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こんにちは、ぽっぽです。
236冊目はこちら↓
『おいしいアンソロジーおやつ ー甘いもので、ひとやすみ』阿川佐和子他(著)
「おやつ」にまつまるエッセイを詰め込んだ、43篇のアンソロジー。
名だたる作家たちが、各々のおやつに対する偏愛っぷりや思い出を印象深く綴っています。
ちょっとひとやすみしたいときに、好きなおやつを用意して読みたい一冊。
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本の概要(あらすじ)
「今回はドーナッツの話です。ですから、今まじめにダイエットをしているという人はたぶん読まない方がいいとお思います」
ドーナッツの穴の秘密、高級チョコレートへの衝動と葛藤、母と伯母との“白玉ちゃんごっこ”。
静岡まで買いに行きたいようかん、列車と甘栗、おはぎの薄紙と戦地に向かう兄の後ろ姿ーー
読むと無性に食べたくなる、美味しいエッセイを詰め込んだおやつアンソロジー。
この本を推したい人
本書はこんな人たちに推したい本です↓
- 「おやつ」にまつわるエッセイを読みたい方
- 子どもの頃の思い出の「おやつ」がある方
- 甘いもので、ちょっとひとやすみしたい方
本の感想
43篇のアンソロジー
名だたる小説家をはじめ、脚本家、エッセイスト、イラストレーター、歌人、俳優など。
それぞれの時代を生きてきた彼らが語るのは、「おやつ」の思い出。
ドーナツ、チョコレート、キャラメル、ようかん、おはぎ、白玉、煎餅、金平糖……
読者の年代によっても共感するポイントが分かれそうな、多種多様のおやつが登場します。
43編も収録されているので、印象的なエッセイもあれば、読みにくい文体もあったりして。
まるでいろんなおやつの詰め合わせを、毎日ひとつずつ取りだして食べるような感覚で読みました。
もちろん好きなおやつが出てくる日もあれば、そうではない日もあり。
全部が全部これ好き!とはならないのですが、「今日はどんなおやつかな?」とワクワクしながら本を開く瞬間が楽しかったです。
大好きな江國香織さんの『静岡まで、ようかんを』をはじめ、共感がやまない角田光代さんの『チョコレート衝動』、そして巻頭を飾る村上春樹さんの『ドーナッツ』。
もともと好きな作家さんたちのエッセイは、言うまでもなく最高で。
甘いおやつと切ない風景の対比で特に印象に残っているのは、筒井ともみさんの『くすぐったい白玉』と、『孤独のグルメ』の原作者である久住昌之さんの『おはぎと兵隊』。
前者は純白の白玉にほんのりと暗い影が落ちるような記憶が切なく、後者は若い兵隊の後ろ姿と、花びらのようにひらひらと舞うおはぎの薄紙が印象的でした。
おやつにまつわる思い出は甘やかなだけでなく、人によって切ないエピソードからクスッと笑えるエピソードまでさまざまで。
特に大正〜昭和時代のおやつ事情はとても興味深く、この時代を知らない私にとっては、懐かしさよりも新鮮さの方が大きかったです。
亀田の柿の種はわさび味
本書を読んだ多くの人が、きっとそれぞれにとっての「おやつ」を思い浮かべていることでしょう。
かくいう私も例外ではなく、本書を読み始めてからずっと、脳裏にちらつく“お菓子”があるのだ。
私はいわゆる鍵っ子というやつで、家に帰ればおやつが用意されている、なんて経験はなく。
どうしてもお腹が空いたときに食べていたのは、「亀田の柿の種(わさび味)」。
大人の晩酌用に常備してあるそれを、ティッシュペーパーの上にざざっと乗せて、ちまちまと食べるのが私にとってのおやつだった。
チータラやさきいかなんかを失敬することもあったが、やはり一番よく食べていたのは柿の種(わさび味)だったように思う。
こうなってしまうと、もはやおやつではなくおつまみだ。
大人たちは「この子は将来呑べえになるぞ」と笑っていたが、なにも好んで食べていたわけではなく、当時の私にとってはあくまで空腹を満たす手段。
本当は私だってチョコレートやシュークリームが食べたかったし、手作りのクッキーやドーナツに憧れていた。
しかし、食べ慣れた味というのはおそろしいもので、私は今でもときどき柿の種を食べている。
(ちなみにお酒は飲まない大人になった)
今ではいろんな味の柿の種が売られているが、やっぱり私が手にとってしまうのは、かつて私の空腹を満たしてくれた「わさび味」なのだ。
