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【No.174】日常にひそむささやかな怪異を描いた”ちょっと怖い”物語『きのうの影踏み』辻村深月 (著)

こんにちは、ぽっぽです。

今日の一冊はこちら↓

『きのうの影踏み』辻村深月(著)

辻村さんは青春ミステリ系のイメージがありますが、実はホラー小説も書かれているんですよね。

私は基本的にホラー・オカルト系は苦手なのですが、辻村さんの描く”ちょっと怖い”物語は好き。

短編小説で読みやすいので、ぜひ一度手に取ってみてください。

ホラー小説が苦手な方にもおすすめです!

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本の概要(あらすじ)

「私と一緒にここで降りるのと、私があなたの駅までついていくのと、どっちがいいですか」

 

仲良しの友達がいなくなった??消したい人の名前を書いた紙を、十円玉とともに賽銭箱に入れるとーー

 

虫だと思って殺した”それ”をよく見てみると、妖精のような靴を履いていて……

 

噂の最初はどこから来るの?”噂地図”を正確に作らなかった少女を待ち受ける「罰」とはーー?

 

日常と地続きに存在する、奇妙な出来事や摩訶不思議な体験。

 

著者の大好きな世界を詰め込んだ、思い入れの深い珠玉の怪談集!

3つの特徴

13の物語

日常と非日常の境界で生まれる、様々な”怪異”を描いた13の短編小説。

  • 十円参り
  • 手紙の主
  • 丘の上
  • 殺したもの
  • スイッチ
  • 私の町の占い師
  • やみあかご
  • だまだまマーク
  • マルとバツ
  • ナマハゲと私
  • タイムリミット
  • 噂地図
  • 七つのカップ

消えてしまった友人と、賽銭箱の都市伝説。(「十円参り」)

作家たちの元に届く謎の手紙と、正体不明の送り主。(「手紙の主」)

電車での奇妙な出会いと、押されたスイッチ。(「スイッチ」)

並べられた七つのカップに込められた想いと、少女の霊。(「七つのカップ」)

etc……

怪談や都市伝説を中心に、幻想的な物語や摩訶不思議な体験まで、バラエティに富んだ内容となっています。

得体の知れない怖さが散りばめられています!

 

*合わせて読みたい!辻村さんのもうひとつのホラー短編小説『ふちなしのかがみ』

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【No.73】〜ホラーとミステリーが融合したちょっと怖い5つの物語〜 『ふちなしのかがみ』辻村深月(著)

日常にひそむ怪異

本書はいわゆる”ホラー小説”ですが、おどろおどろしい幽霊が出てきたり、血飛沫が飛び散るスプラッタ系ではありません。

ホラー映画のように派手な演出で怖がらせてやろうという意図は全く感じられず。

純粋に「辻村さんはホラーが好きなんだな」と伝わってくるような内容でした。

本書で描かれているのは、本当にこの世界で起きているのではないかと思えるような、そんな日常の中にひそんでいるささやかな怪異。

結末がはっきりと描かれていない物語も多いですが、それが余計に「よくわからないもの」に対する人間の不安や恐怖心を呼び覚まします。

私は今回あえてわからないままを楽しみましたが、自分なりに解釈を加えるのも面白いかもしれないですね。

本書は「母と子」が軸になっているものが多く「これは著者の実体験なのかな?」と感じる物語も。

どこまでがフィクションで、どこからがノンフィクションなのか?

その曖昧な境界線を楽しんでみてください。

「手紙の主」や「私の町の占い師」は辻村さんの実話がベースになっているそうです!

コミカライズ企画

本書を読み終えた方にぜひ見てほしいのがこちら⬇︎

KADOKAWA文芸WEBマガジン

この『きのうの影踏み』はなんと、角川文庫創刊70周年記念企画でコミカライズされているのです!

全てではなくほんの一部分(「十円参り」の冒頭部分)だけなのですが、コミック版で楽しむことができますよ。

コミカライズを担当されたのは『文豪ストレイドッグス』の朝霧カフカさん&春河35さん

(ちなみに本書の解説も朝霧カフカさんです)

興味がある方はぜひこちらもチェックしてみてください!

本の感想

前回読んだ民俗学ミステリに続き、意図せず”怪異”繋がりとなった本書。

 

最近やたら怪談や都市伝説に縁があるようです。

 

個人的には以前読んだ『ふちなしのかがみ』の方がホラー色が強くて怖かったような気がします。

 

こちらも足元や背筋がゾワゾワしますが、読み終えるとスッと消えてゆく不思議な読み心地。

 

震えるほどの恐怖や明確な結末を求める方には物足りないかもしれませんが、「怖い話が苦手」な方でも楽しめる作品だと思います。

 

特に最終話の『七つのカップ』は、怖いというより心温まるホラー。

 

幽霊が出ると言われている横断歩道脇に、娘を亡くした母親が謎のカップを並べて立ち続けるという物語です。

 

この話では”幽霊”が「誰かの家族」という視点で描かれていて、思わずハッとしました。

 

<死者=幽霊=怖いもの>という認識しかありませんでしたが、大切な誰かを亡くした人にとって、死者は決して恐怖の対象ではなく、懐かしく愛おしい存在なのだと。

 

エンタメとして楽しめるホラーや怪談がある一方で、こんな側面もあるのだということを気づかせてくれた、とても優しい物語でした。

 

いろんな味わい方ができる珠玉の怪談集を、ぜひお楽しみください。

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この本の総評

読みやすさ
(5.0)
ホラー
(4.0)
雰囲気
(4.0)
読後感
(4.0)
総合評価
(4.0)

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