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衝撃の真相に心震える社会派ミステリ『震える天秤』染井為人(著)

こんにちは、ぽっぽです。

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『震える天秤』染井為人(著)

デビュー作『悪い夏』で横溝正史ミステリ大賞の優秀賞を受賞した著者による、社会派ミステリ。

ミステリとしての驚きや爽快感があるわけではありませんが、人間の思いの強さに震える作品です。

ぜひ最後まで読んでみて、著者からの問いかけに自分なりの答えを出してみてください。

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本の概要(あらすじ)

「この村は何かがおかしい。みんな何かを隠している」

福井県で起きた、とある交通事故。

アクセルとブレーキを踏み間違えた老人の車がコンビニエンスストアに突っ込み、店長を轢き殺したのだ。

認知症を患っていた老人が若者を死なせてしまった、痛ましい事故。

フリージャーナリストの俊藤律は、「高齢者の運転問題」をテーマにした記事を書くため、この事故の取材をすることになった。

しかし、取材を重ねるにつれて謎が深まっていく事故の真相。

はたして今回の事故は、本当に高齢者による運転事故だったのだろうか……?

こんな人におすすめ

本書をおすすめしたいのはこんな人↓

  • 社会派ミステリが好きな人
  • 高齢者の運転事故に関心がある人
  • 衝撃の真相に震えたい人

本の感想

「高齢者の運転問題」をテーマにした社会派ミステリということですが、意外と主軸はそこではなかったのかなと言う印象です。

もちろんその点についても触れられていますが、焦点を当てているのは、決して外から見ることはできない“人間の内面”の部分なのかなと。

様々な境遇の人たちが抱える迷いや心の闇。

それを丁寧に描き出しているからこそ、震えるほどの結末に繋がっているのだと思います。

(ネタバレはしませんが、内容には触れるので未読の方はご注意を)

高齢ドライバーによる悲惨な事故

主人公は、フリージャーナリストの俊藤律(しゅんどう りつ)。

彼は週刊誌の編集長からの依頼で、福井県で起きたとある事故について取材をすることになります。

被害者はコンビニエンスストアの店長・石橋昇流(いしばし のぼる)

加害者は八十六歳の老人・落井正三(おちい しょうぞう)。

老人が運転中する車がコンビニエンスストアに突っ込み、若者を死亡させるという痛ましい事故でした。

早速現地に向かった主人公は、被害者の父親や同僚などの関係者たちへ取材を重ねていきます。

その結果、どうやら被害者はかなりのク…..いえ、あまり好ましくない人柄であることが明らかになってゆき。

その他にも、コンビニ本社との補償問題や、遺族の目に余る態度、被害者の過去など、気になることが多すぎる今回の事故。

「高齢者の運転問題」をテーマに取材を進めていた主人公でしたが、調べるほどにある疑念が頭から離れなくなります。

これは、本当にただの事故だったのだろうか?

奇妙な村と閉鎖的な人々

気になることは徹底的に調べ上げないと気が済まない律は、続いて加害者の落井正三という老人についても取材を始めることに。

落井が半年ほど前に山崩れ災害があった村落の住人であることを掴んだ彼は、早速その村を取材に訪れました。

そこで彼は役場の職員や村長らに取材をしますが、今ひとつ釈然としない事故の経緯。

彼らは落井が認知症であったことを殊更に強調し、律が疑問を口にすると、異様なまでに不快感を示すのです。

話を聞くほどに濃くなってゆく「落井は本当に認知症なのか?」という疑惑。

仮に落井が認知症ではなかったとすると、今回の事故の大前提が崩れることになります。

村長らの態度に不信感を抱いた律は他の人にも取材をしようと試みますが、箝口令が敷かれているのか、固く口を閉ざす住人たち。

この村の奇妙な風習や閉鎖的な暮らしは、はたして今回の事故に関係しているのでしょうか?

正義と良心

取材の過程で何度も疎ましがられ、罵声を浴びせられ、あるいはもうやめてくれと懇願され。

それでも決して手を引こうとはしない主人公。

彼を突き動かしているものは、一体何なのでしょうか。

そこには、彼が抱え続けている過去の「後悔」が、たびたび見え隠れします。

持ち前の探究心と執念深さから、過去にとある人物の裏の顔を暴いた主人公。

しかし、そのことがきっかけでその後予想だにしない非劇が起きてしまったのです。

原因は自分にあるのではないかと後悔し続けてきた彼の胸中には、もう二度と同じ過ちは繰り返さないと言う強い決意があったのでしょう。

そんな執念を燃やした取材の果てに掴んだ、事故の真相。

しかし、真相を知った彼に突きつけられたのは、究極の難題でした。

ジャーナリストとしての“正義”自分の“良心”を秤にかけた、震える天秤。

最後に彼は、どちらに天秤を傾けるのでしょうか?

まとめ

ラストで描かれている律の選択には、正直モヤモヤした方もいると思います。

賛否両論がある結末だということは否定できません。

ただ、本書を読み終えた人は、きっと自分にこう問いかけたはずです。

「もし自分が律の立場だったら、どちらを選ぶ?」と。

彼と同じ選択をする人もいれば、真逆の選択をする人もいるでしょう。

律が最後に難題を突きつけられたように、読者である私たちもまた「あなたの天秤はどちらに傾く?」と著者に問いかけられているのだと思いました。

私は正直、この問いに自分なりの答えをまだ出せそうにありません。

あなたはどちらに天秤を傾けるのが正しいと思いますか?

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この本の総評

読みやすさ
(5.0)
ミステリー
(3.0)
個性
(4.0)
読後感
(4.0)
総合評価
(4.0)

 

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