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こんにちは、ぽっぽです。
今日の一冊はこちら↓
『きいろいゾウ』西加奈子(著)
宮崎あおいさん×向井理さん主演で映画化もした小説です。
本の概要(あらすじ)
「おつきさまが、まるでたいようみたいに明るいね」
夫の名前は武辜歩(むこあゆむ)、妻の名前は妻利愛子(つまりあいこ)。
お互いを「ムコさん」「ツマ」と呼び合う夫婦が住むのは、海の近い自然豊かな田舎町。
売れない小説家のムコさんは、犬や虫や植物たちと話すことができるツマを、優しく見守っている。
仲睦まじいふたりだったが、ある冬の日、ムコはツマを置いて東京へと出かけてしまう。
背中に大きな鳥を背負っている、ムコさんの抱える秘密とは・・・?
3つの特徴
ふたりの出会い
ふたりの出会いは、当時ツマが働いていたお店。
その日は月がちょうどまん丸の日で、ツマは仕事中もぼんやりとしていました。そんなツマの様子をみたムコさんが、
「月にやられましたね」
と言ったのです。
「だってあんまりいっぱいで」
そう言ったツマにムコさんは、
「欠けていってるから、月。大丈夫ですよ」
そう言ってくれたのです。
他の人には意味がわからないような会話かもしれませんが、ツマはそれを聞いて、とても安心できたのです。
そんなツマの目線で語られる世界は少し不思議で、ムコさんの書く日記が現実の世界に戻してくれています。
それぞれの目線でみることができるので、ふたりの考えることや感じ方のちがいもわかります。
ユニークなあだ名
「ムコ」「ツマ」をはじめ、物語に登場する人や動物たちは、カタカナで呼ばれています。
野良犬の「カンユさん」、庭にやってくる鶏「コソク」、隣人の「アレチさんとセイカさん」、ゴールデンレトリーバーの「ユメ」こと「メガデス」・・・
もちろんそうではない人たちもいますが、ふたりにとって近しい存在にいるものたちは、親しみを込めてカタカナで呼んでいるような気がします。
虫も動物も植物も、あだ名で呼ばれていることで、ツマが彼らを対等な存在として認識していることが窺えます。
素直で子どもっぽくて、とても人間味あふれているツマ。
けれど、どこか神聖な存在として感じられるのは、彼女が生き物の声が聞こえたり、月の満ち欠けに支配されているからなのかもしれません。
自分が人と一緒じゃないことは分かってる。だって、庭の木や草や花の声を聞いたり、そうゆうのって普通じゃないに決まってる。私の頭は、どうかしてるんだ。それをムコさんに、分かってほしいのに。
ムコさんの秘密
穏やかでのんびりしているように見えるムコさんですが、実は今でもある過去に囚われています。
そしてもうひとつ、ムコさんの背中に描かれた色鮮やかな大きな鳥。
これがこの物語に隠された「謎」の部分でもあり、ふたりに与えられた試練でもあります。
東京から届いた一通の手紙が引き金となり、だんだんと様子がおかしくなっていくムコさん。
そしてそれをどうすることもできないツマ。
ムコさんには、忘れられない恋人がいるんだ。
冬のある日、ムコさんはツマを置いて東京へと向かいます。
日記にツマへの手紙を残して。
ツマへ
日記をおいていきます。
僕らはきっと、この日記でつながっていて、そして同時に、この日記のせいで尋常ではない生活を始めたようなものだから。
ムコさんはいったいどこへ向かったのか?
背中の鳥に込められた、ムコさんの想いとはーー?
本の感想
読者をぐっと惹きつける演出や、ユニークな世界観など、西さんっぽいなぁと思いながら読みました。
自然豊かな田舎町で、ほのぼのと暮らすツマとムコ。愛すべきご近所さんや虫や動物たち。
にぎやかで楽しい生活の陰で時折感じられる、胸を刺す切なさ。
若い夫婦がある試練を乗り越えていくさまを、読者はハラハラしながら見守ることになります。
目次の後に載っている、必要なものリスト。
「朝食のトマトと岩塩」「たくさんのバスタオル」「欠け始めた月」・・・
これが最後のページにも同じ内容で羅列してあり、最後に大きな文字で付け加えられたのが「ぼくのつま」
それまでの不安や切なさが、一気に感動へと変わる瞬間です。
映画は観たけれど、原作はまだ・・・という方は、ぜひ読んでみてくださいね。
印象に残った言葉(名言)
「恥ずかしいことって、かっこ悪いこととは全然違うんだね」
「蓋をしてきた。いろんな感情に。あんまりにも太陽が明るいから、緑がくっきりとしているから、月の光が優しいから」
「知らなかった、ここは、とても残酷な場所だったんだ」
「大切なものを、一度もきちんとした目で見たことがなかった、そう思った。そして悲しくなった」
「ツマのそばにいる、きいろいゾウ。それは、僕でありたい。背中に鳥を背負った、それは僕でありたい」
この本の総評
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