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【No.212】密室殺人事件の謎に挑む本格理系ミステリー!『すべてがFになる』森博嗣 (著)

こんにちは、ぽっぽです。

今日の一冊はこちら↓

『すべてがFになる』森博嗣(著)

“森博嗣さんの小説=難解そう”という勝手なイメージから読むのを躊躇してきた作品。

予想以上に面白くて、もっと早く読めばよかった!とめちゃめちゃ後悔しました。

これぞ理系!という内容なので好みは分かれると思いますが、個人的にはとても好きです。

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本の概要(あらすじ)

「すべてがFになる」

 

世界が認める天才工学博士・真賀田四季。

 

彼女に一目会うため、孤島の研究所に訪れたN大助教授・犀川と学生の萌絵。

 

しかし彼女の部屋から現れたのは、両手両足を切断された本人の死体だったーー。

 

完全密室の状態で、彼女はどうやって殺されたのか?犯人は誰なのか?

 

不可思議な密室殺人事件に挑む、究極の理系ミステリー!

3つの特徴

衝撃のデビュー作

その名を知らない人はおそらくいないであろう、森博嗣さんによる衝撃的なデビュー作。

第一回メフェイスト賞も受賞している本書ですが、未読だったため読んでみました。

この物語の探偵役は、N大助教授の犀川創平(さいかわ そうへい)。

犀川に好意を寄せるお嬢様学生・西之園萌絵(にしのその もえ)は、さしずめワトソン役といったところでしょうか。

萌絵のコネで天才博士・真賀田四季(まがた しき)が隔離されている研究所に訪れた二人は、そこで衝撃的な出来事に遭遇します。

なんとウエディングドレスを着せられ、手足を切断された博士の死体がロボットに乗せられて部屋から出てきたのです。

まるでホラーのようなセンセーショナルな場面からスタートした密室殺人事件。

しかも事件はこれだけで終わらず、第二・第三の事件と続いていきます。

エンターテインメントとしても読み応え抜群!

理系ミステリー

「なぜ」ではなく「どうやって」というロジックの部分に焦点を当てているのが特徴的な本書。

探偵役の犀川が、そもそも「なぜ」の部分にはあまり興味がないんですよね。

そのため“納得できる理由”が欲しい方には少し物足りないかもしれません。

(そもそも犯人の動機を常人が理解しようとすることに無理がある気がしますが。)

動機面については別シリーズでわかることもあるかもしれませんが、少なくとも本書だけでは疑問が多いところ。

90年代に描かれたものなので古い部分もあるのかもしれませんが、当時はおそらく画期的な内容だったのではないでしょうか。

「VR(バーチャルリアリティ)」まで描かれていたのにはさすがに驚かされました。

ちなみに、理系ミステリーというだけあって専門用語はそれなりに出てきます。

プログラミング系の知識が少しはあった方が抵抗なく読めるかなと。

私は最近この辺の知識を齧ったばかりだったのですが、この時ほど勉強しておいてよかったと思ったことはありません笑。

とはいえ理系の知識がなくとも楽しめると思うので、難しい部分はある程度流すつもりで読んでみても良いのではないでしょうか。

私のように難しそうだからと躊躇していた方もぜひ手に取っていただきたいです。

専門的な話がちんぷんかんぷんでも、天才たちの会話や独特な思考、話の展開など、他に魅力的な要素がたくさんあるので。

特に真賀田博士の存在感は他者を圧倒していますね。

キャラクターとして好きなのか嫌いなのかは自分でもよくわかりませんが、単純に人として興味があるというか。

真賀田博士と犀川の二人についてはもっと深く知りたくなりました。

真賀田博士の謎に迫る四部作「四季シリーズ」も気になります!

“F”の意味

すでに本書を読んだことがある方も多いと思います。

あるいはドラマやアニメを観たことがあるという方も。

未読の方もいることを考慮してネタバレは避けますが、みなさんは「F」が何を指すのか当てられましたか?

私はいくつか候補を考えていたのですが、全部ハズレ……。

真賀田博士と萌絵の会話にも登場した「7は孤独」「BとDも孤独」の意味について、もっとしっかり考えておくべきでした。

気づけなかったのは少し悔しいですが、「すべてがFになる」爽快感を味わえたのでよしとします笑。

納得感のある、なかなか洒落たタイトルだなと思いました。

犯人に関しては色々考えて良い線までいったのですが、真実にはあと一歩届かず。

「F」の意味もトリックも犯人も、全てを完璧に見破れた方ははたしているのでしょうか?

本の感想

萌絵と真賀田博士の意図が不明な会話から始まる序盤に「最後まで読めるかな……?」と怖気付きましたが、すぐにそんな不安はなくなり。

 

意外と読みやすくて、多少立ち止まる部分はありつつもサクサク読んでしまいました。

 

まさかこんなに森博嗣さんの作品と相性が良いとは驚きです!

 

全体的に無機質な感じなので感情移入して読むタイプではありませんが、個人的にはこういう雰囲気も好き。

 

少し硬さを感じる掴みどころのない文章が独特で、どこか得体の知れない不気味さが癖になりました。

 

掴みどころがないといえば、主要な登場人物たちにも言えますね。

 

真賀田博士の思考は理解はできませんでしたが、善悪を抜きにしてとても興味深いなと思いました。

 

彼女が犀川を特別視していたように、私も犀川がどういう人間なのかとても気になります。

 

犯人に関しては萌絵と同じところまではたどり着いたのですが、予想をさらに上回る展開で驚き。

 

今後は犀川と萌絵が再び登場するS&Mシリーズも読みたいし、真賀田博士の四季シリーズも絶対に読みたいところ。

 

時間がいくらあっても足りません……。

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印象に残った言葉(名言)

「自然を見て美しいなと思うこと自体が、不自然なんだよね。汚れた生活をしている証拠だ。窓のないところで、自然を遮断して生きていけるというのは、それだけ、自分の中に美しいものがあるということだろう?つまらない仕事や汚れた生活をしているから、自然、自然って、ご褒美みたいなものが欲しくなるんだ」

 

「我々は、そもそも道具を使う生物なんだ。戻ることはできない。こういうことに対して、寂しいとか、虚しい、なんて言葉を使って非難する連中こそ、人間性を見失っている」

 

「僕ら研究者は、何も生産していない、無責任さだけが取り柄だからね。でも、百年、二百年さきのことを考えられるのは、僕らだけなんだよ」

 

「どこにいるのかは問題ではありません。会いたいか、会いたくないか、それが距離を決めるのよ」

 

「思い出は全部記憶しているけどね、記憶は全部は思い出せないんだ」

 

「Time is moneyなんて言葉があるが、それは、時間を甘く見た言い方である。金よりも時間の方が何千倍も貴重だし、時間の価値は、つまり生命に限りなく等しいのである」

 

「真実に気がつけば、誰でも自信家になれます。自信なんて、小心者のポケットみたいなものです」

 

「死を恐れている人はいません。死にいたる生を恐れているのよ」

 

「自分の人生を他人に干渉してもらいたい、それが、愛されたい、という言葉の意味ではありませんか?」

この本の総評

読みやすさ
(4.0)
雰囲気
(5.0)
ミステリー
(5.0)
読後感
(4.0)
総合評価
(5.0)

 

 

 

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