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こんにちは、ぽっぽです。
今日の一冊はこちら↓
『恋愛中毒』 山本文緒(著)
私がはじめて読んだ山本文緒さんの小説です。
恋愛系の小説は苦手なのですが、私が想像する恋愛小説とはまるで違うものでした。
甘々系の恋愛小説が苦手な方はぜひ、こちらを読んでみてください。
甘々どころか、恐怖すら感じるかもしれません。
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本の概要(あらすじ)
「どうか、どうか、私。これから先の人生、他人を愛しすぎないように」
翻訳家と弁当屋のアルバイトを掛け持ちする、水無月。三十路過ぎ。
数年前に離婚をし、今はひとり暮らし。
ある日、アルバイト先の弁当屋に小説家の創路が訪れる。
昔から創路の大ファンだった水無月。
強引でわがままで女好き。そんな創路との関係を持つのに時間はかからなかった。
地味で従順な女性にみえた水無月だったが、創路への想いが強くなるほどに、その狂気じみた愛は暴走していき・・・
3つの特徴
巧みな物語の構成
物語の最初の主人公は、小さな編集プロダクションで働く井口という男性です。
彼の勤める会社には、事務員の水無月という女性がいました。
地味なのに独特の存在感がある水無月を井口は苦手としている反面、謎の多い彼女に興味を持ちます。
会社にまで押しかけてきた井口の元恋人(ストーカー)を水無月が追い払ったことをきっかけに、ふたりで話す機会を得た井口。
水無月の口から語られた過去とはーー?
ここまででいったん現在の話は終わります。
そしてここからはじまるのが、水無月の過去の話。『恋愛中毒』のメインの部分です。
夫の話、家族の話、創路の話、水無月の秘密・・・
衝撃のラストで読者を震撼させたあと、エピローグで物語はまた最初の場面に戻ります。
伏線があり、驚愕の過去があり、衝撃の展開があり。
巧みな構成で読者をずるずると引きずりこんでいきます。
恋愛小説でありながらも、ミステリーやサスペンス的な要素も感じられる作品でした。
夫への執着
創路との話がメインと思いきや、夫との話も重要な要素となっています。
夫の藤谷は、大学時代の同級生。
当時、ある同級生に対してストーカー行為をしていた水無月を止めてくれたのが、彼でした。
私は夫によって、はじめて救われた。救われる、ということがどういうことかを知った。敵だらけだった世界が違って見えた。あんな安堵が人生に隠されていたなんて知らなかった。奇跡だと思った。
他人も自分も好きになれなかった彼女が、生まれてはじめて愛した他人。
夫は何の特徴も才能もなく平凡で子どもっぽかったが、それでも彼女は夫を愛し、彼と過ごす日々を幸せだと感じていました。
けれど、あっけなく失ってしまった幸せな日常。
取り返しのつかないことをしたという実感が湧いてくると、私は号泣した。それは罪悪感ではなく、これでもう二度と夫と以前のようには暮らせないだろうと分かったからだった。
離婚してからも、たびたび元夫に無言電話をかけ続ける水無月。
従順な女性から狂気の恋愛中毒者へ
夫と離婚し、もう二度と誰も愛さないようにと決意していた水無月。
どうか、どうか、私。これから先の人生、他人を愛しすぎないように。
私は好きな人の手を強く握りすぎる。相手が痛がっていることにすら気づかない。だからもう二度と誰の手も握らないように。
私が私を裏切ることがないように。他人を愛するぐらいなら、自分自身を愛するように。
そう決めていたはずの水無月でしたが、創路と出会い、恋愛から依存、そして狂気へとむかってしまいます。
わがままで横暴な創路に対して、従順で献身的に尽くす水無月。
しかし、彼女の行動には、創路を自分だけのものにするという恐ろしい意図があったのです。
私がしてきた努力は何だったのだろう。先生の言うことを何でも聞いてきたのは先生を甘やかしたかったからだ。甘やかして甘やかして、私がいなければ何もできない男に先生をしたかったからだ。
創路の愛人たちをしたたかに追い払い、本妻までも離脱した今、けれど創路は水無月から離れていこうとしている。
本の感想
今回この小説を読んだのは2回目なのですが、きっとまたそのうち読みたくなる気がします。
主人公に少しでも共感できるかできないかで、好みが別れる作品だと思いました。
共感できたらできたで、そんな自分にゾッとしてしまうかもしれませんが。
この作品に描かれていることは、実際にあってもおかしくない(というか実際にある)ことだと思います。
それが余計に恐さを感じさせますね。
でもきっとまた読んでしまうんだろうなぁ。
※この作品には中毒性があるのでご注意を。
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山本文緒さんの他の作品
【No.19】母娘の闇と隠された秘密とは?『群青の夜の羽毛布』 山本文緒(著) 【No.61】美しければしあわせになれる?ほんとうの美しさとは?『きっと君は泣く』 山本文緒 (著) 【No.121】31歳、31通りの人生の“最優先事項”を切りとった、珠玉の短編小説集『ファースト・プライオリティー』山本文緒(著) 【No.139】日常に潜むささやかな「罪」を描いた10の短編小説集『ブラック・ティー 』山本文緒(著) 【No.143】心と体の不調に苦しみながらも切実に生きる、10人の女性の物語『シュガーレス・ラヴ』山本文緒(著)印象に残った言葉(名言)
「いい子なふりしておいて、あとで本当は嫌だったなんていうのは逆恨みだよ、逆恨み。子供だからって何でも許されると思うなよ」
「逆恨みだの被害者意識だのという言葉が頭の中でぐるぐるまわった。指摘されてみて、私は改めて自分が”ひどいめにあわされてきた”と強く思っていたことに気がついた。そうだ、私は親からも夫からもひどいめにあわされたと思っていた」
「愛しているから期待するのか。愛しているからこそ期待しないのか。どちらも正しいことのように思えたし、どちらも間違っているようにも思えた」
「過去に”もしも”を持ち込むな」
「私は助けられた。私は拾われたのだ。だから飼い主は藤谷だった。この人は拾った生き物を捨てる人じゃないと私は確信していた」
この本の総評
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