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こんにちは、ぽっぽです。
今日の映画はこちら↓
『彼らが本気で編むときは、』
『かもめ食堂』『めがね』などの作品を手掛けてきた、荻上直子監督によるオリジナル脚本映画。
トランスジェンダーの主人公を、生田斗真さんが演じたことでも話題になりましたね。
恋人役は桐谷健太さん、姪っ子役は柿原りんかさんです。
子どもの残酷さや、大人の歪んだ価値観、枠に当てはまらないものを拒絶する社会。
そういったリアルな部分を描いていながらも、穏やかで温かさに満ちた彼らの空気感がとても良かったです。
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映画の概要(あらすじ)
「想像してみて?心は女の子なのに、成長する気配のない真っ平らな胸を見るときの切なさ」
母親に置き去りにされてしまい、しばらくおじの家で生活することになったトモ。
彼の家を訪ねると、そこにはおじと同棲している恋人のリンコがいた。
それから始まった、奇妙な共同生活。
初めのうちは、トランスジェンダーのリンコに戸惑っていたトモ。
しかし、しだいに彼女の優しさと愛情に心を開いてゆき・・・
主な登場人物
- リンコ(生田斗真):性別適合手術を受けたトランスジェンダーの女性
- マキオ(桐谷健太):リンコと同棲している恋人
- トモ(柿原りんか):マキオの姪
- ヒロミ(ミムラ):トモの母親
- 祖母(りりィ):ヒロミとマキオの母親
3つの特徴
孤独な少女
トランスジェンダーの女性・リンコと、彼女の内面から溢れる美しさに惹かれた、恋人のマキオ。
仲睦まじいふたりの前に現れたのは、愛情を知らずに育った孤独な少女・トモ。
マキオにとっては姪っ子にあたるトモですが、リンコとトモは赤の他人同士。
そんな三人の、ちょっぴり変わった共同生活の物語です。
映画の冒頭数分で端的に表現しているのは、トモが置かれている状況。
たまった洗濯物、散らかった部屋、コンビニおにぎりの袋で溢れかえったゴミ箱・・・
会話もほとんどなく、トモの顔を見ることすらしない母親のヒロミ。
ある日、ヒロミは男を追いかけて姿を消します。トモをひとり置き去りにして。
淡々と事実を受け止めて、マキオの家に向かったトモが出会ったのが、リンコでした。
彼女に戸惑いを感じつつも、温かい手料理や可愛いキャラ弁に、表情を緩ませるトモ。
実の母親以上に愛情を与えてくれるリンコに、少しずつ心を開いていきます。
編み物に託す想い
<すごく悔しいことも、死ぬほど悲しいことも、編み物でぜんぶチャラにするの>
そうトモに語るリンコが編んでいる“あるもの”、それは彼女の<煩悩>。
彼女はある決意を込めて、それを108個完成するまで編み続けているのです。
編み物は、リンコが母親から受けとった愛情の証。
そしてそれは、リンコからトモへ。
血の繋がりはなくとも、確かにその深い愛情が受け継がれていることがわかります。
リンコとマキオ、トモの三人で編み物をするシーンが印象的。
いろんな想いを込めて、彼らが本気で編んだ先にあるものとはーー。
彼らの結末
少しずつ、本物の家族のようになっていく三人。
おさえきれないトモへの愛情を抱え、本気でトモを養子にしたいとマキオに伝えるリンコ。
三人の穏やかな時間がずっと続いてほしい・・・と願いつつも、物語はいよいよラストへ。
トモはこのままリンコたちと一緒に暮らすのか?それとも、実の母親のもとに戻るのか?
ラストを知りたい方だけクリックしてくださいね。
ある日突然帰ってきた母親のヒロミ。リンコたちの家にやってきて、トモを連れて帰ろうとします。
マキオはトモを引き取りたいと言いますが、ヒロミは「あげるわけないじゃない。トモは私の子よ」と聞く耳を持ちません。
リンコに対し、「母でも女でもないくせに。あんたは一生母親にはなれないの」とキツくあたるヒロミ。
そんな母親の背中を叩きながら、
「リンコさんはご飯作ってくれた。編み物教えてくれた。一緒に寝てくれた。どうしてママはしてくれないの?」
と初めて母に対する思いを吐き出すトモ。
けれど最終的にトモは、母親のもとに戻ることを決意します。
哀しいけれど、とても現実的なラストです。
リンコが最後にトモのために編んだ“あるもの”は、リンコにとって母親の愛情を表すもの。
ハッピーエンドとは言えない結末かもしれませんが、切なくて苦しくて、けれどとても温かいラストでした。
映画の感想
トランスジェンダーの女性が主人公ということで、LGBTに焦点を当てた内容かと思っていましたが、これは「家族の物語」。
いろんな家族のかたちや愛のかたちを描いた映画です。
重たい部分や胸が痛くなるシーンもありますが、荻原さんらしい空気感が漂う、穏やかで温かな物語。
<性>についてをひとつのテーマとして掲げていますが、それだけではありません。
育児放棄や、子どものいじめ、歪んだ価値観、マイノリティに対する社会の偏見・・・
さまざまな難しい問題を取り上げている作品でもあります。
とはいえ、何かを強く肯定したり否定したりという内容ではないので、これを観た人それぞれが、自分なりに考えるきっかけになってくれそうな映画でした。
特筆すべきは、やはり主演・生田斗真さんの徹底した役作り。
撮影期間中はスカートを履いたままで、マニュキュアも落とさずにいるなど、徹底してリンコでいることを心がけていたそうです。
メイクや衣装選びにも時間をかけているとは思いますが、私が一番注目していたのは立ち振る舞い。
指先にまで細心の注意を払っていて、古風な女性を感じさせるその所作は、とてもきれいで。
トモと過ごすうちに溢れ出す、母親としての愛情や母性もすごく伝わってきました。
主演含め、キャスト陣の演技が素晴らしかったと思います。(子役の子の演技もとても上手でした)
特に田中美佐子さん演じるリンコの母親が、とっても良いキャラクターでした。
トモに対して「リンコを傷つけるようなことをしたら、承知しないよ。たとえあなたが子どもでも、私は容赦しない」とはっきり伝えるシーンに猛烈に感動してしまった・・・。
たとえ自分の子でも、理解できなかったり受け入れられなかったりする親はたくさんいます。
そんな中で、無条件に愛情を注いで「自分の娘がいっちばん可愛いんだもん!」と堂々と言ってくれる母親の存在が、リンコの優しさや愛情深さに強く影響していると感じました。
リンコを見る周囲の目は、決して肯定的なものばかりではありません。むしろ、差別的な目の方が多かったです。
だからこそ、理解して守ってくれる存在の大切さを痛感させられました。
いろんな人に観てほしい映画です。
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この映画の総評
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