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こんにちは、ぽっぽです。
今日の一冊はこちら↓
『みかんとひよどり』近藤史恵(著)
<ビストロ・パ・マル>シリーズ以来の近藤史恵さんの作品。
ジビエを通して友情を育んでいくふたりの成長を緩やかに描いたグルメ小説です。
ミステリー要素は控えめですが、「食」を通して“命”について考えさせられる作品でした。
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本の概要(あらすじ)
「ぼくたちは、殺した命に責任がある」
潮田亮二・三十五歳は、生まれてはじめて死を覚悟していた。
始めたばかりの狩猟中に、山の中で遭難してしまったのだ。
愛犬・ピリカとともに途方に暮れているところに現れたのは、黒い犬を連れた大男。
無愛想ながらも潮田とピリカを助けてくれたその男は、山の中で暮らす猟師だった。
自分の店でジビエ料理を提供したいと思っていた潮田は、大高と契約をしようと交渉をするがーー。
3つの特徴
猟師とシェフ
本書の主人公は料理人の潮田亮二。
腕はあるのになぜかうまくいかず、いくつもの店を転々としてきた潮田。
今のオーナーに拾われてからはフレンチレストランのシェフをしていますが、なかなか軌道に乗せられずに焦る毎日をおくっていました。
そんなあるとき山で出会った、無愛想だけれど腕のいい猟師・大高。
オーナーの意向でジビエ料理を思考中の潮田は、大高に自分の店と契約して欲しいと交渉しますが、すべなく断られてしまいます。
その理由は、「人生を複雑にしたくない」から。
自分とは違う軸で生きている大高と関わりあう中で、潮田はこの言葉の真意を理解していきます。
劇的な展開が待っているわけではありませんが、お互いの存在によってゆるやかに変化していく過程を描いた大人の成長物語。
生きることに不器用なふたりの距離感がなんだか心地よくて、彼らの物語が今後どうなっていくのかも気になります。
(いまのところ続編はありませんが)
一応ミステリー要素もありますが、あくまでスパイス程度かな?という感じ。
<ビストロ・パ・マル>シリーズを想像すると物足りないかもしれないのでご注意を。
ジビエ料理
ジビエ料理は「獣くさそう」「クセが強そう」というイメージが先行してしまって避けてきましたが、本書に登場する料理の美味しそうなことと言ったら!
猪のタルト、フロマージュ・ド・テッド、コケモモソースを添えた鹿のロースト、みかんヒヨドリ……
猪も鹿もヒヨドリも食べたことがないので味の想像が難しいですが、私の頭の中ではとても美味しいです笑。
(個人的にラズベリーマスタードがめちゃめちゃ気になる)
<ジビエ料理=お肉をシンプルに焼いただけのワイルドな料理>という勝手な想像をしていましたが、まさかこんな上品なフレンチにもなるとは。
いままであまりジビエ料理には興味がありませんでしたが、本書を読んで挑戦してみたくなりました!
命の重さ
生きていくためには食べなくてはならない。
食べるためには殺さなくてはならない。
他の生き物の命を奪うことでしか、人間は生きられない。
そんなあたりまえでつい忘れてしまいがちな現実を思い出させてくれる作品です。
と言うとひどく重たくて説教くさいのではないかと誤解されそうですが、そんなことは全くないのでご安心を。
命というテーマの中で様々な問題提起をしながらも、とても読みやすい成長物語兼グルメ小説に仕上がっています。
私はこの物語を読んで、“命の等しさとそこに生じる矛盾”について考えさせられました。
“人間”と“人間以外の生き物”もそうですが、人間以外の生き物の中でも命の扱われ方は違いますよね。
例えば、潮田の愛犬・ピリカと大高の愛犬・マタベー。
彼らは相棒(家族)として大切にされていますが、彼らと同じく四足歩行の鹿や猪は人間に食べられ、ときには駆除の対象とみなされます。
虫や魚もそうですよね。
犬や猫をいじめる人間がいたら「なんてひどいことをするのだろう」と思いますが、蚊やハエを叩く人を見て残酷だとは感じません。
猟銃で殺した動物を解体して食べるのと、海や川で釣った魚を捌いて食べるのでは、同じ行為のはずなのに後者の方が抵抗感が少ないですよね。
こうして考えていくと、日常の中に存在する様々な矛盾を再確認させられます。
もちろんこういった矛盾を解消できる答えはありませんが、それでも考え続けることが選択する立場である人間の責任なのかなと。
本書のような物語が、そのことを考えるきっかけになってくれるといいなと思いました。
本の感想
本書を読みながらふと頭に浮かんだのは「あれ?昨日は何を食べたんだっけ?」という疑問。
たしかお昼はお肉を食べて、夜は魚を焼いて食べたような。
本書のようなジビエを食べる機会はないけれど、牛や豚や鶏肉は毎日のように食べているし、もちろん魚だって食べる。
ですが、恥ずかしながら目の前の料理を“命”だと意識して食べたことはほとんどありません。
自分が生きるために他の動物を殺して食べているという事実はもちろん理解していますが、実感が乏しいのもまた事実なんですよね。
これまであまりジビエに興味がありませんでしたが、こういうことを味わえるのもジビエの醍醐味の一つなのかもなと本書を読んで感じました。
個性が強そうでなんとなく避けがちでしたが、一度ちゃんとジビエ料理を食べてみようと思います。
普段の食事から元の姿を想像して感謝するということは簡単なことではありませんが、人間として生きる以上はきちんと向き合うべき現実ですよね。
命と向き合い続ける猟師の大高とシェフの潮田を通して、改めてそれを実感しました。
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印象に残った言葉(名言)
「ふいに思った。自分はどこを見つめながら料理をしているのだろう」
「大高が、面倒なことを嫌がるのは、ただ生きていくだけでも時間がかかるからだろうか」
「肉も野菜もすぐに買うことができて、早く移動できる術も増え、家電だって充実して、時間から自由になれたはずなのに、ぼくたちの人生は複雑さを増すばかりだ。楽になった代わりにの時間に、別のものが流れ込む」
「夢をあきらめるのは、身体の一部を切り取られるくらい苦しい」
「生き物の命と向き合い、山や木々の声を聞く。捨てたから、社会と距離を置いたわけではない。大高の世界は、ぼくたちの社会とは別の豊かさで満たされている」
「どんな人間にも、与えられる一日は二十四時間だ。別のことで時間を費やせば、山と向き合う時間が短くなる。大高が人生を複雑にしたくないと言った気持ちを、はじめてちゃんと理解できた気がした」
「ただ、害虫駆除として無駄に殺されていく命を、いかに有効活用するか。完全に生きる場所を切り分けることができず、駆除しなければならないのだとしたら、やはり食べることがいちばんの有効利用になるはずだ」
この本の総評
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