「東京洋菓子倶楽部」のモンブラン
そんな子どもらしくないおやつの思い出しかない私だが、大人になってからふと思い出した「おやつ」がある。
子どもの頃に一度だけ食べたことがある、モンブランだ。
正直味は全然覚えていなかったのだが、印象的だったのはその見た目。
白い箱から出てきたのは、まるで花の蕾のようにコロンと可愛らしい形をしたモンブランだったのだ。
当時私が知っているモンブランは、線状にマロンペーストを絞り上げた”あの形”だけだったので、ユニークなその見た目に驚かされた記憶がある。
たった一度だけの思い出だが、「特別なおやつ」として私の心に刻まれていたののだろう。
東京で美味しいスイーツを探し求めていたとき、ふと脳裏をよぎったのはそのモンブランだった。
味も店の名前も全く覚えていないが、ちょっとした好奇心から、そのユニークな見た目だけを頼りに検索をかけてみる。
すると予想外なことに、それは老舗洋菓子店の看板メニューだったため、あっさり見つけ出すことができた。
そうなると居ても立っても居られなくなり、向かったのは日本橋浜町。
そう、私の思い出のモンブランは「東京洋菓子倶楽部」のものだったのだ。
昭和レトロな雰囲気が漂うこじんまりとした店内にすこし緊張しながらも、ショーケースの中を覗いてみる。
お目当てのモンブランと目があったとき、私の中に、なんとも言えない懐かしさが込み上げてくるのを感じた。
崩れないように大切に持ち帰り、そっと皿の上に乗せ、蕾の頂点をすくいとってみる。
白あんやホワイトチョコを練り上げた渋皮マロンペーストは、まるで和菓子のような味わいで。
中にたっぷりと詰められているのは、生クリームと自家製カスタードをブレンドしたオリジナルクリーム。
そして土台でこれらを支えているのは、メレンゲやスポンジ生地ではなく、ロールケーキだ。
シンプルなのに他にはない味わいで、濃厚なのに軽く、新鮮なのにどこか懐かしくて。
見た目の印象ばかりが強く残っていたが、私の思い出のモンブランは、とてもおいしいモンブランだった。
私の中にはピリリと辛いだけでなく、甘くで素敵なおやつの思い出もあったのだ。
これからは日本橋を訪れるたび、このモンブランを買って帰ろう。
そう決めた矢先に飛び込んできたのは、「東京洋菓子倶楽部」の破産と閉店のニュース。
私の唯一甘やかな「おやつ」の思い出は、こうしてほろ苦く幕を閉じたのであった。
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印象に残った言葉
「ダイエットなんて、そんなの明日からやればいいじゃないですか」
「罪悪感というのは、反対側から眺めてみると、じつに優美な誘惑剤でもあるのだ」
「プリン・ア・ラ・モードのかわいさは、ジオラマ感だと思っている」
「D-ポップは地獄行き」
「お菓子にかぎらず食物のいいところは音楽みたいなもので、食べればあとかたもなくなくなってしまうことかもしれないのだ」
「子供時代にどんなお八つを食べたか、それはその人間の精神と無縁ではないような気がする」
「冬といえばキャラメルである」
「一番好きなひとのことは誰にも言わないで、二番目ぐらいにすきなひとのことをあれこれ話題にするということがある。(中略)私の小さい時のきんとんに関する心の中の事件は、まるでそのような恋の心理にも似ていたようだ」
「まったく、お菓子に対する私の情熱ときたら、われながらときどき心配になるほどだ。食べたいと思ったら、どこまででも買いにいってしまう」
「遠ざかれば遠ざかるほど懐かしいのが故郷であり、老いれば老いたなりになつかしむのが、幼い舌に知った味ではなかろうか」
「白玉のいとしさはあの懐かしいような喉ごしの感触なのかもしれない」
「チョコレートには生活感がない。これがチョコレートの真髄なのです」
「おはぎの薄紙は、母の話を思い出すたび、ボクの胸にひらひらと舞う。そして、その向こうに、若い兵隊の後ろ姿が小さくなっていくのが見えるのだ」
「うん、たしかにうまくはない。うまいもんではない。が、食える!!」
「周囲の大人は「心の傷」がどうだとか心配せず、チョコレートで社会生活の洗礼を受けるなんて実にすてきなことだと、笑ってみせればいいのだ」
この本の総評
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