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こんにちは、ぽっぽです。
222冊目はこちら↓
『名もなき本棚』三崎亜記(著)
初めましての作家さん。
日常と非日常の境界を彷徨うような読み心地がなんだかクセになる作品でした。
バリエーション豊かな19編が収録された短編小説なので、ぜひお気に入りの物語を探してみてください。
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目次
本の概要(あらすじ)
「いつでも、必要とする誰かのために、本棚はあるんだ」
ある日郵便受けに入っていた、差出人不明の荷物。
中から出てきたのは、五人の女性の日常が綴られた、分厚い日記帳だったーー。(「日記帳」)
彼を忘れるための旅に出た私は、空港の待合室で、とある老人から一冊の本をもらった。
旅人から旅人へと受け継がれているというその本。
なにげなく裏表紙をめくった私が、そこに見つけたものとはーー。(「待合室」)
こんな人におすすめ
本書をおすすめしたいのはこんな人↓
- 隙間時間に少しずつ読みたい人
- 不思議な物語が好きな人
- 日常が揺らぎだす感覚を味わいたい人
本の感想
彩り豊かな短編集
こんなにもバラエティ豊かな短編集を、これまでに読んだことがあっただろうか?
と思うくらい、多種多様な物語が詰め込まれている作品でした。
普通でないことがあたかも普通に描かれている物語たちは、恐ろしくもあり、美しくもあり。
幻想、シュール、ホラー、奇妙、感動。いろんなテイストをこの一冊で堪能することができます。
(ちなみに本書に収録されている「私」「ゴール」「公園」は、中学・高校の教科書にも採用されたそうです。)
それでは早速、本の内容へ。
全部は紹介しきれないので、私の印象に残っている物語を
- 不思議な物語
- ゾッとする物語
- シュールな物語
- 心温まる物語
に分けて紹介していきます。
①不思議な物語:「部品」
あらすじ
どうやら僕は今日、身体の部品の一つを失くしてしまったようだ。
多少の不安を感じてしばらく体の調子を確かめていたが、特に不具合はない。
しかし、一つだけおかしなことが。二年も付き合っている彼女と、最近歯車が噛み合わないのだ。
この違和感はもしかして、僕が失ったかもしれない部品のせいなのかもしれないーー。
感想
人々の身体に部品が組み込まれているという設定ですが、一切疑問を持たせない空気感がなんだかおそろしくて。
微妙にずれている会話もなんだか奇妙で、読めば読むほど謎は深まるばかり。
「世にも奇妙な物語」を彷彿とさせる、摩訶不思議な物語です。
②ゾッとする物語:「回収」
あらすじ
集積所の隅に、背広を着た会社員が座り込んでいた。
一体誰がこれを出したのか。会社員の回収日は一週間も先なのに。
今週の集積所管理を任されている私にとっては、なんとも迷惑な存在だ。
夫に相談をしてみたものの、返ってくるのは気のない返事ばかり。
仕方なく私は回収日まで会社員の様子を見に行くことにしてーー。
感想
本書の中で一番ホラー味の強い物語。
会社員を人間ではなく「ゴミ」として淡々と扱う姿は不気味だけれどどこか滑稽で。
はっきりと描かれなくてもそれとなく読者に伝わってくる危険な香りは、後半にかけてさらに濃厚になっていきます。
③シュールな物語:「緊急自爆装置」
あらすじ
<市役所に、緊急自爆装置を設置しました>
市役所に来られた際、急に自爆したくなったのに、自爆装置の用意がない。
そんな経験はありませんか?
