恋愛

【No.15】恋でも愛でもない感情の行き着く先は?『愛がなんだ』角田光代(著)

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こんにちは、ぽっぽです。

今日の一冊はこちら↓

『愛がなんだ』 角田光代(著)

角田光代さんの小説はいくつか読んだことがありますが、恋愛色の強い作品ははじめて読みました。

2019年に映画化されていて、かなり話題になっていたようですね。

角田さんの描く女性は妙にリアルで生々しいなと改めて感じた作品です。

本の概要(あらすじ)

「私を捉えて離さないものは、たぶん恋ではない。きっと愛でもないのだろう。」

28歳のOLテルコは、出版社に勤めるひとつ年下の”田中守”こと”マモちゃん”に夢中だ。

仕事中だろうが、友達との約束があろうが、深夜だろうが。マモちゃんから連絡があれば一目散に飛んでいく。

付き合っているわけでもないのに。

マモちゃんは、テルコを好きではないのを知っているのに。

それでも、とまることを知らないテルコの想いは、どんどん強くなっていって・・・

3つの特徴

主人公のぞっとするほどの一途さ

マモちゃんと出会って恋に落ちてからは、テルコの生活は全てマモちゃん中心だ。他のことなんて心の底からどうでもいいと思えるほどに。

呼び出されれば仕事を放り出して退社し、仕事中でも電話がくれば平気でさぼる。

マモちゃんと出会う前は、会社の女性たちともそれなりに仲良くしていたが、そんな調子だから誰もテルコに寄りつかなくなった。

(あたりまえだ。そんな人が社内にいたら迷惑だし、平気で約束を反故にする人と仲良くなんてできない)

そんな序盤から強烈な印象を受けるテルコですが、決して恋に盲目になっているわけではなく、

”ちゃんと現実を理解している” のです。

自分が好かれていないことも、マモちゃんがいい男ではないことも、ちゃんと知っています。

全てをわかったうえでの想い。というのがまた、ぞっとするほどテルコの一途さを際立たせています。

「かっこよくないことを、自分勝手で子どもじみていて、かっこよくありたいと切望しそのようにふるまって、神経こまやかなふりをしてて、でも鈍感で無神経さ丸出しである、そういった全部を好きだと思ってしまったら、嫌いになるということなんて、たぶん永遠にない」

振り回す女と振り回される女

この小説に登場する女性は二通りで、「男を振り回す女」と「男に振り回される女」です。

テルコはいうまでもなく、後者。

そしてテルコの友達の葉子や、高校の同級生の山中吉乃、マモちゃんを通じて知り合ったすみれは、前者です。

彼女たちの振り回しっぷりもなかなかのもので、ここまで両極端の人間しか登場させないのもすごいなと、感心してしまいました。

癖のある人たちばかりですが、女性なら少しは共感できてしまう部分がどこかしらありそうです。

章ごとのユニークなタイトル

この小説は、章ごとに長めの文章でタイトルがつけられています。

「風が吹けば桶屋が儲かる、恋愛運が上昇すれば仕事運は下降する」

「山田テルコ二十八歳、自尊心というものを道端に投げ捨てて唾をかけてみる」

「好きになってごめんなさいと、あやまんなきゃいけないような気がするときもある」

最初はなんだこれ、という印象でしたが、どことなくテルコ独特のおもしろさが出ているように感じられ、次の章にはなんて書いてあるのかが、楽しみになっていきました。

本の感想

全面的に受け入れるのは難しいけど、全く共感できないわけではない。

角田さんはそんな女性を描くのが上手です。

テルコの一途な想いは、みていて痛々しいものではありますが、誰が何と言おうが決して最後までぶれないので、いっそ清々しさまで感じられます。

あくまでテルコはテルコのままで、最後まで突っ走らせる。

けれどそれが逆に、妙にリアルで他人ごととは思えない読者もいるのではないでしょうか。

終始客観的に読んでいられるか、テルコに共感して胸を痛めながら読むか、どちらかに分かれそうな作品でした。

印象に残った言葉(名言)

「私のなかに言いなりだのつけあがるだのという言葉は、存在しない。存在するのはただ、好きである、と、好きでない、ということのみだ」

 

「自分のことを「どうでもいい」と思っている人間を、好きになれるはずがない」

 

「三十歳が近くなって私しみじみ思うの。ファミレスでごはん食べてたらファミレスが似合う顔になるのよ。百円ショップで生活雑貨そろえたら百円ショップの顔になるの。」

 

「なんて阿呆な男なんだろう。自分がかっこいいから私に好かれているとでも思っているのだろうか」

 

「仕事に何も求めていないのに、仕事が私を救ってくれることがあるのだとふいに知る」

 

「私を捉えて離さないものは、たぶん恋ではない。きっと愛でもないのだろう。私の抱えている執着の正体が、いったいなんなのかわからない。けれどそんなことは、もうとっくにどうでもよくなっている」

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