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こんにちは、ぽっぽです。
今日の一冊はこちら↓
『ことり』小川洋子(著)
小鳥の言葉しか話せない兄と、兄の言葉が唯一わかる弟の物語。
初めて読んだ小川洋子さんの作品です。
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本の概要(あらすじ)
「小鳥の歌は全部、愛の歌だ」
小鳥の言葉を話せる兄と、兄の言葉を唯一理解できる弟。
ふたりは慎ましく、ひっそりと、互いに支え合って生きてきた。
やがて兄は亡くなり、ひとりぼっちになってしまった弟。
幼稚園の小鳥の世話をするようになってからは、「小鳥の小父さん」と呼ばれるようになり・・・。
兄弟の人生を描いた、優しくて切ない物語。
3つの特徴
歪な世界
お兄さんが独自に編み出した言葉で喋りはじめたのは、十一歳のとき。
周囲の人間が理解することのできないその言葉は、まるで小鳥のさえずりのよう。
唯一兄の言葉を理解することができたのは、彼の弟。
物語は、後に周囲から「小鳥の小父さん」と呼ばれるようになる、この弟の目線で紡がれていきます。
具体的には語られていませんが、おそらく彼らは一般社会に適応することが難しい人たちなのでしょう。
兄は日常の些細な変化にも戸惑ってしまうため、ふたりは同じ毎日を、何度も繰り返し生きています。
小鳥のように小さな巣の中で生きる彼らの世界は、とても居心地が良いけれど。
いったん外の世界から眺めると、その世界はやはり歪で違和感があります。
弟の人生において最も重要なことは、小鳥の言葉を話す兄を見守ること。
しかし、そんな弟自身もまた、うまく社会に馴染めずにいます。
ふたりは支え合いながら、なるべく外の世界との関わりを持たず、二人だけの世界を完結させているのです。
架空旅行
私がいちばん好きな場面は、兄弟の「架空旅行」。
実際には旅行に行ったことがないふたり。
彼らが一緒に出かけるのは、幼稚園の鳥小屋まで。
それでもふたりは年に一度か二度、旅行をします。
小父さんが計画を、お兄さんが荷物の準備を担当して。
ラジオ、ポタージュスープの缶詰、野鳥図鑑、母親の写真、白いバスケット。
この五つの品を、お兄さんは必ず旅行に同行させます。
行き先を決め、ガイドブックを読み込み、荷造りをする。
これが、二人にとっての旅行だったのです。
実際に旅立つことはなかったけれど、ふたりにとってはそれだけで充分。
私はそれがなんだかとても切なくて。
けれどとても温かくて、なんとも言えない気持ちになりました。
ほのかに漂う残酷さ
兄弟の世界が優しいぶん、時々ひどく残酷に感じる場面も。
鈴虫の声を愛でるお爺さんが、死んでしまった鈴虫を足で踏み潰す場面。
メジロの声を愛でる男たちが、鳴き合わせ会で無理矢理メジロに歌わせる場面。
正直私は、その生々しさにゾクっとする気持ち悪さを感じました。
「愛おしい」という感情が、より人間の欲を増長させている気がして。
上手く言えないのですが、私は<不快>に似た感情をおぼえました。
おそらく、二人の世界は「欲」とはかけ離れた場所にあるので、外の世界の人間の欲深さがより一層リアルに感じられたのだと思います。
本の感想
これまであまりご縁がなくて、初めて読んだ小川洋子さんの小説。
静謐な雰囲気と、淡々とした文章が印象的でした。
描写はとても細やかなのに、あえて固有名詞を明かしていないため、読者それぞれが想像する余白のある作品。
ふたりの住む家、青空薬局、ゲストハウスのバラ園、幼稚園までの道のりと、フェンスの窪み・・・
頭の中にはっきりと想像できるくらい、ふたりの世界が丁寧に描かれています。
兄弟の一生が綴られているので、読むほどに二人を見守っているような感覚になりました。
温かいのに切なくて、優しいのに残酷で。
読み終えた後は、じみじみとした余韻がいつまでも残りました。
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印象に残った言葉(名言)
「小鳥は僕たちが忘れてしまった言葉を喋っているだけだ」
「この世の音はお兄さんの耳だけに本当の姿を響かせているのだ」
「小鳥は幼稚園にもいる。庭にもいる。世界中、どこにでもいる。どれが自分のかは、決められない。だから、自分の小鳥はいらない」
「鳥籠は小鳥を閉じ込めるための籠ではありません。小鳥に相応しい小さな自由を与えるための籠です」
「大事にしまっておきなさい。その美しい歌は」
この本の総評
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