます。

でも、決して派手でも華やかでもない道でも、光を感じることのできる瞬間がある、そういう部分を描きだしている作品だと思いました。

 

本の感想

最初は『羊と鋼の森』が何を意味しているのかわかりませんでしたが、読んでいくうちに込められた意味を知ることができました。

 

まさにこの本にぴったりのタイトル。

 

 

宮下奈都さんの書く文章は、その場面の風景を鮮明に頭に思い浮かべることができるほど、繊細で美しくて優しいです。

 

そのことを、この作品を読んでより感じさせられました。

 

 

”音楽が聴こえてくる”という感想をたくさん見かけましたが、

 

私は一貫して静かな印象を受けました。調律をする場面でも、ピアノを聴いている場面でさえも。

 

不思議ですね。

 

 

物語は淡々としていて、ドラマチックな展開や感動のフィナーレがあるわけではありません。

 

だからこそ、最後までフラットな目線で、嘘のないように主人公の人生を描いていることがわかります。

 

全体を通して、読者に ”こう思わせたい” とか ”こう感じてほしい” という著者の理想みたいなものが全く感

 

じられず、いろんな人がいろんな受けとり方をできるような、そんな作品になっています。

 

 

 

 

印象に残った言葉

「ピアノが、どこかに溶けている美しいものを取り出して耳に届く形にできる奇跡だとしたら、僕はよろこんでそのしもべになろう」

 

「あきらめはしない。ただ、あきらめなければどこまでも行けるわけではないことは、もうわかっていた」

 

「はじめから望んでいないものをいくら取りこぼしてもつらくはない。ほんとうにつらいのは、そこにあるのに、望んでいるのに、自分の手には入らないことだ」

 

「才能って言うのはさ、ものすごく好きだっていう気持ちなんじゃないか。どんなことがあっても、そこから離れられない執念とか、闘志とか、そういうものと似てる何か。」

 

「ピアノで食べていこうなんて思ってない。ピアノを食べて生きていくんだよ」

宮下奈都さんの他の作品

【No.37】~なりたい自分をみつけたくなる、心に響く物語~ 『太陽のパスタ、豆のスープ 』宮下 奈都(著) 【No.52】~それぞれの特別な「旅」の瞬間を描いた物語〜 『遠くの声に耳を澄ませて』 宮下 奈都(著) 【No.59】〜不器用で真っ直ぐな女の子の、しあわせの景色を切り取った物語〜 『窓の向こうのガーシュウィン』 宮下 奈都(著) 【No.69】〜『羊と鋼の森』の著者、宮下奈都さんの幻のデビュー作〜 『静かな雨』宮下 奈都(著)

 

この本の総評

読みやすさ
(5.0)
感動
(4.0)
音楽
(4.0)
表現
(5.0)
総合評価
(4.5)

 

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