※当サイトはアフィリエイト広告を利用しています
こんにちは、ぽっぽです。
今日の一冊はこちら↓
『太陽の塔』森見登美彦(著)
森見登美彦さんのデビュー作を今更ながら読んでみました。
というか、たまたま手に取ったのが本書でした。
まだまだ読んでいない作品がたくさんあるのですよ。
読み放題なら「Kindle Unlimited」
【“Kindle Unlimited”のおすすめポイント】
- 30日間の無料体験で気軽に始められる!
▶︎まずは無料でお試しができる - 月額980円で200万冊以上の本が読み放題!
▶︎いつでもキャンセル可能 - 好きな端末で本が読める!
▶︎Kindle、スマートフォン、ダブレット、PC等
文庫本はこちら⬇︎
電子書籍はこちら⬇︎
本の概要(あらすじ)
「何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。なぜなら、私が間違っているはずがないからだ」
私の大学生活を一言で表現すれば「華がなかった」という言葉に尽きるだろう。
あらゆる意味で華がなかったが、女性とは絶望的に縁がなかった。
しかし、そんな私にもとうとう”水尾さん”という恋人ができた。
彼女は知的で可愛く実に魅力的な人間なのだが、残念なことに一つ大きな問題を抱えている。
あろうことか、この私を袖にしたのだ!
傷心抱えた腐れ大学生がクリスマス目前の京都を駆け巡る、日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
3つの特徴
失恋男の物語
主人公は京大生(休学中の五回生)の「私」。
現在恋人はおらず、モテたいのに全くモテないむさ苦しい毎日を送っている。
しかしそんな彼にもかつて恋仲になった女性がたった一人いたのだ。
その名も水尾(みずお)さんと言う。
知的で可愛く、奇想天外で、支離滅裂で、猫そっくりで、やや眠りをむさぼり過ぎる。
そんな魅力的な彼女に袖にされてしまった「私」はその後どうしたのか。
もう一度彼女に振り向いてもらおうと自分磨きに励む……わけがない。
彼が始めたこと、それは「水尾さん研究」である!!
テーマは「彼女はなぜ私のような人間を拒否したのか」。
四六時中水尾さんにつきまとい(彼女に実害はないらしい)、完成したレポートはなんと二百四十枚。
驚きを通り越してもはや尊敬に値する、と言いたいところだが普通に気持ちが悪い。
本書はこんな彼の恐るべき行動を中心に、真冬の京都で起きるあんなことやこんなことを描いた作品である。
愉快なキャラクター
黒髪の乙女や毛深き狸など、著者の作品に登場するキャラクターたちは総じて愛らしい。
もちろん本書に登場する「腐れ大学生たち」も例外ではない。
ときどぎ本の中から男汁が溢れ出てくることは否めないが、慣れてくるとそれもまた愛おしいものである。
本書にも個性豊かなキャラクターたちが登場するが、一際異彩を放っているのが“夢をなくしちまった男、飾磨”だ。
飾磨には悪いが、「夢玉事件」のくだりには思わず笑ってしまった。
どこの誰とも分からぬ夢を掴まされ、四畳半に男二人で途方に暮れる姿は実に哀れで愉快である。
そうそう、水尾さんをめぐり主人公と敵対した恋敵・遠藤にも触れねばなるまい。
最初こそ犬猿の仲という感じであったが、徐々に距離が縮まっているようないないような。
実を言うと、私はこのふたりが最終的にくっつくのではないか?と半ば本気で思っていた。
三角関係というのは往々にしてそういうことがあるものだ。(たぶん)
もし彼らがこれを聞いたら、絶叫とともに京都の街を駆け回った挙句、真冬の鴨川に飛び込みそうではあるが。
切ないラスト
京都を舞台にした作品はどれも愉快に読んだ記憶しかなかったので油断していた。
まさかこんなにも切ない気持ちにさせられるとは……。不覚。
終盤の「ええじゃないか騒動」に飲み込まれて本筋を見失いかけたが、これは紛れもなく“失恋の物語”だ。
正直、本書の主人公は大変魅力的ではない。
序盤から元恋人にストーカーまがいの行為をしている時点でそれは明らかなのである。
しかもその他人から軽蔑される言動を、ヘンテコな妄想と詭弁で正当化しているところも厄介だ。
とても魅力的な紳士とは言えない主人公なのだが、なぜか彼に対して湧くのは嫌悪感ではなく“愛おしさ”。
くだらないことをいたって真面目に、そして全力で取り組む姿はもはや美点とも言ってよいのではないだろうか。
クリスマスを呪い、バレンタインを罵倒し、鴨川に等間隔に並ぶ男女を軽蔑してきた主人公。
そんな彼が失恋の海で溺れる姿はなんとも滑稽なのだが、同時にとても切なく哀れなのだ。
せめて私の頭の中だけでは、無事に水尾さんと復縁できた幸せな未来を描いてやるとしよう。
本の感想
ふとしたときに読みたくなる森見登美彦さんの小説。
男汁にまみれた腐れ大学生たちの日常を笑ってやろうではないか、と目論んでいたのだが……
なんということか。今回の主人公には恋人がいるではないか。いや、正確にはいたと言うべきか。
とっくにフラれているにせよ、一度は恋仲になった女性がいるという事実は私に(軽い)衝撃を与えた。
しかし、なんだか裏切られたような心持ちがしたのも束の間。
「水尾さん研究」と称して元恋人を未練がましく調査……もとい付きまとっている阿呆な姿に、ほっと胸を撫で下ろしたしだいだ。
そう、私は相思相愛めろめろラブストーリーを見たいのではないのだよ。
これはあくまで一人の男子大学生(休学中)の失恋を愉快に、そしてちょっぴり切なく描いた物語である。
恋心と妄想と男汁と哀愁がとぐろを巻いた『太陽の塔』。
ぜひともご覧あれ。
文庫本はこちら⬇︎
電子書籍はこちら⬇︎
印象に残った言葉(名言)
「あまりのも高みに上りつめすぎたために今さら下りるわけにもいかない、そもそも恐くて下ることができないと誰もが思いながらも口をつぐみ、男だけのフォークダンスを踊り狂った」
「良薬とはつねに苦いものである。ただし、苦いからと言って良薬であるという保証はどこにもない。毒薬もまた苦いのだ」
「どんなことを為すにしても、誇りを持たずに行われる行為ほど愚劣なものはない。ひるがえって言えば、誇りさえ確保することができればどんな無意味な行為も崇高なものとなり得る。自己嫌悪や他者の視線に足をとられている行為には、何の価値もないと断言しよう。振り返るな。足下を見るな。ただ顎を上げて営々と前進せよ」
「街を怪物が闊歩している・・・・・・クリスマスという怪物が・・・・・・」
「我々の日常の九〇パーセントは、頭の中で起こっている」
「みんなが不幸になれば、僕は相対的に幸せになる」
「幸福が有限の資源だとすれば、君の不幸は余剰を一つ産みだした。その分は勿論、俺が頂く」
この本の総評
文庫本はこちら⬇︎
電子書籍はこちら⬇︎
コメントを残す