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【No.57】~生き物の声が聞こえるツマと、背中に鳥を背負ったムコの、明るく切ない物語〜 『きいろいゾウ』 西 加奈子(著)

こんにちは、ぽっぽです。

今日の一冊はこちら↓

『きいろいゾウ』西加奈子(著)

宮崎あおいさん×向井理さん主演で映画化もした小説です。

個性あふれる西加奈子さんらしさが詰まった一冊です。
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本の概要(あらすじ)

「おつきさまが、まるでたいようみたいに明るいね」

 

夫の名前は武辜歩(むこあゆむ)、妻の名前は妻利愛子(つまりあいこ)。

 

お互いを「ムコさん」「ツマ」と呼び合う夫婦が住むのは、海の近い自然豊かな田舎町。

 

売れない小説家のムコさんは、犬や虫や植物たちと話すことができるツマを、優しく見守っている。

 

仲睦まじいふたりだったが、ある冬の日、ムコはツマを置いて東京へと出かけてしまう。

 

背中に大きな鳥を背負っている、ムコさんの抱える秘密とは・・・?

3つの特徴

ふたりの出会い

ふたりの出会いは、当時ツマが働いていたお店。

その日は月がちょうどまん丸の日で、ツマは仕事中もぼんやりとしていました。そんなツマの様子をみたムコさんが、

「月にやられましたね」

と言ったのです。

「だってあんまりいっぱいで」

そう言ったツマにムコさんは、

「欠けていってるから、月。大丈夫ですよ」

そう言ってくれたのです。

他の人には意味がわからないような会話かもしれませんが、ツマはそれを聞いて、とても安心できたのです。

そんなツマの目線で語られる世界は少し不思議で、ムコさんの書く日記が現実の世界に戻してくれています。

それぞれの目線でみることができるので、ふたりの考えることや感じ方のちがいもわかります。

 

ユニークなあだ名

「ムコ」「ツマ」をはじめ、物語に登場する人や動物たちは、カタカナで呼ばれています。

野良犬の「カンユさん」、庭にやってくる鶏「コソク」、隣人の「アレチさんとセイカさん」、ゴールデンレトリーバーの「ユメ」こと「メガデス」・・・

もちろんそうではない人たちもいますが、ふたりにとって近しい存在にいるものたちは、親しみを込めてカタカナで呼んでいるような気がします。

虫も動物も植物も、あだ名で呼ばれていることで、ツマが彼らを対等な存在として認識していることが窺えます。

素直で子どもっぽくて、とても人間味あふれているツマ。

けれど、どこか神聖な存在として感じられるのは、彼女が生き物の声が聞こえたり、月の満ち欠けに支配されているからなのかもしれません。

自分が人と一緒じゃないことは分かってる。だって、庭の木や草や花の声を聞いたり、そうゆうのって普通じゃないに決まってる。私の頭は、どうかしてるんだ。それをムコさんに、分かってほしいのに。

 

ムコさんの秘密

穏やかでのんびりしているように見えるムコさんですが、実は今でもある過去に囚われています。

そしてもうひとつ、ムコさんの背中に描かれた色鮮やかな大きな鳥。

これがこの物語に隠された「謎」の部分でもあり、ふたりに与えられた試練でもあります。

東京から届いた一通の手紙が引き金となり、だんだんと様子がおかしくなっていくムコさん。

そしてそれをどうすることもできないツマ。

ムコさんには、忘れられない恋人がいるんだ。

冬のある日、ムコさんはツマを置いて東京へと向かいます。

日記にツマへの手紙を残して。

ツマへ

日記をおいていきます。

僕らはきっと、この日記でつながっていて、そして同時に、この日記のせいで尋常ではない生活を始めたようなものだから。

ムコさんはいったいどこへ向かったのか?

背中の鳥に込められた、ムコさんの想いとはーー?

本の感想

読者をぐっと惹きつける演出や、ユニークな世界観など、西さんっぽいなぁと思いながら読みました。

 

自然豊かな田舎町で、ほのぼのと暮らすツマとムコ。愛すべきご近所さんや虫や動物たち。

 

にぎやかで楽しい生活の陰で時折感じられる、胸を刺す切なさ。

 

若い夫婦がある試練を乗り越えていくさまを、読者はハラハラしながら見守ることになります。

 

目次の後に載っている、必要なものリスト。

 

「朝食のトマトと岩塩」「たくさんのバスタオル」「欠け始めた月」・・・

 

これが最後のページにも同じ内容で羅列してあり、最後に大きな文字で付け加えられたのが「ぼくのつま」

 

それまでの不安や切なさが、一気に感動へと変わる瞬間です。

 

映画は観たけれど、原作はまだ・・・という方は、ぜひ読んでみてくださいね。

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印象に残った言葉(名言)

「恥ずかしいことって、かっこ悪いこととは全然違うんだね」

 

「蓋をしてきた。いろんな感情に。あんまりにも太陽が明るいから、緑がくっきりとしているから、月の光が優しいから」

 

「知らなかった、ここは、とても残酷な場所だったんだ」

 

「大切なものを、一度もきちんとした目で見たことがなかった、そう思った。そして悲しくなった」

 

「ツマのそばにいる、きいろいゾウ。それは、僕でありたい。背中に鳥を背負った、それは僕でありたい」

この本の総評

読みやすさ
(4.0)
雰囲気
(3.0)
キャラクター
(4.0)
ゾウ
(4.0)
総合評価
(3.0)

 

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