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こんにちは、ぽっぽです。
今日の一冊はこちら↓
『ジョーカー・ゲーム』柳広司(著)
吉川英治文学新人賞、推理作家協会賞を受賞し、アニメ化・映画化もされている大人気作。
派手なアクションてんこ盛りのスパイ作品のイメージを覆す、クールでスタイリッシュなスパイ・ミステリー!
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本の概要(あらすじ)
「スパイとは、見えない存在だ」
昭和十二年秋。
帝国陸軍内に極秘に設立された、秘密諜報員養成所。通称“D機関”。
発案者である結城中佐のもと、スパイになるための訓練を受ける十二人の若き精鋭たち。
彼らの行動原理は軍の信条とは真逆の、「死ぬな、殺すな、とらわれるな」。
東京、横浜、上海、ロンドン。それぞれの場所で繰り広げられる、命がけのゲーム。
異能のスパイたちによる、究極の騙し合い!
3つの特徴
5つの物語
結城中佐の発案により帝国陸軍内に設立された、スパイ養成学校<D機関>。
陸軍内からの猛反発を押し切り、ひとりでD機関を作り上げた結城中佐は、自身がかつて優秀なスパイであったともっぱらの噂だ。
細身の体に不自由な左足、そして右手の白い革手袋。
外見的な特徴がはっきりしている、この作品唯一の固定キャラクターです。
本作はD機関を軸に繋がる連作短編小説ですが、結城中佐だけはすべての物語に登場します。
<第一話:ジョーカー・ゲーム >
主人公は、陸軍参謀本部の佐久間中尉。
D機関の監視役として派遣された彼の視点で、外部から見たD機関と学生たちの驚くべき実態が語られます。
<第二話:幽霊 ゴースト>
爆弾テロ計画への容疑を確定させるため、英国総領事公邸に送り込まれたスパイ視点の物語。
スパイの基本的な技術の紹介も兼ね備えています。
<第三話:ロビンソン>
ロンドンを舞台に繰り広げられる、日本スパイVS英国スパイの物語。
一番遊び心が効いて、『ロビンソン・クルーソー』に隠されたヒントや、スパイ同士の裏の読み合いが見どころ。
<第四話:魔都>
アヘン渦巻く上海が舞台。外部の人間視点で、客観的にD機関のスパイの凄さを実感できる物語。
どの人物がスパイなのか?を推測しながら読んでみてください。
<第五話:XX ダブル・クロス>
D機関第一期生・飛崎に、卒業試験として<殺害されたドイツ人二重スパイの死の真相>を突き止めさせるという物語。
結城中佐の人間味を、ほんの少し垣間見ることができます。
第一話はD機関のお披露目的な要素が大きいですが、第二話以降の物語は、D機関の第一期生たちが実際にスパイとして任務にあたる物語です。
私がいちばん好きなのは、遊び心が感じられる第三話のロビンソン。
スパイの本質
皆さんは“スパイ”にどんなイメージを持っていますか?
数々のスパイ作品から一般に流布しているのは、“派手” “華やか” なイメージではないでしょうか?
もしそんなスパイ像を思い浮かべていた人は、この作品でイメージが覆るかもしれません。
本作で描かれているスパイの本質は、<見えないこと>。
身分を隠し、たったひとりで敵国に潜入するスパイは、その正体を決して周囲に知られてはならない。
“目立たないこと”こそが、スパイである絶対条件なのです。
敵を殺すこと、及び自決することは、スパイにとって最悪の選択。
D機関で叩き込まれる<死ぬな、殺すな>という戒律は、ここに繋がります。
平時に人が死ねば必ず周囲の注目を集め、その国の警察が動き出し、正体が暴かれてしまう。
“見えない存在”でなければならないスパイにとって、これほど無意味で馬鹿げた行為はないわけです。
目立たないことが絶対条件である以上、本作で登場するスパイたちはみな、地味で無個性で影のような存在。
派手に動き回るわけでもなく、ただひたすらに淡々とミッションをこなしていきます。
人間性の排除
D機関で行われる訓練は、頭脳と身体能力を極限まで駆使することを要求される、厳しい内容です。
それを鼻歌交じりに易々とこなしてしまう学生たちは、もはや化け物。
名誉のためでも、愛国心のためでも、誰かのためでもない。
一体、彼らを動かしているものは何なのか?
それは、“自分にはこの程度のことはできるはずだ。自分にはこの程度のことは当然できなくてはならない。”
という恐るべき自負心だけなのです。
その命題を自分自身に証明するためだけに、どんな任務でも顔色一つ変えずにやってのけるD機関の学生たち。
異能の彼らにとっては、命懸けの任務でさえ<ちょっと面白いゲーム>に過ぎないのです。
常に偽名で互いを呼び合い、任務によって仮面を付け替える彼らからは、およそ人間味など感じられず。
徹底的に人間性を排除してある点が特徴でもありますが、キャラクターに個性や魅力を感じにくいという難点でもあるかもしれませんね。
客観的に、淡々と読むのが好きな方には向いている作品だと思います。
本の感想
スパイものの映画はよく観ますが、小説ではこの作品がはじめて。
私の中でスパイといえば、「ミッション:インポッシブル」のイーサン・ハントや「007」のジェームズ・ボンド。
常人離れした頭脳と身体能力を駆使して、アクションを交えながら派手にミッションを遂行していくイメージ。
ところがこの作品で描かれているスパイは、そんなイメージとは正反対。
<死ぬな、殺すな>という掟のもと、“見えない存在”として個性を排除し、淡々と任務を遂行する。
ゾッとするほど人間性を排除したD機関のスパイたちは、最初から最後まで掴み所がなかったです。
こんなにも登場人物の想像がつかない作品は初めてだったので、なんだか新鮮でした。
スパイ・ミステリーときくと、なんだか複雑で難しそうな感じがしますが、ストーリーとしてはとてもシンプル。
スパイの活躍が魅力的に描かれているというよりは、スパイの本質やあり方を軸に描かれている作品。
エンターテインメント性には欠けますが、よりリアルを意識したスパイものに触れたい方にはおすすめです。
印象に残った言葉(名言)
「スパイがその存在を知られるのは、任務に失敗した時ーー即ち敵に発見された時だけだ」
「金、名誉、国家への忠誠心、あるいは人の死さえも、すべては虚構だ」
「諸君が任務を遂行するために唯一必要なものは、常に変化し続ける多様な状況の中でとっさに判断を下す能力ーー即ち、その場その場で自分の頭で考えることだけだ」
「人間は誰しも突然行為に及ぶのではない。過去の経験の積み重ねが、性格を作り、行動へと駆り立てる」
「“取り込み”の基本は、飴と鞭。相手の弱点をつかみ、それと引き換えにささいなことを要求する」
「潜入スパイは正体を暴かれた時点で、その国における任務の失敗を意味している」
「死ぬこと、それ自体は少しも難しいことではない。死ぬことなど誰にでも出来る。問題は、死んだからといって失敗の責任を負うことにならなないということだ」
「人が感じることのできる苦痛には限界がある。苦痛がその限界を超えれば、意識を失い、感覚が閉ざされる。人の心を叩き潰すのは、苦痛そのものではない。苦痛への恐怖心、内なる想像力だ。苦痛への過大な恐怖心さえ克服すれば、拷問自体はなんら恐れるものではない」
「いかなるものにも、決してとらわれるな。”とらわれないこと”こそが、スパイが生き延びるために最も有効な、そして唯一の手段だ」
「何かにとらわれて生きることは容易だ。だが、それは自分の目で世界を見る責任を放棄することだ。自分自身であることを放棄することだ」
この本の総評
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