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こんにちは、ぽっぽです。
今日の一冊はこちら↓
『無貌の神』恒川 光太郎(著)
変貌自在な恒川ワールドの魅力をぎゅっと凝縮したような一冊。
顔のない神、青天狗の仮面、七十七人斬りの少女・・・
それぞれテイストの違う全6編の物語たちが、読者を異世界へと誘います!
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本の概要(あらすじ)
「顔のない神は、この見捨てられた世界の中心だった」
世界から見捨てられたような場所にある、深い森に抱かれた小さな集落。
ここには目的を持たず、ただひっそりと暮らす住人と、顔のない神がいた。
顔のない神は傷を癒す力を持ち、時に人間を癒すが、時に人を喰った。
神の屍の誘惑に負けた私は、この土地に永遠に囚われてしまい・・・。(表題作)
変幻自在、全六作のダークファンタジー!
3つの特徴
6つの物語
本作は6つの物語を収録した短編小説です。
- 『無貌の神』
- 『青天狗の乱』
- 『死神と旅する女』
- 『十二月の悪魔』
- 『廃墟団地の風人』
- 『カイムルとラートリー』
表題作である『無貌の神』は、現世から離れた集落に鎮座する顔のない神が、人を癒やしたり喰らったりするという物語。
一転して二話目の『青天狗の乱』は少し珍しい時代小説風で、舞台は江戸時代の流人島。
続く三話目は『死神と旅する女』は、死神に七十七人斬りを命じられた十二歳の少女の物語。
四・五・六話目もそれぞれに異なる異界を描いた物語です。
変貌自在な作風
読み始めたら止まらなくなる疾走感は全話に共通していますが、内容に関してはそれぞれ全く違います。
時や場所を超え、様々な異界を描いた物語たちは、まさに変貌自在。
全体的に『夜市』や『風の古道』を彷彿とさせ、大人向けの童話、あるいは怪談話のような雰囲気が漂っています。
中でも印象に残っているのは表題作と最終話。
特に最終話『カイムルとラートリー』は他の物語とは少し毛色が異なり、外国の御伽噺のような、どこか神秘的な空気感です。
人語を話す<虎>のカイムルが可愛くてたまらん。
「ぼくはかいむるです」
「かいむるはにんげんはくわない」
切ないけれど温かくて爽やかな幕引きも素晴らしかったです。
残酷で優しい
本作は人間の残酷な部分を織り交ぜながらも、どこか優しさや温かみを感じる物語が多かったです。
特にじんわりときたのは、「死神と旅する少女」「廃墟団地の風人」「カイムルとラートリー」。
「死神と旅する少女」では、理由も明かさず拉致した少女に殺人を命じる死神はただただ残酷だと思いましたが、実はそこには隠された真意と優しさがあって。
「廃墟団地の風人」では、たった一度の<人生の選択>を、人間の友達を救うために使った風人に感動し。
「カイムルとラートリー」では、人間の言葉を話せる<虎>と少女の絆、そして切なく温かいラストに泣かされました。
全ての物語がハッピーエンドというわけではなく、むしろ見方によってはバットエンドだったりもするのに、こんなにも読後感が良いのはさすが恒川さん。
それぞれに違った残酷さや温かさを感じる物語たちなので、ぜひ読んでみてください。
本の感想
恒川光太郎さん初心者の方にもおすすめしたい、恒川ワールドの魅力が凝縮された一冊。
本作は連作ではなく個別の短編小説で、生と死をいろんな作風で描いた物語たちです。
現代物と時代物、和と洋と、それぞれに舞台や背景が異なるので、次はどんな物語かな?とワクワクしながら読み進められます。
説明的すぎないサラッとした文章なのに風景がはっきりと目に浮かんで、6つの異世界を堪能することができました。
本作はじんわりと心温まるような物語もいくつかあり、特に最終話は一押しです。
短編なのでひとつひとつの物語は短いですが、とても満足度の高い作品。
読後感もとても良いので、ぜひ読んでみてください!
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印象に残った言葉(名言)
「時間は、私を癒しはしなかった。ただ、胸の内の虚無が広がっただけだった」
「理不尽なことでもな、長く従っていると、それが当たり前になって、従わんとならんような気がしてくるもんなんだろうな」
「ちょうど画家が絵を描くようにな。運命に注文された<世界>という絵を作っておる」
「理由もなく殺してもいい相手なんか、そもそもこの世界にいるはずがないではないか」
「これからさらに変わっていくのでしょう。人間って変わり続けるものだから」
「後悔や、失敗の過去であったとしても、それをなくせば今のお主は存在すらできんのだ」
この本の総評
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