そんな皆さまのために、新たに緊急自爆装置を設置しました。
市民の皆さまは、どなたでもお気軽に自爆できます。どうぞご利用ください。
感想
「誰でも自由に自爆できる」という、なんともおそろしい社会を描いた物語。
舞台は緊急自爆装置を置くことになった市役所なのですが、少しの疑問も挟む余地のない職員たちの会話がなんとも不気味で。
どんどん不穏な方向へと展開していき、最後はブラックユーモアを思わせる結末へ。
恐ろしいけれど暗い笑いを誘われる、そんなシニカルな物語でした。
④心温まる物語:「名もなき本棚」「The Book Day」
あらすじ(「名もなき本棚」)
朝の不機嫌な顔を同僚に見られたくない「私」は、エレベーターを避け、非常階段で二十階まで上っている。
十七階と十八階の間の踊り場にはなぜか小さな本棚が置かれているが、誰かが利用している形跡はない。
なぜこんなところに本棚があるのか。一体誰が管理しているのか。
そんなあるとき、「私」は偶然にも本棚の中身を入れ替えている男性と遭遇しーー。
感想
変わり映えのない日常を淡々とこなす私が出会ったのは、小さな本棚とその本棚を管理する一人の男性。
「誰にも利用されていない本棚に意味なんてあるのか?」
そう疑問をぶつける私に、男性は「いつでも、必要とする誰かのために、本棚はあるんだ」と返します。
たしかに彼女の疑問も的外れではない気がしますが、それでもやっぱり本は本として“ただそこにあること”に意味があるんですよね。
街の片隅に置かれている“名もなき本棚”たちは、いつか自分を必要としてくれる誰かを待ち続けている。
そう思うと、何気なく手にとった本との出会いも感慨深くなります。
あらすじ(「The Book Day」)
それぞれに大切な本を抱えながら、人々は夜の公園に集う。
親子で本を囲む家族、名残惜しげに本を開く男性、思い出を確かめるように空を見上げる女性……
それぞれのやり方で、人々は長針と短針が重なり合うその時を静かに時を待ち続けていた。
ーー今宵、世界の空は、旅立つ本で満たされる。
感想
本書のフィナーレを飾るのは、文字通り「旅立つ本」を描いた物語です。
それぞれに愛されてきた本たちが、惜しまれながら夜空へと羽ばたいていく。
ある本は新たな持ち主を探す旅へ、またある本は役目を終えて本の墓場へ。
本を手放すのはとてもつらくて寂しいけれど、失くすわけではないのだと思わせてくれる優しい物語です。
日常と非日常を彷徨う
本書はどれも私たちの世界とは異なる世界を描いた物語ですが、異世界というのとも少し違う気がします。
全く違う別の世界というよりも、“この日常と地続きに存在している世界”という感じがしました。
そしてその境界を自分が彷徨っている感覚に陥るんですよね。
絶対にあり得ないようなことでも、心のどこかで「ひょっとしたら…..」と思ってしまう自分がいて。
読めば読むほど“日常”という足元がおぼつかなくなっていきます。
まとめ
初めてましての作家さんでしたが、他の作品も読んでみたくなるくらいとても印象的な一冊でした。
ひとつひとつがとても短いので、隙間時間に少しずつ読みたい方にもおすすめです。
ショートが故の物足りなさは全くなく、それぞれの世界観がしっかりと確立されているなと感じました。
怖さにもいろんな種類があると思いますが、この「徹底して疑問を排除した世界」が醸し出す怖さはまさに私好みで。
ゾッとしたり、不安になったり、考えさせられたり、ほっこりしたり。
この一冊でいろんな感覚を楽しめる作品なので、ぜひ読んでみてください。
読めば読むほど、あなたの日常は非日常に変わります。
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印象に残った言葉
「ほらね、見ていても、見えていないものは、たくさんあるってことだよ」
「いつでも、必要とする誰かのために、本棚はあるんだ。そしてその誰かのために、俺が本を用意する」
「君は、誰からも必要とされていなかったら、存在価値はないのかい?」
「君が君として生きていることに、価値はあるし、きっと誰かが君を必要としている。そうだろう?」
「すれ違う人々の記憶の中に、私は一瞬も残りはしない。私も、そして誰もが皆、「名もなき誰か」なのだ」
「スタートした以上、ゴールを目指すしかないではないですか」
「形あるものは、失われゆくことを偲ぶこともできる。だが、それが失われるまでには、もっと前に失ってしまった形のないものが、たくさんあるのだろう。そのことは、忘れたくない私たち一人一人が、心にとどめておくしかない」
この本の総評
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