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【No.184】色とりどりの和菓子と家族の絆に心温まる時代小説〜『まるまるの毬』西條奈加(著)

こんにちは、ぽっぽです。

今日の一冊はこちら↓

『まるまるの毬』西條奈加(著)

吉川英治文学新人賞受賞作品。

美味しそうな「和菓子」に心くすぐられる、人情味あふれる時代小説です。

読みやすいので時代小説初心者の方にもおすすめです!

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本の概要(あらすじ)

「お君ちゃん、今日の菓子は何だい?」

 

親子三代で切り盛りしている、下町で大人気の和菓子店「南星屋」。

 

武家の身分を捨てて菓子職人となった治兵衛を筆頭に、亭主の裏切りで出戻った娘のお永、その娘のお君の三人で店を繁盛させてきた。

 

しかし、この店には決して他言できないとある重大な秘密があってーー?

 

色とりどりの和菓子と家族の絆を描いた、美味しい時代小説。

こんな人におすすめ

  • 時代小説に抵抗感がある人
  • 和菓子が好きな人
  • 温かい家族の絆にほっこりしたい人

 時代小説に抵抗感がある人

私は普段からほとんど時代小説は読みませんが、本書は抵抗感なく読むことができました。

舞台は江戸時代ですが、あくまで町の小さな和菓子屋を中心とした家族小説なので、史実に詳しくなくても大丈夫!

その時代ならではの雰囲気が漂いつつも歴史だの戦だのという話ではないので、時代小説初心者の方にもおすすめです。

連作短編小説ですが、毎回登場人物はほぼ固定です!

 和菓子が好きな人

「南星屋」の一番の特徴は、江戸では滅多に食べられない珍しい菓子を扱っているところ。

治兵衛が諸国を旅して出会った銘菓を日替わりで並べているので、訪れるたびに新しい和菓子と出会えるのです。

現代のように旅行やネット通販ができるわけではないので、南星屋は町の人々にとってもなくてはならない存在。

最終話では、ラストを飾るにふさわしい南星屋初のオリジナル商品が登場します。

本書に登場する「梅ヶ枝餅」は『君の膵臓をたべたい』にも登場していましたね!食べてみたい!

 温かい家族の絆にほっこりしたい人

本書はやはり時代小説ということで、理不尽なことはありつつも人情味あふれる優しい内容となっています。

中心となっているのは南星屋の”家族の絆”、そして治兵衛と五郎の”兄弟愛”。

かといって「家族とはこうあるべき!」というようなお説教くさい内容ではなく、ただただ互いを大切に思っている姿にホロッとさせられます。

理想の家族像を主張した押し付けがましい「家族小説」が苦手な方も、本書なら嫌味なく読めると思いますよ。

治兵衛の出生の秘密は、家族愛を引き立たせるスパイスに過ぎないのだよ!

本の感想

好きなときに気軽に甘いものを食べられる今の時代って本当に恵まれているなぁと、しみじみ思いました。

 

ぜひ現代の感覚ではなく、昔の人の暮らしを想像しながら読んでみてください。

 

「南星屋」の和菓子が町の人々にとってどれほど大きい存在なのかをより実感できると思います。

 

それこそ昔は娯楽と呼べるものが多くはないでしょうから「南星屋」は町の人々にとって唯一の娯楽的な存在だったのかもしれませんね。

 

かく言う私も無類の甘いもの好き。

 

豆大福やどら焼きなどの和菓子ももちろん好きですが、以前はどちらかというと華やかな洋菓子に目が行きがちでした。

 

しかし最近はクリームたっぷりの洋菓子をちょっと重たく感じ始めていたところ。

 

そんなとき、本書を読んで気がつきました。

 

「生涯の伴侶になってくれるのは、洋菓子ではなく和菓子だ」と。

 

たまにはゴテゴテの洋菓子も食べたいけれど、歳をとってからも寄り添えるのはきっと和菓子。

 

今からおいしい和菓子を開拓していこうと決意した次第です。

 

なんの話をしているの?と思われる方もいるかもしれませんが、なんの話でもありません。

 

ただの脱線です。

 

甘いものの話ばかりしてなんですが、本書はただの和菓子屋をめぐる物語ではありません。

 

どちらかといえば、昔ながらの人情味あふれる家族小説の側面が強いと思います。

 

「家族とは何か」という普遍的なテーマを、美味しい和菓子とともに時代小説というジャンルで描いた作品。

 

気になった方はぜひ読んでみてください。

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印象に残った言葉(名言)

「止まらなければ、見過ごしてしまう風景もある。いまはちょうど、そんなときなのかもしれない」

 

「お君、おまえもね、このお団子みたく、気持ちのまあるい女の子におなりなさい」

 

「大きな欲を出さず、無闇に敵を作らずに、ただ良い仕事をして人生を程よく送る」

 

「夫婦になるってことは、ひとりでいるよりももっと重い苦労をしょい込むことだって、裏のおかみさんたちが言ってたわ」

 

「色恋なぞ所詮、一時の気の迷いだ。歳を経たいまなら、そう断言することもできる。しかしその一時一瞬が、本物の輝きを放つことがある」

 

「才ある者は、己の才のなさを誰よりもよく知っている。だからこそたゆまず努め、ころんでも立ち上がり、時には這ってでも先へ行こうとする。世にいう天分とは、そのようなものだ」

 

「己で己の運を切り拓いていく者は、一度や二度の不運になぞ負けはしません」

この本の総評

読みやすさ
(5.0)
雰囲気
(4.0)
お菓子
(4.0)
読後感
(4.0)
総合評価
(4.0)

 

 

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